「穀物」に投資?!【2013年 第1回】

【2013年 第1回 「穀物」に投資?!】
リカが教える♪金融商品としての「穀物」

三次 理加 ⇒プロフィール

今回から始まる新シリーズは『リカが教える♪金融商品としての「穀物」』です。
「え~?!穀物に投資???」
と、驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
実は、ここ数年、「穀物」への投資が脚光を浴びつつあります。

ほんの数年前まで、穀物へ投資できる代表的なものといえば、国内の商品取引所に上場されている商品先物取引だけでした。金や原油、穀物全般に投資する商品投資信託は、2004年暮れに登場しましたが、ここ数年、投資対象を大豆やとうもろこし、小麦など「穀物」だけに絞った投資信託も登場してきています。

 

また、2010年3月19日、東京証券取引所(以下、東証)に、「穀物」に投資するETFが上場されました。ETF(Exchange Traded Fund)とは、証券取引所に上場され、株式同様に売買が可能な上場投資信託のことです。この原稿を執筆している2012年12月6日現在、東証には、穀物に投資する金融商品としてETF4つ、ETN(Exchange Traded Note=指標連動証券)1つが上場されています。ETFは16,000円程度~6万円弱、ETNは6,000円程度で投資が可能です。

 

「穀物」投資が注目されつつある背景には、一体なにがあるのでしょうか?

 

人口増加と新興国の経済発展

「穀物」が投資先として注目されるようになった理由のひとつとして、世界的な人口増加や新興国の経済発展による穀物需給ひっ迫懸念を背景とする価格上昇予想があります。

国連人口基金(UNFPA)によれば、1950年には25億人だった世界人口は、2011年10月末で70億人を突破したとのこと。中でも、インドの人口は2021年には14億人に達し、中国(13億9,000万人)を抜き、アフリカの人口は2044年までに20億人(現在10億人)に達する見通しとのことです。

この50年間で、穀物の飼料需要は約3.8倍、食品工業需要は4.8倍になりました。一方、収穫面積は1.5倍になった程度。それでも需要を満たせていたのは、単位あたり収穫面積が2.5倍に増加したからです。しかし、最近は収穫面積、単位あたり収穫面積とも伸び率は横ばい傾向にあります。

経済発展により、たとえば新興国の人々の食生活が豊かになると、肉の消費量が増加する傾向があります。肉食は、間接的により多くの穀物を消費します。農林水産省の試算によれば、牛肉1Kgを作るのに必要な飼料は、とうもろこし換算でおよそ11Kg。豚肉は7Kg、鶏肉は4Kg、卵1パック半は3Kgです。つまり、肉の消費量増加は、穀物需給のひっ迫要因となります。

世界人口増加、新興国の経済発展に伴い、食糧不足、それに伴う穀物価格高騰は、ますます重要な問題になってくる可能性が高いといえるでしょう。

 

株式や債券等の価格変動との非相関性

「穀物」が投資先として注目されるようになった理由のふたつ目には、株や債券中心の資産に、商品を組み込むことにより期待できる分散投資効果があります。

2006年11月 米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が商品市場に5億ドルの投資を開始することを発表しました。カルパースは、運用資産総額が2000億ドルを超える全米最大の年金基金。それだけに、他の年金基金の運用方針に与える影響も小さくありません。以降、商品市場に資金を投入する年金基金が増加傾向にあります。

年金基金が商品市場に注目した理由には、前述した、人口増加や新興国の経済発展に加え、「分散投資効果」が挙げられます。

<分散投資効果>

近年、効果的な分散投資についての研究が数多くなされた結果「株や債券中心の運用に商品を組み入れると、資産全体の価格変動リスクが軽減される」といったレポートがいくつか発表されました。
各資産クラスの相関係数

 

 

 

 

 

 

 

 

図表は、各資産クラスの相関性を示しています。相関係数は、-1~1で表わされます。相関係数が正の値の場合、価格変動に相関(連動性)があることを意味します。相関係数が負の値の場合、価格変動に逆の相関(逆の連動性)があることを意味します。相関係数がゼロの場合、価格変動に相関性(連動性)がないということを意味します。

 

図表をご覧いただくと「商品は、株や債券の価格変動とはあまり関係のない動きをする傾向にある」ということがおわかりただけるでしょう。

 

ちなみに、年金基金が商品市場へ資金を投入することを可能にしたのが、前述したETFの登場です。世界初のETFは、1990年、カナダのトロント証券取引所に上場されました。2006年から2007年にかけて、海外では商品価格に連動するETFが次々に上場されました。

 

以上2つの理由で、「穀物」への投資が注目を浴びつつあります。

 

しかし、「穀物」はそもそも金融商品ではなく、独自の要因で価格が変動するものです。そこで今回のシリーズでは『リカが教える♪金融商品としての「穀物」』と題し、「穀物」へ投資を考える際、押さえておきたいポイントをご紹介しましょう。『リカが教える♪金融商品としての「穀物」』は、全6回の予定です。

 

次回は「天候相場と需給相場」について紹介します♪お楽しみに。
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