分散投資の効果的方法【2014年 第3回 】

【2014年 第3回】分散投資の効果的方法。知っておきたい、投資・経済・金融の考え方

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

投資に必要な分散投資。その中でも株式と債券は効果的な組み合わせです。そこで株式と長期国債に投資した場合のリスク低減効果について考えてみます。

 

 

 

分散投資の効果

投資でリスク回避の効果的な方法の一つとして分散投資が挙げられます。その中でも株式と債券は相性の良い組み合わせと言えるでしょう。
2004年末に株式と債券に投資をし、2013年末までにその時価の値動きがどのように動いたのかシュミレーションを行ってみました。

手法は次の通りです。元本として100万円。株式は日経平均をそのまま保有、債券は10年物国債を購入し1年後に時価で売却。株式とのリスク分散効果を高めるためのこのような運用を仮定しています。国債の売却価格は本来では、残存期間9年の国債の時価を使うべきでしょうが、データ収集の関係から残存期間10年をそのまま使っています。
手数料、税金等は一切考慮していません。細かく言えば現実の取引と完全に同一というわけにはいきませんが、これでもリスク分散効果を見ることが出来ると思います。

グラフは1全額株式に投資した場合、2全額国債に投資した場合、3株式に30%そして国債に70%投資した場合、4は3の割合で毎年1年経過したときにリバランスを行った場合、を表しています。上記投資の収益計算とグラフは筆者が作成しています。
リバランスとは?株式と国債の収益率は当然違いますので、1年経過すると両者のバランスが当初の30:70から変動します。割合が高くなった方を売り低くなった方を買うという方法で30:70に調整するという手法です。これによって、相対的に高くなった資産を売り安くなった資産を買う、という効果が出ます。
グラフでは、2004年末から2013年末までの株式100%の収益率が41.8%と一番高いですが、変動(リスク)も随分と大きいことが解るかと思います。反面、国債100%では変動が少ないですが収益率は18.77%と低くなっています。

一方、株式30、国債70ですと、株式100に比べて変動はかなり緩和されている一方、収益率はリバランス無で25.68%、リバランス有で35.82%。特にリバランスを行った運用が非常に効果的でした。
この時期は郵政解散やアベノミクスによる株価の急騰、リーマンショックによる株価の暴落など、株価の変動の大きな時期に重なったことも有ります。常にこのような結果になるとは限りませんが。

株式と債券の分散投資は特に効果的

では、なぜ株式と債券の組み合わせの相性が良いのでしょうか。不況になると株価が下落します。一方債券価格は?資金需要の減退と、中央銀行の金融緩和政策により利回りは低下するでしょう。債券利回りが低下するということは。過去の高利回り債券は、いわゆる”お宝債券”となり市場で高値で売却することが可能となります。つまり不況では債券価格は上昇することになります。このように株価と債券価格は逆に動くことが多くなります。リスク分散は値動きが相反する商品の組み合わせほど効果的となります。この意味で株式と債券は良い組み合わせと言えるでしょう。

ちなみに、筆者がこの期間計算した日経平均と長期国債価格の変動率の相関係数は-0.62となりました。相関係数とは二つの商品の値動きの相関割合を示した数値です。-1から+1までの数値で表し、+1に近いほど値動きの傾向は同一となり、-1に近いほど逆の動きをします。相関係数が-1の商品を組み合わせると、リスクをゼロとすることも可能です。設例の期間では、株式3%、国債97%の場合リスクが最小となります。国債に全額投資するよりもリスクが低くなる、このことに注目してください。

今回のケースはあくまでも2004年末から2013年末までに限定したものです。特に2013年のアベノミクスによる異次元の金融緩和は株高と債券高、本来両立しない現象を引き起こしました。この時点を除くと株と国債の相関係数はさらに小さく(マイナス値が大きく)なるかとも思われます。いずれにしてもリスク分散として、株式と債券の組み合わせは良い組み合わせと言えるでしょう。
ただし債券はあくまでも高格付け債券の場合です。低格付け債券の場合は値動きが、市場金利よりも発行体の信用状況に応じて決まります。株式と似たような動きをすることも考えられ、リスク分散効果は小さくなると思います。

 

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