商品に投資する投資信託・前編【2012年 第7回】

【2012年 第7回 商品に投資する投資信託・前編】若者&奥様のための「商品投資入門」

三次 理加(ミツギ リカ)プロフィール

 

私の記憶によれば、我が国で初めて「商品に投資する投資信託」が販売されたのは2004年暮れ。それは、大和証券のダイワ・コモディティ・インデックス・ファンド『ジム・ロジャーズ世界探検記』。最低申込金額は、500万円。当時、証券会社が商品を取り扱う、なんてことは全く想像できなかったので、とても驚いたことを覚えています。今回から2回にわけて、商品に投資する投資信託について紹介します。

商品に投資する投資信託 

 『ジム・ロジャーズ世界探検記』販売開始からおよそ7年半。今や、商品に投資する投資信託は30本程度販売されています。投資金額も数千円程度から申し込めるものや積立型も出てくるなど、バラエティ豊かです。

 早速、商品に投資する投資信託について紹介しましょう!と申したいところですが、その前に。。。まずは投資信託とはなにか?簡単に説明しておきましょう。

 投資信託とは、「投資家から集めた資金をひとつにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに分散して投資・運用する金融商品。」のことです。その運用成果は、投資額に応じて投資家に分配される仕組みになっています。

 これから紹介する「商品に投資する投資信託」とは、金や原油、穀物などのいわゆる商品(=コモディティ)を主な投資対象とする投資信託のことを指します。ひとくちに「商品に投資する投資信託」といっても様々な種類がありますが、大きく ①商品指数連動型投資信託 ②商品先物投資信託 ③商品ETF の3つに分類することができます。

①商品指数連動型投資信託 

 商品指数連動型投資信託とは、投資信託の成績が特定の商品指数に連動するように作られた投資信託のことです。特定の商品指数に連動して償還価額が変動する仕組み債に投資するものと、特定の商品指数に連動するよう実際に商品市場で運用するものの2種類があります。商品指数には、たとえばS&P GSCI商品指数やDJ-UBSコモディティ・インデックスなどがあります。

 商品指数連動型投資信託は、どの商品指数に連動するものか?によって成績が異なります。なぜなら、商品指数によって商品の組み入れ比率が全く異なるからです。たとえば、S&P GSCI商品指数は、原油等エネルギーへの組み入れ比率が全体の69.4%を占めており、ほかは貴金属3.6%、非鉄金属7.0%、畜産物5.2%、農産物14.8%となっています(注1)。

 一方、DJ-UBSコモディティ・インデックスのエネルギーへの組み入れ比率は32.6%で、貴金属12.6%、非鉄金属18.6%、畜産物5.7%、農作物8.3%、穀物18.7%等となっています。(注2)。投資する際には、組み入れ比率がどのようになっているのか確認することをおすすめします。
注1:資料「野村コモディティ投信2(S&P GSCI商品指数)マンスリーレポート 2012年5月31日」
注2:資料「パインブリッジ・コモディティファンド」投資信託説明書(交付目論見書)平成24年5月10日

また、現在、販売されている商品指数連動型投資信託の多くは、海外の商品指数に連動しています。そのため、為替リスクがあることに注意しましょう。

 なお、国内で販売されている商品指数連動型投資信託の多くは、「特定の商品指数に連動して償還価額が変動する仕組み債に投資する」投資信託です。この投資信託は、実際に商品市場へ「直接」投資しているわけではありません。仕組み債、つまり「債券」に投資するため、債券の発行体に対する信用リスクや流動性リスクがあります。「流動性リスク」とは、簡単にいうと、「売りたくても売れない」というリスクのこと。たとえば、2008年に起きたリーマンショックの時には、現在価格が計算できなくなり、中途換金の受け付けを一時停止した商品指数連動型投資信託もありました。

②商品先物投資信託 

 商品先物に投資する投資信託は、国内では新しいタイプの投資信託です。規制緩和により商品先

物に直接投資する投資信託が解禁されたのは2008年12月のこと。これを受けて2009年7月以降、原油や金など、海外の商品先物市場に直接投資する投資信託が国内でも販売されるようになり、翌年2月には、国内初となる国内商品先物市場に直接投資する投資信託が登場しました。

 これら商品先物に投資する投資信託は、たとえば金先物の場合、実際に金先物市場で金を買います。といっても、商品先物を直接取引する場合と異なり、取引にあたって投資家が追加の資金等を入金する必要はありません。

 商品先物取引には、決済の期限があります。この決済期限の属する月を限月(げんげつ)といいます。商品先物取引では、限月ごとに値決めがされます。たとえば、金先物取引の場合、金先物価格は一つではなく限月分だけ存在します。ちなみに、国内の商品先物取引の場合、限月は原則6本あります。つまり、金先物価格は6つ存在します。

 商品先物投資信託が金先物を買った場合、期限を迎えた限月の「買い」を売り決済し、新たに次の限月に「買い」を保有します。そのため、乗り換えの売買の際にかかる手数料のほか、売買の価格差が投資信託の収益に影響します。この価格差は、利益またはコストとなります。

 図表1は、横軸に限月(右側にいくに従って決済期限が遠くなる)、縦軸に価格を記載したグラフです。左側の図のように、乗り換え後の価格が高い時は価格差がコストとなる一方、右側の図のように、乗り換え後の価格が安い時は価格差が利益になります。そのため、金先物投資信託であっても金先物と同じパフォーマンスにはならない、という点には注意が必要です。

なお、海外の先物市場に投資する投資信託の場合、直接的に為替リスクが発生する点にも注意しましょう。

次回は、商品投資信託(後編)として、③商品ETFと、ETN(債券)について紹介します。お楽しみに。

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