自営業の方の相談事情とポイント【2016年 第11回】

【2016年 第11回 自営業の方の相談事情とポイント】最近のFP相談事情と今後

長谷 剛史 (ハセ タケシ)

第10回では職業別FP相談事情とポイントの3回目として、経営者の方を取り上げてご紹介しました。
今回はその4回目として自営業の方の相談事情とポイントを、私が感じていることも加味して2点に絞りご紹介したいと思います。
規模や業種、家族構成や年代によって相談内容は異なりますが、どのような相談が多いのでしょうか?

(1) 老後資金のご相談

自営業の方はお勤めの方と違い国民年金のみへの加入ですので、老後資金に不安があるということでご相談に来られます。
老後への不安は漠然とした不安という場合が多いですので、ライフプラン=将来計画を立てて数字に落とし込み、本当に老後資金が足りないのか、足りないのであればどのくらい足りないのかをまずは把握する必要があります。
勿論、将来の収入は見込みですが収入額だけ変え数パターン作成してみると実感がわいてくると思います。
具体的に自営業の方の老後資金対策としては、
①国民年金基金
②付加年金
③小規模企業共済
④確定拠出年金(個人型)
の4つが考えられます。

①の国民年金基金は自営業の方が加入でき、毎月掛金を支払うことにより保険会社の個人年金保険のように、老後にお金を受け取ることができる制度です。
毎月支払う掛金は全額所得控除になりますので節税効果があります。

②の付加年金はお宝年金と言われることが多いですが、国民年金保険料に毎月400円上乗せして支払うと加入した月数×200円を65歳から一生涯受け取ることができます。
1年支払うと400円×12か月=4,800円になり、2年受け取ると200円×24か月=4,800円となり、2年で元が取れ長生きすればするほどお得な年金制度と言えます。

③の小規模企業共済は、自営業の方の退職金制度と呼ばれることが多く、毎月掛金を支払っておくと個人事業を廃業したときに退職金=共済金が支払われます。掛金が全額所得控除になるのも魅力です。

④の確定拠出年金(個人型)は企業が導入する企業型確定拠出年金と同じ制度になりますが、個人型も自分で掛金を拠出し運用商品を選択します。
そして、運用の結果によって将来受け取る年金額が変わります。
拠出する掛金・運用期間中の収益、年金受け取りに関して税制上のメリットが用意されています。

自営業の方の老後資金対策としては上記のようなメリットがある制度が用意されていますので、制度内容を確認しどのように老後資金を準備していくのかを考え行動へ移すようにしましょう。
付加年金は全ての方にお勧めでき、資産運用経験のある方や興味がある方は確定拠出年金(個人型)が向いています。
比較的かために老後資金を準備したいという方は、国民年金基金や小規模企業共済を選択するのが良いでしょう。
また、そもそも自営業の方は定年がありませんので、健康であれば事業を続け収入を得ることができます。
つまり、老後を迎える年齢を後ろにずらすことは難しいことではありませんので、健康と事業の継続性を早い段階から意識しておくようにしましょう。

(2) 保障のご相談

自営業の方はお勤めの方に比べ社会保障制度が手薄になっていますので、不安に思う方が相談に来られます。
例えば、万が一の時に残された家族が受け取る遺族年金額は少なめですし、お勤めの方は仕事ができなくなりお給料がもらえなくなった場合、最長1年半受け取ることができる傷病手当金は、そもそも自営業の方は対象外になっています。
勿論、有給のような制度はありませんので、仕事ができなくなれば売上が下がりますので、家計に与える影響は大きくなります。

やはり、自営業の方は公的な社会保障制度が手薄なため、民間の保険で保障を厚めにしておく必要があります。
ただし、売上・家族構成・年齢などバラバラですので一概に考えることはできず、それぞれに合った考え方が求められます。
考えられるリスクを把握し、例え確率が低くても起こったら甚大な影響が出る項目から保険で手当てするようにしましょう。
例えば、けがや病気等で仕事ができなくなり売上が減少することのリスクが高い方には、所得補償(就業不能保険)を挙げることができます。

自営業の方の相談事情とポイントは参考になりましたでしょうか?
様々な年代の方から多種多様なご相談がありますが、今回は自営業の方の多いご相談と私が感じることをご紹介しました。
また、ポイントとしては自営業の方とお勤めの方の公的な社会保障制度の違いを理解してもらい、老後資金や保障、住宅購入、事業内容等トータルで考えていくことが大切です。

最後に、事業や個人の資産状況等を考慮したトータルでのアドバイスができ、人生相談もできる一生お付き合いができるFPを見つけて欲しいと思います。

次回の最終回は、これからのFP相談とポイントを取り上げますので楽しみにお待ちくださいね。

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