菅野美和子 の 『世帯分離』のあれこれ 第2回 世帯分離しないほうがよいケース

マイアドバイザー® 菅野美和子 (スガノ ミワコ)さん による連載コラム(不定期)です。

『世帯分離』のあれこれ 2回目のテーマは「世帯分離しないほうがよいケース」です。

世帯分離とは、同じ家に住んでいても、別々の世帯として、家族のまとまりを分けることです。経済的なメリットを求めて世帯分離を選択する場合がありますが、世帯分離で必ずしも経済的はメリットがあるとは限りません。今回は、医療保険の保険料という点から、世帯分離の効果についてみていきましょう。

菅野美和子プロフィール

 

年金暮らしの両親と自営業の息子夫婦のケース

定年退職した夫婦と自営業の息子夫婦というケース(同居中)で考えてみます。

長年会社員として働き65歳で退職した父親の年金は、年間で250万円ほどあります。その他に企業年金があり、また、老後への備えとして準備してきた個人年金もあります。老後対策はしっかりできています。

一方息子は個人事務所を経営しています。個人事業主ですので、国民健康保険に加入しています。事務所の経営は安定しており収入も多く、息子の国民健康保険料は上限額となっています。保険料が高いということが、息子の不満のたねです。

医療保険への加入は、75歳になると全員が後期高齢者医療制度に加入しますが、それまでは、会社で加入する健康保険、その扶養家族、国民健康保険など、選択肢はいろいろです。さて、定年退職した夫婦には、どのような選択がベストでしょうか。世帯分離との関係は?

親夫婦の医療保険の選択

選択肢としては、これまで働いてきた会社の健康保険を継続するか(手続きは退職後20日以内)、国民健康保険に加入するか、いずれかになります。

このケースでは、親子が同一世帯ですので、親夫婦も息子夫婦といっしょに国民健康保険に加入することが、保険料負担においてはベストな選択方法です。

国民健康保険料の計算方法は市町村によって異なります。世帯の人数による人数割や、所得割などによって保険料が決定されます。世帯の人数が増えれば、当然のことながら保険料も上がります。世帯分離をしたほうがよいのではと考える人もいるかと思いますが、このケースでは同一世帯として国民健康保険に加入するのが得策です。

なぜなら、国民健康保険料には上限額が定められているからです。息子夫婦は収入が多く、すでに上限額の国民健康保険料を納付しているので、この先、世帯の人数が何人増えても保険料が最高額以上になることがないからです。

このような「国民健康保険料の上限メリット」を活用しようと思えば、世帯分離せず、同一世帯のままであるほうがよいといえます。仮に親夫婦が健康保険の任意継続を選択すれば、収入にもよりますが、毎月3万円程度の保険料がかかるでしょう。保険料という点では、国民健康保険への加入がお得です。

条件が異なると、選択肢も異なる

ここまで、息子夫婦が自営業という設定としましたが、会社員ならどうでしょうか。親の収入は多いので、退職後に息子の健康保険の扶養家族にはなれません。任意継続か国民健康保険を選択することになります。この場合、世帯分離は影響があるのでしょうか。息子夫婦と親夫婦は別々の医療保険制度に加入しますので、世帯分離してもしなくても、影響はありません。

 

親夫婦の年金が少なく、その他の収入も見込めないなら(夫婦それぞれ年収見込み180万円未満が条件です)、会社員の息子の扶養として健康保険に加入できます。扶養家族になれば保険料の負担がありません。息子の扶養となるには、世帯分離はしないでおきましょう。別世帯になると、息子から親への仕送りが証明できないと扶養になれないなど、複雑なことになります。

 

「世帯」とは複雑です。医療保険料という点からみると、世帯分離が不利に働くことも、あります。「私の場合は? 我が家の場合は?」と、個別に確認することが必要ですね。

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