自営業者の公的年金について【2013年 第4回】

【2013年 第4回 自営業者の公的年金について】
自営業者 40歳からのセカンドライフ計画

恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒ プロフィール

自営業者の老齢基礎年金(国民年金)に上乗せする公的な年金として国民年金基金から「国民年金基金」、国民年金基金連合会から「個人型確定拠出年金」が提供されています。それぞれの年金の特徴と相違点についてみていきます。

 

 

はじめに

「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金」は、老齢基礎年金の2階部分にあたる年金になります。両年金とも任意加入*なので「公的な個人年金」として説明いたします。

民間の個人年金に比べ、掛金や受取る年金の所得控除の額が大きいので、所得税や住民税の軽減が期待できます。また、毎月の掛金の限度額(68,000円)はありますが、「国民年金基金」、「個人型確定拠出年金」を併用して利用することができます。では、最初に、国民年金基金の特徴からみていきましょう。

*加入する条件として、国民年金保険料を納付していることが必要になります。免除(全額、半額など問わず)を受けている方、学生納付特例、若年者納付猶予を受けている方及び農業者年金基金に加入している方は加入できません。

国民年金基金の特徴

1.加入時について

1)国民年金基金は、老齢基礎年金のように現在の保険料で年金を支払う相互扶助方式と異なり積立  型の年金になります。

2)加入は任意ですが、自分の都合で任意に脱退や中途解約ができません。

3)加入に際して「地域型」(都道府県ごと)か「職能型」(職種は限定)を選択します。

2.年金の給付タイプを選んで加入

1)給付のタイプは、終身年金2タイプ、確定年金5タイプの合計7タイプあり、それぞれ口数を設定して加入します。1口目については終身年金2タイプからの選択になります。

2)加入できる上限は下記の個人型確定拠出年金と合算して月額68,000円になります。7タイプそれぞれに年齢・男女別に掛金の額が設定されています。

3.7つのタイプの紹介

1)終身年金  1口目はここから選択

A型 65歳支給開始(15年間保証付)

B型 65歳支給開始(保障期間なし)

 

2)確定年金 2口目以降は、上記の終身年金と以下の5タイプから選択

Ⅰ型 65~80歳支給(15年間保障付)

Ⅱ型 65~75歳支給(10年間保障付)

Ⅲ型 60~75歳支給(15年間保障付)

Ⅳ型 60~70歳支給(10年間保障付)

Ⅴ型 60~65歳支給( 5年間保障付)

 

3)タイプ選びのポイント

掛金と保障内容、年金額のバランスをどう考えるかが、「国民年金基金」を加入する上で   の最も重要なポイントになります。

・年金月額は、1口目、2口目以降の男女の区分なく年齢区分で設定され、加入時に受取れる年金   額を計算できます。

・2口目以降の増減は可能。1口目の終身年金については、A型、B型の変更不可です。

・確定年金の掛金が終身年金の掛金を上回ることはできません。

 

さん4)保障付の意味

終身年金B型以外は、加入者が保障期間を満了する前に死亡した場合に、残存期間に応じて遺族一時金が支払われます。また、年金を受取る前に死亡した場合は、掛金を納付した期間に応じて遺族一時金が支払われます。終身年金B型は、1万円支払われます。

 

4.給付金の受取り時について

1)受給開始年齢(タイプにより65歳、60歳と異なる)に達  すると、年金を給付します。

2)年金額が12万円以上のときは年6回(偶数月)、12万円以下のときは年1回支払われます。一時金による受取方法はありません。

3)年金は、公的年金等控除が適用されます。

以上、国民年金基金の特徴についてみてきました。

 

個人型確定拠出年金の特徴

1.加入時について

1)加入にあたっては、国民基金連合会のホームページから銀行、証券会社等の運営管理機関を確認  し、期間ごとの提供している金融商品内容(元本確保型商品、投資信託など)を検討します。選定  した運営管理機関を通じて国民年金基金連合会に申し込みます。

(運営管理機関により、投資信託の取り扱い本数や種類にばらつきがあります。)

2)掛金は、上記の国民年金基金と合算して、月額68,000円の範囲で設定できます。

3)掛金額は、最低5,000円から限度額まで1,000円きざみで設定が可能です。

 

2.運用時について

 1)運用期間中は、申し込みをした運営管理機関の提供する金融商品の中から運用商品を選択します。  例えば、掛金3万円をA商品に1万5千円、B商品に1万円、C商品に5千円というように分散して運用し  ます。

2)加入者が、金融商品の運用状況を確認しながら、A商品を1万円に減らし、C商品を1万円に増やす  といった「配分変更」や、B商品の運用を止めて、別のD商品に変更する「スイッチング」を加入  者自身の判断で行います。

3)運用して得た収益は、全額非課税になります。

4)運用が上手くいかない場合、掛金を下回り元本割れが生じる事があります

5)原則、中途解約して払い戻しを受けることはできません

6)掛金を払えるのは60歳が限度になりますが、給付金を受取始めるまで(70歳到達時が限度)運用  を続けることができます。

 

3.給付金の受取り時について

1)受取開始年齢は、原則60歳からになります。

2)運用の成果により給付金の額に違いがでます。

3)給付金の受取方法は、一時金と年金の2通りあります。

4)一時金で受取る場合は、退職金扱いになり、退職所得控除が適用できます。

5)年金で受取る場合は、公的年金等控除が適用されます。

 

4. その他の給付金

1)加入者が一定の障害になった場合、加入者の請求により障害給付金が支給されます。

2)加入者が死亡した場合、遺族の請求により死亡一時金が支給されます。

 

「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金」の相違点

1.同じ点

1)支払った(拠出した)掛金は、全額社会保険料控除の対象になり所得税や住民税の税負担が軽  減できます。(年間最大81万6千円)

2)年金で受取る場合は、公的年金等控除が適用されます。

*公的年金等の収入が330万円未満の場合、60~64歳より65歳以降の方が控除できる金額が大きくな  ります。

 

2.違う点

1)国民年金基金は、加入時点で受取れる年金額が計算できます。

2)個人型確定拠出年金は、運用成果によって受取れる年金額、一時金に違いがでます。

最後に

 コラムの冒頭でふれましたように民間の個人年金に比べ、税制上の優遇などがある「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金」は、自営業者が老後資金を準備する有効な方法の1つとして考えます。今回は、その特徴と相違点についてみてまいりました。

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