ステップファミリーの相続【2012年 第7回】

【2012年 第7回 ステップファミリーの相続】女性のための幸せ相続を考える

マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス

ステップファミリーの相続は、複雑で揉めごとが起きがちです。それぞれの立場や想いに配慮した備えをしておくことが大切です。

■   増えるステップファミリー。相続トラブルも増えていく?

ステップファミリーという言葉を耳にする機会が増えてきました。ステップファミリーとは、夫婦のどちらか、または両方が子連れで再婚した家族のことをいいます。

非婚・晩婚化などによって「夫婦ともに初婚」というカップルの件数が減っているのに対し、「夫婦ともまたはいずれか一方が再婚」のカップルは昭和50年以降増加しており、中でも「夫婦ともに再婚」の数は大きく増えています(厚生労働省 統計資料より)。

ステップファミリーの相続は、複雑で揉めごとが起きやすくなりがちです。夫婦ともに再婚の、あるステップファミリーの例を通して、円満な相続のために知っておきたいことや備えておきたいことについて、妻の目線で見てみましょう。

■   夫が亡くなったとき(一次相続)

  • 相続人は誰?

相続人は妻と、再婚後に生まれた子、そして夫の前妻の子2人の合計4人となります。妻の連れ子は夫と養子縁組をしていなければ相続人にはなりません。

  • 連れ子が財産を受け取るには?

連れ子と再婚後に生まれた子とでは相続における扱いが異なります。再婚して生まれた子には相続権がありますが、夫と養子縁組していない連れ子には、夫の財産を受け取る権利がありません。

連れ子も夫の財産を受け取れるようにするには、夫が連れ子に財産を渡す(遺贈)ことを記載した遺言書を用意しておくか、夫と連れ子が養子縁組するなど事前の準備がなければ実現は難しくなります。

養子縁組をすると、連れ子は養親の嫡出子としての身分を取得します。実子とおなじように法定相続人となり、相続税の基礎控除の人数にカウントされるなど税金面でのメリットがありますが、養子縁組をせずに遺言書で財産を遺贈する場合にはこのメリットは受けられません。

養子縁組するしないを検討するにあたっては、相続における税金面のメリット以外の点にも目を向ける必要があります。養子縁組しても連れ子と実の父親との親族関係は残りますので(一般養子縁組の場合。※注参照)、連れ子は養親と実親との二重の親子関係を持つことになり、養親に対しても相続権と扶養義務が法的に発生します。子の年齢や家族の事情などをよく考慮した上で判断することが必要です。

(※注 一般養子縁組と成立条件の異なる特別養子縁組の場合には、実親との親族関係は終了します。)

  • 前妻の子にも配慮した配分を

ステップファミリーの相続で悩みやトラブルが起きやすいのは、夫の前妻の子との間です。

前妻の子も夫の遺産相続に関しては後妻の子と同じ権利を持ちますので、遺留分を侵害する配分にならないよう気をつけます。

父親の離婚・再婚がなければ本来ならば財産はすべて前妻の子が相続するはずだったことから、後妻母子と前妻の子とで遺産分割協議を進めることは、感情論が先に立って困難というケースも珍しくありません。

遺された後妻母子の生活資金を確保する一方で、前妻の貢献によって形成された預貯金や不動産については前妻の子に相続させるといった配慮も必要です。そのためには、夫があらかじめ遺言書を作成し、誰に何を相続させるかを具体的に決めておくとスムーズです。

■   妻が亡くなったとき(二次相続)

  • 相続人は誰?

夫が亡くなり、次に妻が亡くなった場合の相続では、相続人は後妻の連れ子と、再婚後に生まれた子です。ここでは前妻の子は相続人とはなりません。

一次相続で妻が相続した夫の財産は、相続人である後妻の子ども達がすべて相続します。夫と前妻とで共に築いた財産が含まれていたとしても、前妻の子には受け取る権利がありません。

前妻の子としては、納得がいかない・・と考えることもあるようです。その場合、次のような方法で前妻の子に配慮がなされることがあります。

・  夫が遺言書を作成し、一次相続の際に前妻の子に財産を多めに渡すようにする

・  前妻の子と後妻とで養子縁組しておき、前妻の子を後妻の相続人にする

・  後妻が遺言書を作成し、夫から相続した財産の一部を前妻の子に遺贈する

夫と前妻の子との関係、後妻や子どもの気持ち、財産の額などによっても選択肢は変わってくるでしょう。いずれの方法をとる(とらない)場合でも、一次相続、二次相続とトータルで考えた準備が必要です。

連れ子と実子、前妻の子など、それぞれ立場の違う子供たちが相続をきっかけにギクシャクしてしまわないためにも・・・ひとりひとりが故人との思い出を持ち、それぞれの想いがあることをふまえて適切な備えをしておくことが、ステップファミリーの幸せ相続にはより求められるものと思います。

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