地方税の現状と大阪府の私立高校授業料 無償化について【2012年 第12回 】

【2012年 第12回 】地方税の現状と大阪府の私立高校授業料 無償化について  世の中の経済状況も、そして国民の家計状況も依然厳しいまま

合田 菜実子 (ゴウダ ナミコ)⇒プロフィール

早いものでもう年末ですね。
平成24年こそは景気が上向いてほしい!と、去年の今頃願っていましたが、世の中の経済状況も、そして国民の家計状況も依然厳しいまま1年が過ぎようとしています。
国民1人1人だけでなく、地方の財政も同じように厳しい状況が続いているのではないでしょうか?
今日は、地方税の現状と大阪府独自で行っている“私立高校の無償化”についてお話します。

 

 

 

平成24年もあとわずか。そろそろ景気が上向いて世の中明るくなってほしい!という願いもかなわず、経済の回復が見えないまま終わりを迎えようとしています。個人の家計状況も厳しく、収入が増えない中での教育費の負担、そして、老後の年金問題など不安を抱える人も多いようです。

個人の家計だけでなく、地方財政においても厳しい状況が続いています。
下図は「道府県税収入額の推移」のグラフです。平成22年度の税収は、14兆262億円で前年に比べ、マイナス4.3%、その前年度はマイナス18.3%と平成19年度以降減少しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:平成24年度版 地方財政白書

市町村税収入も平成22年度は前年度と比べるとマイナス1.2%(前年度はマイナス5.1%)と減少傾向にあり、各地方自治体も財政的に苦しい状況に立たされていることが分かります。

下記表は、平成22年度の人口1人当たりの税収額を指数化したものです。全国平均を100とした場合の都道府県毎の割合は下記のようになります。地方税収計、個人住民税、地方法人二税、地方消費税、固定資産税すべてにおいて、東京都が突出して高くなっています。

大阪府は、個人住民税を除いてすべて平均値を超えており、地方税収計においては、東京都、愛知県、神奈川県に次いで106.3と4番目、地方法人二税は、東京都の250.6に次いで123.0と他府県を引き離して、2番目に高く、企業からの税収入が多いことが分かります。

また、東京都の149.0とは随分差がありますが、地方消費税は108.1と2番目、固定資産税については、愛知県、福井県、静岡県についで、5番目になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:平成24年度版 地方財政白書

全国的に東京都が平均値を引き上げているため、ほとんどの県が平均を下回る結果になっています。特に、地方法人二税については最も小さい奈良県と東京都の差が約5.4倍にもなっており、隣接している大阪府も奈良県の2.6倍となっています。
税収ベースだけで判断すると、東京都や大阪府といった大都市に住んでいる人の方が地方財政からの恩恵を多く受けていることになりますね。

さて、私が住む“大阪府”の独自の取り組みとして“私立高校の無償化”が挙げられます。“公立高校に関しては、2010年より国の政策である”高等学校等就学支援金支給制度“として、授業料が無償化されており、同制度において私立高等学校の学生に対しても通常118,800円(公立高校の授業料と同額)、年収が250万円程度未満の世帯については所得水準に応じて、就学支援金が国から学校法人などに直接支給されています。

大阪府では、これに上乗せして一定所得以下の世帯に向けて、“私立高等学校等授業料支援補助金制度(大阪府)”を実施しています。国公立の高校と同様に、私立の高校等についても、自らの希望や能力に応じて自由に学校選択ができる機会を提供するための制度ということで、下記のような条件があります。
・生徒およびその保護者が大阪府内に住居を有していること。
・制度の推進校として指定された府内の私立高校に在籍していること。
・保護者の所得要件を満たすこと。

2010年の導入時以降所得制限が緩和され、平成23年度以降は次のようになっています。なお、夫婦共働きの場合は、合算した年収で判断します。
・年収610万円程度未満の世帯 → 授業料が実質無償化
・年収800万円程度未満の世帯 → 保護者が10万円のみ負担

年収610万円程度未満でほぼ半分の世帯、年収800万円程度未満になるとほぼ70%の世帯の生徒が対象となります。注意点は、無償化といってもいったん授業料を納めて10月1日時点で在籍していれば返金されるシステムであること、また、入学金や教材費、修学旅行にかかる費用などは対象外なので、ある程度の資金準備が必要になること等があります。
ただ、“教育費の負担が軽減される制度“に救われている人々がいる一方で、実は、制度導入以降、困惑している学生たちもいます。

まずは、高校の選択肢が増えたこと。今まで公立しか考えていなかった学生たちが、私立高校も視野に入れて受験するようになりました。選択肢が増えるのは良いことではありますが、滑り止めとして私立を併願し易くなったため、レベルの高い高校に生徒が集中してより倍率が高くなったり、”無償ならば設備が整った私立高校入りたい“ということで、一部の私立高校の生徒数だけが増えて、一部の公立高校が定員割れしてしまったりといった問題も起きています。

また、京都府や奈良県など隣接する県から大阪の私立高校に通う場合は無償化の対象外、逆に、大阪から他府県の高校に進学する場合も無償化の対象外になるため、県境付近に住んでいる学生にとっては、今までの受験モデルが変わってしまうなど、予測できなかったような現象も起きています。

大阪府の独自の制度として“教育”に税金を活用してもらえるのは、子を持つ親としてはとてもうれしいことですが、子供がいない、またはシングル世帯などの人にとっては、“もっと別のところに税金を使ってほしい”と思う人もいると思います。

給与明細を見ると、たくさんの税金が差し引かれています。2014年4月には消費税も上がります。難しい問題ではありますが、私たちの税金が最も良い形で使ってもらえますように、そして、2013年こそは、景気が回復して明るい兆しが見えてきますように!お祈りしつつ、今年最後のコラムを書かせていただきました。

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