山田顕義と日本大学 【2016年 第7回】

【2016年 第7回 山田顕義と日本大学】風は西から・・・日本の産業を創った長州の偉人たち

上津原 章(ウエツハラ アキラ)⇒ プロフィール

 

こんにちは。山口県のファイナンシャルプランナー、上津原と申します。
今回は、日本の初代司法大臣を務められ、日本法律学校(現在の日本大学)を創設した、山田顕義(やまだ あきよし)氏を取り上げたいと思います。
以前、日本大学OBの当コラムサイト「マイアドバイザー」登録メンバーの一人を萩市にある山田顕義氏誕生地(萩市の松陰神社から東へ車で5分ほど)にお連れしたことがあります。
彼が偉大なる学祖である彼に丁重に手を合わせていたことを今でも思い出します。

 

生い立ち

山田顕義氏は、1844年、現在の萩市に藩士山田顕行の長男として生まれます。
大叔父には長州藩の財政立て直しに奔走した村田清風氏がおられます。
彼も親族として大叔父の葬儀にも参列し、大叔父の偉業を聞くこととなります。
叔父に吉田松陰に兵学を教えた山田亦介(またすけ)がおられます。
叔父の影響もあり、彼も14歳にして吉田松陰が主宰する松下村塾で学ぶことになります。

 

松陰門下生として

彼は、松下村塾最年少の門下生でした。
吉田松陰が門下生のことを「諸友」と呼び、身分や年齢といった区別なく接していることに感銘を受けます。
吉田松陰からは「与山田生」という漢詩をしたためた扇を与えられ、その漢詩を一生の心の糧とします。

吉田松陰亡き後は、医者であり兵学者であった大村益次郎の元で兵学を学び、第二次長州征伐(四境戦争)や戊辰戦争において司令官や参謀として活躍します。
明治新政府においては兵部省を立ち上げ、兵部大丞(ひょうぶだいじょう)として幹部になります。

明治4年、岩倉視察団に随行します。アメリカ海軍の施設を視察したのち、パリへ渡ります。

 

法学を志す

兵学を学ぶために岩倉視察団に随行した彼でしたが、パリに降り立った時に、

「ナポレオンは、法典をつくり国を治めた」

といったことに気づきます。
兵学を学んでも、法治国家にならなければ欧米諸国との不平等条約は解消されないのではないかという問題意識から、法律を学ぶことを志します。
明治6年に帰国し、やがて徴兵制の延期を政府に求めます。

翌年、陸軍省の上官であった山県有朋との徴兵制度等の対立をきっかけに、司法大輔(次官)に就任します。
彼と同じ長州藩の木戸孝允の勧めがあったといわれています。

 

日本初の司法大臣へ、やがて教育者へ

司法大輔になってからは、法律の整備をすすめていきました。
特に刑法、治罪法(今の刑事訴訟法)は編纂(へんさん)委員として彼が中心になってすすめていきます。

明治18年には内閣制度ができ、日本初の司法大臣になります。
明治22年には大日本帝国憲法が公布され、明治23年には彼が編纂にかかわった民法・商法・民事訴訟法が公布されます。

法律整備を行う中で、法律にかかわる人材の教育も行います。
日本の成り立ちや文化、国の法典などを研究する皇典講究所(のちの國學院大學)の所長になりました。
その後明治22年、皇典講究所の中に日本法律学校(のちの日本大学)を設立します。

そして、明治24年に司法大臣を病気休養のため辞任。
明治25年に、視察先の生野銀山で死去。49歳でした。

 

今回のことば「君子素餐することなかれ」

「君子素餐することなかれ」は前述の漢詩、「与山田生」の結びの言葉です。
素餐とは「何もしないで食べてばかりいること」、「才能や功績もないのに高い位・報酬を手に入れること」といった意味です。
漢詩の結びの前には、「一生はあっという間なのだから、他の人が思いつかないような志を立てて、周りにいる平凡な人に流されず、後世に残るような仕事をしなさい。」といったことが書かれています。
この意味合いを簡潔に示したのが、今回のことばになるのではないでしょうか。

法律という文字として末永く残る仕事にかかわった、彼らしい言葉といえます。

死しても多くの人たちの心に刻まれる私たちでありたいですね。

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