働くママを応援【2013年 第5回】

【2013年 第5回 働くママを応援】女性のための社会保険アドバイス

菅野 美和子 ⇒プロフィール

少子高齢社会をなんとか止めたいと、国はいろいろな政策を出しています。社会保険においても子育て支援はだんだんと充実されてきて、「働くママ」だけではなく「働くパパ」を応援する制度が整ってきました。今回は社会保険制度がどのように働くママを応援しているのかについてお話します。自分の夢も子育ても大事にしていきたいものです。

心配なこと

B子さんは現在妊娠6ヵ月目。赤ちゃんは順調に育っています。B子さんは出産後も仕事を続けていきたいと思っています。先輩ママたちのように育児休業して職場復帰するつもりです。

しかし、心配なこともあります。それは、1年間会社を休むことによって、経済的にやっていけるかどうかということです。夫の会社は経営がきびしく、昇給やボーナスは期待できません。また、希望するときに保育所に入れるのか、実家も遠いので、子どもが病気になったらどうしようかなど、考えてしまいます。

まず、B子さんのお金の心配についてみていきましょう。

産前6週、産後8週は法律で定められた出産のための休業期間です。一般的にその休業期間は無給であることが多いのですが、勤め先で健康保険に加入している人は、出産手当金を休業保障として受け取れます。

 

出産手当金は、産前42日(双子以上の場合は98日)産後56日の間、欠勤1日につき、標準報酬日額の3分の2を受け取れます。標準報酬日額とは、毎月の総支給額の30分の1を目安にしてください。実際には各人によって定められた標準報酬月額(社会保険料計算の基礎となる給料)によって計算されます。

給料(標準報酬月額)が24万円の人であれば1日分として5,333円が支給されることになります。

実際の出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数分、給付金を受け取れます。

そして出産手当金とは別に出産育児一時金を受け取ることができます。

子どもひとりにつき42万円です。出産する病院で前もって手続きをしておくと、退院時に実際にかかった費用から42万円を差し引いた金額を窓口で支払えばよいのです。正常分娩であれば、一般的に出産費用は42万円以上となることが多いでしょう。

実際にかかった費用が42万円より少ない場合は、あとで差額を受け取れます。

産前8週が経過したあとは、育児休業が可能です。育児休業中は、一定の条件を満たしたとき、雇用保険から育児休業給付金を受け取れます。支給額は、休業開始前賃金の50%です。産休に入る前6ヵ月間の給料(総支給額)の平均で計算をします。平均額の半分、受け取れると理解してください。

育児休業は原則として子どもが1歳になるまでです。

地域にもよりますが、保育所に空きがないこともあります。保育所に入れないときは、育児休業を1歳6ヵ月まで延長でき、給付金も受け取れます。ただし、期限までに申請手続きが必要ですので、保育所に入れない可能性があるときは、前もってハローワークで相談してください。

給付金の他にも、育児休業中の経済的な支援があります。育児休業中は健康保険料や厚生年金保険料が免除になるのです。

本人負担分も会社負担分も免除になるというしくみです。しかも、免除となっても健康保険証は使用できますし、将来受け取る年金は、保険料を払ったものとして計算されます。

子育てを応援するしくみは、職場復帰後も続きます。職場復帰後は、育児のために通常より短時間で働くこともあります。育児時短を利用すると、働く時間に合わせて賃金は下がります。賃金が下がった場合は、通常の保険料改定のルールとは別に、実態に合わせて健康保険料や厚生年金保険料を下げることができます。

また、子どもが3歳になるまでは、賃金が下がったときも将来の年金は下がる前の水準で計算し、子育てが不利益にならない制度が導入されています。これは働くママだけではなく、パパも利用できる制度です。

ただし、手続きが必要です。育児休業したママは職場復帰するとき、育児休業しないパパは子どもが生まれたときに手続きしてしまいましょう。

B子さんのお金の不安は少し解消されたでしょうか。

実際に職場復帰したあとは、子どもの病気に悩むことと思います。

 

労働基準法では、子の看護のための休暇も義務づけられています。看護休暇は無給であることが多いですが、いざというときは子育てする人の「権利」としてお休みできるので、子育て中のママにとっては心強いかもしれません。ただ、お休みした分はまわりの人たちがカバーすることになるので、気持ちよく働いていくためには、感謝の気持ちや心配りが必要でしょう。

 

B子さんは、休業中の給付金の額について調べて、休業中の家計プランをたててみてください。

保育所情報や子育ての具体的なサポートについて、市区町村などで確認しておくといいですね。

乳幼児期は、次々に病気もしますし、休む暇もないくらい大変ですが、子育てを楽しむ気持ちですごしていきたいものです。

パパの育児参加も大切です。パパが育児休業を取得することもできますが、まだまだ少数です。育児休業とまではいかなくても、家事を分担し、ふたりで子育てをするというスタンスであれば、協力しあって子育てできるでしょう。

自分の夢も仕事も子育ても、どれもあきらめないでほしいと思います。
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