「たとえここで学問をして業が成っても、自分の生国が亡びては何の為になるか。」【2015年 第7回】

【2015年 第7回 「たとえここで学問をして業が成っても、自分の生国が亡びては何の為になるか。」】
吉田松陰の言葉からから考えるライフプラン

上津原 章 ⇒プロフィール

こんにちは。山口県のファイナンシャルプランナー、上津原章と申します。

今回の松陰先生の言葉から考えるコラムでは、先生の門下生である、初代内閣総理大臣の伊藤博文を取り上げたいと思います。

 

長州軍がイギリスなどの四カ国艦隊と戦って圧倒的な敗北を喫した下関戦争の時、交渉役の高杉晋作とイギリス軍との間で通訳の役割を果たしたのが伊藤博文です。大河ドラマ「花燃ゆ」の下関戦争の場面でも伊藤博文(役:劇団ひとり)が高杉晋作(役:高良健吾)とともに登場していたので、覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

先生の伊藤博文に対する評価は、

「才劣り、学幼し。しかし、性質は素直で華美になびかず、僕すこぶる之を愛す」

といわれています。能力よりも彼の人間性を高く評価している様子がうかがえます。

 

彼の人間性がうかがえるのが、長州藩に志願してイギリスへ留学した時のエピソードです。1863年に、井上聞多(後の馨)、遠藤謹助、山尾庸三、野村弥吉(後の井上勝)とともに留学をするのですが、下関で戦争が起きることを聞き、井上聞多とともに1年足らずで日本へ帰国します。その時に発したのが表題の言葉です。

 

意訳:ロンドンで学んだことが自分の立身出世につながっても、自分が生まれた故郷(長州藩)がなくなってしまっては全く意味がない。

自分が留学して学問に打ち込めるのは、生まれた国(長州藩)があってこそ。ロンドンにとどまることで自分が得たいと思っている学びを深めることができるとしても、国が亡くなってしまっては学んだことは自分のためしか役立たなくなってしまいます。

平たく言えば、イギリスへ留学するための動機が失われたということなのですが、同時に生まれた国を守るというもっと大事なことに気付いたともいえます。

よく、政治家や経営者といった上に立つ人物が持つべき心構えとして、「利他の心」ということをよくいわれます。私たちは自分のために働くよりも人のために働く方が本来の力を発揮できるそうです。彼が明治維新以降内閣総理大臣という大役を果たす姿を書物などで学ぶにつけ、彼が持つ人間性の素晴らしさを感じずにはいられません。

<この言葉から学ぶライフプラン>

ライフプランを作成する時、長期的な資金繰りを考える際に、

「なぜ、お金を残さなければならないのか。」

「なぜ、お金をふやさなければならないのか。」

といった視点を大事にするようにお客様にはお話ししています。この二つの問いに答えが出なければ、どれだけ家計管理を誰か一人で頑張っても、周りの方から協力が得られないのでなかなかお金が残りません。

 

同じように、子供さんに教育費をかけて勉強させるときに、

「なぜ、勉強をして志望校に合格しなければならないのか。」

といった問いかけに答えが出ないと、志望校に合格することが目的になってしまい、合格した後になって目的を見失って勉強に身が入らなかったりします。

お金を残すことや、志望校に合格することは、もっと先の大事なことを達成するための途中の過程にすぎません。

もっと大事なことというのは人それぞれ違いますが、家族のためとか世の中のためといったように、

自分ではなく他人に矢印が向いている点では同じなのではないでしょうか。

金は天下の回りものといわれますが、周りの人のためを思った自分自身の行いも、いつかはその報いが自分に向かってくるようです。

 

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