プロボクサー・米澤重隆選手 中編【2012年 第5回】

【2012年 第5回】プロボクサー・米澤重隆選手 中編
ライフプラン別コラム – プロ格闘家のためのファイナンシャル・プランニング

平野 厚雄(ヒラノ アツオ)⇒プロフィール

生命保険を検討する場合、まず「何のために加入するのか?」ということを明確にしなくてはなりません。では、一般的に生命保険は何のために加入するのでしょうか?それは「もしもの時に、経済的に困らないため」です(節税や貯蓄として生命保険を利用することは考慮いたしません)。では、もしもの時に、誰が経済的に困ってしまうのでしょうか?それは、その亡くなった人に扶養されていた遺族である配偶者や子供になるかと思います。

米澤選手に生命保険(死亡保障)は必要か?

そこで、米澤選手について考えてみますが、米澤選手はQ&Aにもあるように、未婚で子供もいらっしゃいません。つまり、米澤選手は扶養している家族がいないということです。では、米澤選手に生命保険(死亡保障)は必要なのでしょうか?

ずばり、必要ないと考えられます(ただし、「現時点においては」ということにしておきます)。米澤選手が、現時点において優先的に考慮しなくていけない保険は、「生命保険」ではなく、怪我や病気での医療費に備える「医療保険」や、働けなくなり収入が途絶えてしまった場合に備える「所得保障保険」だと考えられます(今回は所得補償に論点を絞ります)。しかし、保険を考えるといっても、米澤選手は会社勤務をされているので、国の社会保険(労災保険・健康保険)の被保険者になっています。したがって、まずはこの社会保険(労災保険・健康保険)の給付内容について確認しなくてはいけません。

まず労災保険ですが、労災保険は業務上・通勤上での怪我や病気等について給付が行われます。働けなくなった場合に給付される「休業補償給付」は、賃金を受けることができないときに支給されます。その給付額は、特別支給金である「休業特別支給金」と合わせて「休業給付基礎日額×80%」に相当になります。

そして、業務外での怪我や病気で働けなくなった場合は、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。「傷病手当金」とは、病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して最長で1年6ヵ月間支給されます。 支給される金額は、1日につき「標準報酬日額の3分の2」となります。

つまり、月収30万円とした場合、民間保険会社の保険に加入しなくても、社会保険から月収の約6割から8割程度の所得補償が既に確保されているということです。さらに、上記の社会保険からの給付はいずれも非課税となります。いかかでしょうか?働けなくなって、会社から給与が支払われなくなった場合、民間会社の保険に加入しなくても、これだけの保障があるのです。したがって、まずは現在の月収から、この社会保険からの給付だけになってしまった場合に生活できるかどうか?預貯金等も考慮して、シミュレーションしていただきたいと思います。

まずすべきは、加入している社会保険からの給付、勤め先の福利厚生、預貯金等を確認すること

保険を考える場合、上記のピラミッド図が基本的な考え方になります。縦軸が必要保障額とした場合、まず、国の社会保険として最低限の保障があり、その上に勤務先独自の福利厚生や預貯金があります。そして、それでも不足する金額を保険で準備します。しかし、残念ながら、この「公的保障・社会保険」及び「企業保障・預貯金」を考慮せず必要保障額のすべてを生命保険で準備している方が多々いらっしゃいます。つまり、その方々はムダな保険料を支払っているということです。米澤選手の場合は、2階部分に先月のコラムで触れた「プロボクシング協会の健康管理基金」の保障が加味されるということですね。

一般の独身サラリーマンの方であれば、極端な話、生命保険は必要ない場合が多々あますが、米澤選手は「プロボクサー」というもう一つの顔もお持ちですから、その分、一般のサラリーマンよりもリスクは高いといわざるをえません。しかし、国の社会保険では、民間保険会社とは違い危険な職業を理由として対象外になることはありません。したがって、民間保険会社の保険を検討する前に、まずするべきことは、自分が加入している社会保険からの給付及び、勤め先の福利厚生、預貯金等を確認することです。

今回のポイントは、「プロ格闘家でも国の社会保険の被保険者である」ということです。そして、米澤選手の保険を考える場合、「社会保険の被保険者である」ということが、とても大きなな保障として考慮できます。

 

後編につづく。

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