新 商品先物取引のしくみ【2011年 第8回】

【2011年 第8回】 新 商品先物取引のしくみ 投資コラム

三次 理加(ミツギ リカ) ⇒プロフィール

商品先物取引のルール(総額の不足、現金不足額等のルールについて)

 

前回説明したSPAN®証拠金制度の導入に伴い、商品先物取引のルールも大きく改変されました。
第8回となる今回は、商品先物取引を行う際に覚えておくべき取引ルールについて説明しましょう。

○値洗い

商品先物取引では、保有する建玉(たてぎょく 注1)について、その含み損益額を毎日計算します。これを「値洗い(ねあらい)」といいます。保有する全ての建玉における、この計算上の含み損益のことを「値洗損益金通算額」といいます。

値洗損益金通算額は、約定値段(=買い(または売り)注文が成立した値段のこと)と帳入値段(注2)の差額に、取引倍率と取引枚数を乗じることにより算出します。算出額がプラスの場合を「値洗い益」、マイナスの場合を「値洗い損」といいます。

値洗いは、値洗損益金通算額を毎日計算するだけではありません。その日の帳入値段で計算した結果、値洗い損が発生した場合、取引を継続するためには、翌営業日正午までの商品先物取引業者が指定する日時までに当該金額を差し入れまたは預託する必要があります。

注1:たとえば4,000円で東京金を新規に買う(または売る)など、成立した未決済の契約のこと。「ポジション」ともいう。
注2:板寄せの場合、帳入値段=その日の最終値段。東京工業品取引所(以下、東工取)並びに東京穀物商品取引所の場合、日中立会終了直前2分間の出来高加重平均価格。ただし、東工取におけるミニ取引の帳入値段は、標準取引の帳入値段。

○不足額の計算(総額の不足額、現金の不足額)

第7回で説明したように、委託者(=お客様)が取引を行う際は、委託者証拠金を商品先物取引業者に差し入れまたは預託する必要があります。委託者証拠金は、建玉を保全するために維持すべき証拠金です。そのため、取引を決済するまでは、その金額を維持することが必要となります。

委託者証拠金額が維持できない口座状況としては、「総額の不足額」または「現金不足額」の2つがあります。
「総額の不足額」とは、「受入証拠金の総額(注3)」が「委託者証拠金」を下回っている場合に、その差額のことをいいます(図1)。
注3:受入証拠金の総額=預り証拠金±現金授受予定額

 

 

「総額の不足額」は、受入証拠金額の減少や委託者証拠金額の変更によって発生します。受入証拠金額が減少する例としては、相場変動により建玉の値洗いが悪化し値洗損益金通算額がマイナスとなる場合や、建玉の決済により損金が発生した場合などが挙げられます。

図1 「総額の不足額」

 

 

 

 

 


資料:日本FP協会認定継続教育(通信研修)テキスト「新・商品先物市場の仕組み~資産運用からリスクヘッジ機能まで~(前編)」執筆者/著 日税ビジネスサービス/発行

「現金不足額」とは、「預り証拠金」のうち「現金」の額が委託者の「現金支払予定額」を下回っている場合に、その差額のことをいいます。

 


注4:「現金支払い予定額」とは、注3の現金授受予定額がマイナスの場合、その絶対値をいう。

「現金不足額」は、以下の場合に発生します。

①差し入れまたは預託している金銭が「有価証券のみ」の時に、値洗い損となる場合。
②差し入れまたは預託している金銭が「現金と有価証券」の時に、値洗い損金額が差し入れまたは預託した現金額より大きい場合。

「現金不足額」は、受入証拠金額が委託者証拠金額を満たしていたとしても発生するため、有価証券を差し入れまたは預託して取引を行う際には注意が必要です。
なお、「現金不足額」が発生した場合、取引を継続するためには、翌営業日正午までの商品先物取引業者が指定する日時までに当該金額を「現金」で差し入れまたは預託する必要があります。

 

 

 

 

 

 

資料:日本FP協会認定継続教育(通信研修)テキスト「新・商品先物市場の仕組み~資産運用からリスクヘッジ機能まで~(前編)」執筆者/著 日税ビジネスサービス/発行

「総額の不足額」または「現金不足額」が発生した場合には、以下のどちらかを選択しなければいけません。

 

 

上記①②の選択は、不足額が発生した日の翌営業日正午までのうち、商品先物取引業者が指定する日時までに決め、実行しなければなりません。もしどちらも選択せず、選択しても不足額が解消しなかった場合には、商品先物取引業者が任意で口座内建玉の全部または一部を強制的に決済することになりますので、注意が必要です。

次回は、今般の法改正に併せて新設された損失限定取引について紹介します。

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