商品投資のメリット・デメリット【2012年 第3回】

【2012年 第3回 商品投資のメリット・デメリット】若者&奥様のための「商品投資入門」

三次 理加(ミツギ リカ)プロフィール

 

商品投資の「商品」って何?

 前回まで2回にわけて、現在の商品市況を取り巻く環境、高騰の背景について紹介しました。

 ところで、そもそも「商品」とは何のことを指すのか、ご存知でしょうか?

投資の世界における「商品」とは、そのほとんどが商品取引所に上場され、取引されているものを指します。これら上場商品には、以下のような特徴があります。

①大量に流通し、取引規模が大きいこと。

②品質が同質で標準化が可能であること。

③価格が大きく変動すること。

 2012年3月1日現在、我が国には東京工業品取引所、東京穀物商品取引所、関西商品取引所と、3ヶ所の商品取引所があります。これら取引所に、金、白金(プラチナ)などの貴金属、原油、ガソリン、灯油などの原油・石油製品、コメ、とうもろこし、大豆などの穀物、コーヒーや粗糖など農産物等延べ32商品が上場されています。

一方、たとえば先物先進国である米国では、大豆、とうもろこしなどの穀物、コーヒー、砂糖などの農産物、ガソリン、天然ガスなどのエネルギーのほか、オレンジジュース、牛肉、豚肉赤身、生牛(生きている牛)、生豚などまでも上場されています。

商品投資のメリット

 今や商品投資、とひとくちにいっても様々な種類があります。

これらの中から、何を投資先に選ぶのか?を決めるためには、商品投資のメリット・デメリットを押さえておく必要があります。

 商品投資には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

商品投資には、大きく3つのメリットがあります。

 一番のメリットは、「信用リスクがない」ということです。たとえば、金(ゴールド)は、「Gold is Nobody’s liability」(=金は誰の債務でもない)といわれます。株や債券などは、発行体の信用供与により価値を有します。そのため、たとえば株の場合、万が一、その企業が倒産すればその株券の価値はゼロとなります。

一方、モノである金は、発行体の信用によりその価値を見出すものではなく、それ自体が価値を有します。そのため、資産価値がゼロになることはありません。これは、商品全体にあてはまることだといえるでしょう。

ただし、昨今、登場してきた「金融商品化した商品」の場合には、株や債券などと同様、発行体の信用リスクを有するものもありますので注意しましょう。これら金融商品化した商品の概要については、第7~9回で紹介する予定です。

 2番目のメリットは「株や債券との分散投資効果」です。前回、商品市場高騰の背景に欧米年金マネーの存在がある、ということをお話しました。欧米年金マネーが商品に注目している理由のひとつがこの「株や債券との分散投資効果」です。商品は、株や債券と価格変動要因が異なるため、長期的にみて、株や債券の価格変動との相関性が低い傾向にあります。

 「相関性が低い」と聞くと、なんだかずごく難しいことに感じてしまうかもしれませんね。簡単にいえば「商品は、株や債券の価格変動とはあまり関係のない、異なる値動きをすることが多い」ということです。たとえば、「株価が下落しても、同時に商品価格は下落しない」というようなことです。そのため、資産運用に商品を組み込むことによる分散投資効果が期待できるといえます。

 ただし、近年は、商品の金融商品化や投資の世界におけるコンピュータ運用(超高速取引・アルゴリズム取引)の登場により、短期的には株や債券との相関性が高くなる傾向にあることには注意したいところです。

 3番目として「インフレに強い」ということがいえます。インフレーションとは、簡単にいえば「お金の価値が下がって、モノの価値が上がること」をいいます。商品投資の対象である「商品」は、モノですから、インフレになると価格が上昇する傾向にあります。

商品投資のデメリット

 逆に、商品投資にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?

 商品投資のデメリットは、大きく2つあります。

ひとつ目は、商品投資には株や債券と異なり「配当や金利がない」ということ。商品はモノですから、それ自体が配当などを生みだすことはありません。

 ただし、金や白金など貴金属の寄託商品や金融商品化した商品の中には、配当や金利に相当する金銭を受け取ることができるものもあります。関心のある方は、調べてみるのも良いでしょう。その場合、「信用リスク」が発生することをお忘れなく!

ふたつ目は、商品の現物を保有した場合、倉庫や貸金庫等の「保管コスト」が発生することがある、ということ。もちろん、たとえば自宅などで保管すれば「保管コスト」は発生しませんが、代わりに盗難や紛失等のリスクが発生します。

商品投資を行うには、そのメリット・デメリットを把握したうえで、「何を目的として、商品に投資するのか?」といったご自身の投資目的にあわせて商品を選ぶようにしましょう。

次回は、は金(ゴールド)や白金(プラチナ)等「貴金属投資の基礎知識」について紹介します。お楽しみに。

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