目指せタフ家計、サラリーマンの節税対策 【2016年 第2回】

【2016年 第2回 目指せタフ家計、サラリーマンの節税対策】がんばる転勤族の妻たちが「お金」をもっと好きになるお話

松原 季恵(マツバラ キエ)

 

2~3月といえば確定申告の時期ですね。
サラリーマンには関係がないように思われますが、実は仕事にかかった費用を必要経費として確定申告し、節税する方法があります。
マイナス金利で預金の利息が得られにくくなった今、少しでも家計のプラスになる節税対策を身につけましょう。

 

転勤族の妻、転子さんは引越費用が家計の負担になってしまったようです。
このようにサラリーマンには日常生活以外の家計から支出される仕事にかかる費用があります。
サラリーマンの必要経費に相当するものは、税務上「給与所得控除」として収入から差し引かれています。

 

「給与所得控除」は税制改正が行われました。
平成28年に支払われた給与について、年収1,200万円を超える給与所得者の給与所得控除の上限が245万円から230万円に減り、実質の所得税増税になります。
さらに平成29年分以降の給与所得控除は年収1,000万円超から上限が220万円に減り、特に高収入サラリーマン世帯の家計で使えるお金が減っていきます。

 

家計から支出される仕事の費用や所得税は家計にとってマイナスです。
そこで仕事の必要経費を申告して税金を減らす「特定支出控除」の制度を使い、節税する方法をお伝えします。

 

引越し費用やスーツ代で節税 

「特定支出控除」とは給与所得者が特定の支出をした場合に、その支出額の一部分について確定申告を通じて給与所得から控除し、所得税を減らす制度です。

 

特定の支出とは、例えば転勤に伴う引越し費用や単身赴任者が勤務地から自宅に戻る移動費用があり、転勤族には嬉しい制度です。
他にも、職務に必要な知識を得るための研修や資格取得のための費用、スーツや書籍の購入費、接待交際費等も対象になります。

 

これらの支出を申告するには、会社からの証明が必要です。
また、引越しに伴う費用でも、家具の購入費等は含まれず、自主的に受けた研修費や職務に関わらない書籍の費用等も対象になりません。
控除の対象にできるものは限定されていますので、事前に人事部などに問い合わせておくと良いでしょう。

 

申告には会社の証明書の他に特定支出に関する明細書と支払いを確認できる領収書等が必要です。
証明書と明細書は国税庁のHPにある用紙を印刷して利用できます。
これら書類の準備を費用の支払い時に整えておくと、確定申告の時期にスムーズに手続きができます。

国税庁 タックスアンサーNo.1415 給与所得者の特定支出控除
国税庁 給与所得者の特定支出に関する明細書(PDF)
国税庁 給与所得者の特定支出に関する証明書

 

「特定支出控除」で税率が下がる可能性も 

では具体的にどのくらい節税効果があるのか見てみましょう。

 

まず特定支出控除で差し引けるのは、対象となる支出の合計が年収1,500万円以下の場合はその年の給与所得控除の2分の1、1,500万円超の場合は一律125万円を超えた部分になります。

 

例えば年収①500万円の給与所得者が②100万円の特定支出控除対象の支出があった場合を考えます(所得控除は考慮しません)。
この者の給与所得控除は③154万円(定められた計算式に基づいて算出)のため、特定支出控除として差し引ける金額はその2分の1の④77万円(154万÷2)を超えた⑤23万円(100万円-77万円)です。

 

特定支出控除を申告しなければ、税金の計算の基になる給与所得は⑥346万円(500万円-154万円)です。
特定支出控除で所得を減らすことで給与所得は⑦323万円になります。
所得税の税率は330万円を堺にかわりますので、特定支出控除を申告することで所得税の税率は20%から10%に下がります。
その結果、税金も約4万円減らすことができます。

 

特定支出控除の算出の基準となる金額は年収1,500万円超から一律125万円と前述しましたが、平成28年支払い分から収入に関わらず給与所得控除の2分の1に改正され、高所得者は控除できる金額が増えます。
平成28年給与分から高所得者の所得税は増税になる傾向にありましたが、特定支出控除においては節税しやすくなります。

 

外的要因に負けない、タフな家計を 

マイナス金利の影響で預金金利が下がり、株価も不安定になっています。
また今後も税制の改正により家計にとって不利になる場合があるでしょう。
特に転勤族家庭では、予測できない転居により予定外の出費が出ることがあります。
自身の家計管理に関わらない外的要因による支出の増加は必ず発生しますので、それに応じられる策を持っていることがタフな家計づくりに重要です。

 

「特定支出控除」はサラリーマンの強い味方。仕事の経費を対象にしていますので、頑張った証とも言えます。
還付申告は確定申告時期に関わらず申告ができ、5年間遡ることができます。
これまでの頑張りを思い出しながら、確定申告を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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