各国の金融政策の動向【2011年 第8回】

【2011年 第8回】 各国の金融政策の動向 ~資産運用に必要な今どきの経済知識~

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

今後の金融政策はどうなるか。鍵は成長著しい中国、そして財政危機のギリシャが握っているようにも思えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラフは2007年12月から2011年7月13日までの先進主要国の政策金利です。リーマン・ショック以降、各国は一斉に政策金利を引き下げ、特に日米は実質上ゼロ金利に近い水準まで金利が低下しています。その中でもユーロがインフレ懸念という事で2011年4月より金利を引き上げています。今後の金融政策の行方ということで、まずユーロ、次にアメリカ、そしてグラフには載っていませんが中国について考えてみましょう。

1.ユーロ

ユーロ圏の経済は、ユーロ安に牽引される好調なドイツをはじめとする北部、そしてギリシャを始めとする財政危機下の低成長の南部、いわゆる“北高南低”の状況です。その中でもあえて金利引き上げに踏み切ったのは2011年で2%を超えると予想されるインフレ率(IMF,World Economic Outlook:April 2011)の為でしょう。

しかし南欧特にギリシャの財政危機、予断を許しません。EUからの支援という球は投げられましたが、あとはギリシャがそれを受け入れることが出来るか?ギリシャが大胆な歳出カットと増税に踏み切らない限りEUとしても各国の国内事情を考慮すると支援の枠組みが崩壊することもあり得るでしょう。

特に7月15日に発表された欧州銀行監督機構(EBA)のストレステストの結果は、ギリシャ国債のデフォルト確率を織り込んでいないようです。ヨーロッパの銀行の経営に大きな影響を与える可能性があります。

当面、ユーロの今後はギリシャ政府の出方に係っていると思います。

2.アメリカ

アメリカは量的緩和政策(QE2)を6月でひとまず打ち切りました。その後経済の復調の足取りが重いという事でQE3も取りざたされています。

ただし、アメリカの政策金利(Federal Funds Rate)はゼロに近い状態。そこで長めの金利を低位誘導しようとしたのがQE2ですが、そのQE2の効果はどれほどのものであったのか。供給されたマネーはアメリカ国内に向かわず新興国と資源に向かっていき、QE2はドル安と新興国のインフレをもたらしただけ、という見方もあります。QE3も、という現状ではFRBは金利の引き上げは困難な状況でしょう。特にギリシャ問題は世界的金融危機につながる恐れがありますので、最悪の場合先進各国協調のうえでの金融緩和は避けられないでしょう。

3.中国

中国の金融政策の大きな課題は一つ。完全変動相場制への移行がいつになるか、という事でしょう。中国は現在為替相場を一定の枠内に収め、人民元を急激に上昇させない、管理変動相場制をとっています。実質的には固定相場制に近いものでしょう。

しかし国際金融では“①独立した金融政策、②自由な資本移動、③固定相場制、この3つを同時に達成することは不可能である。”という命題があります。

中国は建前上は資本規制をしており、一応は自由な資本移動とは言えません。ただし経済のグローバル化のもとでは完全に規制をかけることは困難です。遅かれ早かれ完全な変動相場制への移行は避けられないでしょう。中国政府は人民元を市場を見ながら徐々に変動相場制に近づけていくソフト・ランディングを考えているとも見えますが、果たしてそれが可能か。今の物価上昇は管理変動相場制の大きな副作用ともいえます。

5%程度では何とか対応できるかもしれませんが10%を超えるようになると今の管理変動の制度そのものの維持できなくなるでしょう。

それとは別にIMFの改革に伴い、新興国の発言権を増すような方向性ですが、これも完全な変動相場制でないと発言権も限定的なものになるでしょう。

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