今月の数字5:5年以内なら取り戻せる!?【2013年 第5回】

【2013年 第5回 今月の数字5:5年以内なら取り戻せる!?】
相続に関する数字エトセトラ

平川 すみこ ⇒プロフィール

このコラムでは、相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
5月の数字は「5」。5年以内なら相続税が取り戻せる! そんな手続きがあるのですが、それはいったいどういうことでしょう?

 

 

 

 

相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければいけません。例えば、2月10日に死亡した場合にはその年の12月10日が申告期限(この期限が土、日、祝日等にあたるときは、これらの日の翌日)です。

でも、その申告の際に納税すべき税額を過大に申告してしまった場合は、どうしたらいいのでしょうか?

■相続税は申告納税方式

相続税は国税で、所得税と同じ「申告納税方式」が採用されています。

申告納税方式とは、自分自身で税制とその根拠法に従って所得や税額を計算して申告納税する方式のことです。つまり、相続税の税額って自分で計算して算出しなければならないのです。ただ、税額の算出方法がややこしいので税理士に申告書の作成を依頼する方も多いでしょう。

でも、自分で税額を計算するとなると、税制や法根拠をよく知らず、計算を誤ってしまい適正な税額が算出されていないこともありますよね。相続税の場合は、相続・遺贈で取得した相続財産に対して課税されるわけですから、そもそもの財産に対する評価額が適正でなかった!ということもよくあることです。

5月分平川さんイメージまた、相続税の課税対象ではないと思って相続財産に含めていなかったら、実は課税対象だったとすると、その相続財産については「申告漏れ」ということになってしまいますね。(ちなみに、申告漏れと指摘されることが多いのは「家族名義の預金」なんだとか)

 

「うちは税理士にお願いしたから大丈夫!」と思っていても、その税理士が申告すべき全部の相続財産を把握できていなければ「申告漏れ」は生じてしまうし、相続財産について適正な評価をしていなければ、税務署から申告した相続税が「少なすぎ

る」と指摘されることもあるのです。

■税額を多く申告してしまったら!?

申告した相続税が少なすぎた(過少)の場合は、「修正申告」を行い、不足分の税額を納めます(この際、加算税、延滞税が加算されることもあります)。

逆に、申告した相続税が多すぎた(過大)の場合は、「更正の請求(減額更正)」を行い、多く納付しすぎた税額を還付してもらうことができます。

 

この「更正の請求」ができる請求期間には制限がありますが、平成23年度の税制改正で請求期限が延長されました。従来は、更正の請求の請求期限は法定申告期限から1年でしたが、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、法定申告期限から原則として5年に延長されたのです。1年と5年とでは随分違いますよね!

 

※なお、相続税では、「未分割財産を分割したことにより、当初申告の課税価格と異なることになった」というような相続固有の特殊な事由が生じることがあるため、そのような場合には別途、過大な申告について更正の請求ができる期限に救済規定(特則)が設けられています。

■税額を多く申告してしまったら!?

前述のとおり、従来(平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来する国税)については更正の請求の請求期限は法定申告期限から1年でしたが、請求期限を過ぎても法定申告期限より5年以内であれば「嘆願」という手続きで、納めすぎた税金を還付してもらうことができました。

ただし、「更正の請求」が「納税者の権利」であるのに対し、「嘆願」は「税務署の権利で救済してください」というお願いなので、嘆願が認められなくても文句は言えない(不服申立てできない)という違いがあります。

それが、税制改正によって、「納税者の権利」である「更正の請求」の請求期限が5年に延長されたことは、納税者側によってはより有利な制度になったということですね。

ちなみに、この税制改正に伴い、平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来する国税について行う「嘆願」は「更正の申出」に変更され、手続きできる期限も「相続税は法定申告期限より3年以内」となっています。もちろん名称が変わっただけなので、申出が認められなくても不服申立てできないのは従来どおりですが。

■あなたが相続税の申告をすることになっても・・・

さて、平成25年度の税制改正では、相続税の大幅改正が行われ、平成27年1月1日以降に相続または遺贈で取得する財産に対する相続税に適用される予定です。

この改正により、相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税がかかるようになる方が1.5倍になるといわれています。それだけ相続税の申告をする人が増えることになります。(特例の適用により相続税額が0円になる場合でも申告が必要です)

 

一度で適正に申告できればそれに越したことはありませんが、もし「あ~申告・納税した相続税額が多すぎた~!」ということがあっても、諦めることはありません。「納税者の権利」として法定申告期限から5年以内に「更正の請求」の手続きをすれば、減額して還付してもらえるということを、ぜひ覚えておきましょうね!

 

なお、相続税の申告や更正の請求等にあたっては、最寄の税務署や税理士にご確認・ご相談ください。
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