知っておきたい労基法/休日休暇・退職編【2012年 第8回】

【2012年 第8回 知っておきたい労基法/休日休暇・退職編】- 経営者のための社会保険・労務管理

菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール

労務管理は経営者の永遠の課題です。大切なことのひとつに、労働基準法(労基法)を知ることがあります。前回は賃金についてお話しましたが、賃金以外にも大事なことはたくさんあります。今回も、経営者の立場から労基法を見ていきます。経営者の立場から見ると、また理解も異なってきます。

経営者の立場から労基法

労働者にとって賃金は重要なことですが、その他の労働条件についても、働き続けていくためには重要なことです。

では、最初に休日についてみていきましょう。

休日は、週休2日、月に○日、あるいは年間で○日など、いろいろな決め方があります。原則として、週に1日の休日(法定休日)を与えなければなりません。

では週に1日与えていればよいかというと、そうではありません。その一方で週の労働時間は40時間という制限がありますので、1日に8時間働くとすれば、週に2日の休みが必要になります。

業務の性質上、忙しいとき、ゆとりのあるときなど、業務量に差がある場合もあります。こういったケースでは、1ヶ月を平均して週40時間になるようにシフトを組めば、繁忙時期に対応できるようになります。これが1ヶ月単位の変形労働時間制です。

この他にも1年単位の変形労働時間制を取り入れることもできます。工夫しだいで多様な業務に対応できるということです。

時間外労働をさせてはいけないということではありません。時間外労働や休日労働が生じる場合には、あらかじめ労使協定で定めておき、その協定の範囲内におさまるように、時間管理をしていきます。

定めた休日以外に、特別な場合に取得できる「休暇」を定めている企業も多いでしょう。

慶弔休暇、夏期休暇、裁判員休暇などです。身内に不幸ごとがあり特別休暇を利用するということはよくあることです。

これらの休暇については、労基法上の定めはなく、企業独自で定めます。日数も自由に設定できますし、特別休暇がまったくなくてもよいのです。

有給にするか、無給にするかも企業の判断です。特別休暇は無給で問題ありません。

ただし、これまで有給としてきたのに、今後無給に変更することは、労働条件の不利益変更となりかねませんので、注意が必要です。

年次有給休暇は別です。これは条件に当てはまる労働者が申請すれば、原則として「付与」しなければならない休暇です。

「パートに有給休暇はない」と思っている人はいませんか。それは間違いです。

退職をめぐっての問題

そして、労使間でトラブルが多いのは退職をめぐっての問題です。

労働者から退職を申し出るとき、いつまでに申し出なければならないかということですが、民法上は14日前となっています。

就業規則で1ヶ月前までに申し出ることと規定している企業が多いですが、突然退職されると業務がまわらない、引き継ぎをしっかりしてもらわないと困るという場合、1ヶ月前と規定しても問題はありません。

しかし、1ヶ月前に申し出ないと退職を認めないとか、辞めさせないなどという対応をすると問題となります。

会社から退職を申し渡すこともあるでしょう。

解雇については、その手続きについて、労基法で定められています。

手続きとしては30日前に予告すること、即日解雇という場合は30日分の平均賃金を支払うことです。

しかし、そのような手続きをすれば問題が起こらないかというとそうではなく、解雇に合理的な理由があるかどうかで争いになることがあります。

何の理由もなく「解雇」は通用しませんが、問題があったときなどやむをえない場合は、解雇の正当性を証明できるようにしておくことが必要です。

労働者が犯罪行為に及んだなどという場合は、労働基準監督署で「解雇予告除外申請」をすると即日解雇が認められることがありますので、まずは監督署で相談してみましょう。

労使間で起こるトラブルをみていると、その原因が採用時にあることも多いです。

採用時に労働条件をはっきり伝えていなかった、口頭では説明してけれど、書面で確認していなかったなど、採用時の曖昧さがトラブルへとつながります。

賃金、休日などの労働条件、そして退職時の手続きなど、法律上明示しなければならないことは当然ですが、諸条件についても最初に明確にしておきましょう。そして、労働条件通知書などの文書で確認しておかねばなりません。

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