特別養護老人ホーム【2013年 第9回】

【2013年 第9回 特別養護老人ホーム】高齢期の介護とすまい

岡本 典子 ⇒プロフィール

『介護保険3施設』の一つで、高齢者施設において人気No.1なのが「特養」(特別養護老人ホーム)です。申し込みをしてもなかなかすぐには入れず、2~3年待ち、200~300人の待機者あり~という話をよく耳にします。その「特養」とはどういう施設なのか、みていきましょう!

 

 

 

 

 

 

 

『特別養護老人ホーム』、またの名は『介護老人福祉施設』とは

『特別養護老人ホーム』というのは老人福祉法上の名称で建物を指しますが、介護保険上では『介護老人保健施設』といいます。これは老人福祉法(昭和38年7月制定)の下に開設認可を申請し、認可を受けた特別養護老人ホームは、介護保険法(平成12年4月制定)の指定を受けるという二重構造があるためです。
「特養」は身体上、または精神上著しい障害があり、介護保険制度で介護の必要がある「要介護1」以上の高齢者が利用可能な高齢者施設です。一度入所すれば「終のすみか」となることから、安心して介護を受けて生活することができます。しかし、医療的ケアはできないので、常時医療が必要になり3カ月以上入院すると退所しなければなりません。

「特養」の月額費用はいくらくらい?

「特養」は地方自治体や社会福祉法人が建て運営している公的な施設です。そのため入所時に特に費用はかからず、月額費用は総じて民間施設より安めです。
古くからある4人部屋など多床室(一部の個室は別途料金がかかる)と、近年できたユニットケア方式の特養では料金が異なります。ユニットケア方式は、食堂を中心に10室の個室を1ユニットとしてグループ化し、日中は孤立させないよう食堂に会しつつプライバシーも保てる理想的介護方法といえますが、その分人手がかかりスタッフは重労働です。それは費用にも反映され、利用料金(居住費、食費)が従来型より高くなっています。

従来型の多床室は月額5~15万円程度なのに対し、ユニットケア方式では月額12~22万円と、低料金設定の有料老人ホームと同等かそれ以上かかるところも出現してきました。直近では以前と同様に多床室を中心とした従来型特養の建設も復活しています。この他、水光熱費、介護保険1割負担額、医療費、雑費などがかかりますが、介護保険1割負担分においてもユニットケア方式の方が若干高くなっています。
実際は、特養における利用料金は所得により軽減される制度があり、利用区分が第1段階(生活保護受給者など)から第4段階(市区町村税課税世帯)の4段階に分かれ、それぞれ利用料支払額が異なります。
「入所費用が安い」ことが最大の魅力であることから低所得の利用者が多く、4分の3の人が軽減を受けて生活しています。

「特養」の入所基準

現在日本には7,000ヵ所以上の特養があり、42万人が入所し、同程度の41~42万人が待機しているといわれています。中には2~3年待ち、待機者数900人以上という人気の特養もあります。
では、入所における基準は何でしょうか?
厚生労働省の省令により「施設サービスを受ける必要性が高いと認められる申込者を優先させる」となっています。つまり、緊急度が高い人が優先されるのであり、長年待機していたから次は私の番~ではないのです。
申込者一人一人の入所に向けたポイントが自治体ごとの計算方式で、男女別に序列化されます。特に高ポイントな要素は、
・要介護度が高い(要介護5、4の順)
・介護する人がいない(おひとり様など)

という点です。
1床空いた時点で、一番緊急度が高い待機者へ電話などで入所案内が届きます。
もし、入院中であるとか、待ちきれず有料老人ホームに入居し安定した生活を営んでいる…とか、残念ながらすでに亡くなったという場合は次点の待機者に連絡が行くシステムです。
特養への申込ですが、市区町村の担当課へ申し込む自治体と、各特養へ直接申し込む自治体があります。
特養入所の難易度でいえば、人口が多い都会の特養へは入所しにくく、地方ではそれほどでもないと言
えます。特養は介護保険で賄われているため地域住民が優先されますが、1~2割程度は市区町村外から
の受け入れ枠もあります。そのため、地元の特養にはなかなか入れないが、必ずしも近くでなくてもい
いのですぐに入所したいという場合は、比較的入りやすい地方の特養へ申し込むという選択肢もありま
す。

特養入所を希望する待機者は自宅の他、老健、グループホームなどで声がかかるのを今か今かと待っています。
政府が目指す「施設」から「在宅」へという流れの中、やはり特養の人気は衰えない現実があります。

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