新 商品先物取引のしくみ【2011年 第4回】

【2011年 第4回】 新 商品先物取引のしくみ 投資コラム

三次 理加 ⇒プロフィール

商品先物取引の特徴(2)売り、決済期限

前回は、商品先物取引の5つの特徴のうち、1)と2)を紹介しました。第4回目となる今回は、3)から5)について紹介します。

 

3) 売りからも取引できる

商品先物取引は、今後、価格が上昇すると思った時には「買い」から、価格が下落すると思った時には「売り」から取引をスタートさせることが可能です。

そもそも商品先物取引とは「ある一定の商品を一定数量、予め定められた価格で将来の一定時期に受け渡す」契約のことをいいます。加えて、その将来の期限が 来る前までであれば、その契約と反対の売買を行い、売値と買値の差額を受け渡しすることにより取引を終了させることができる、という特徴があります。

たとえば、金の価格上昇を予想し、1年後に金をグラムあたり3,500円で1,000グラム買う契約を、現在行ったと仮定します。契約通りであれば、1年 後の期限が到来した時に、代金350万円を支払い、金1,000グラムを受け取ることになります。ただし、前述したように、商品先物の場合には、この1年 後の期限到来前であれば、「買い」と反対の行為である「売り(=転売)」を行い、購入額と売却額の差額を受渡しすることにより取引を終了させることもでき ます。この時、転売価格がグラムあたり4,500円だった場合には、差額100万円を受け取ることができるのです。(図1-a)

「売り」から取引を開始する場合、上記と全く逆になります。たとえば、金の価格下落を予想し、1年後に金をグラムあたり4,500円で1,000グラム 売る契約を、現在行ったと仮定します。契約通りであれば、1年後に金1,000グラムを渡し、現金450万円を受け取ることになります。ただし、上記同 様、商品先物の場合、1年後の期限到来前までであれば、「売り」と反対の行為である「買い(=買い戻し)」を行って取引を終了させることもできます。この 時、買い戻した価格がグラムあたり3,500円であれば、差額100万円を受け取ることができるのです。(図1-b)

つまり、商品先物取引とは、買う契約をした場合は将来の期限までに代金を、売る契約をした場合は将来の期限までに商品を用意すればいい、という取引なのです。現時点では商品も代金も必要ありません。だから、売りからも取引を始めることができるのです。

以上から決済方法は、期日に代金とモノを授受する「受渡決済(※)」と、買ったものは転売し、売ったものは買い戻す「差金決済」があります。また、「受渡 決済」のうち、「買い」から取引を始め、商品を受け取ることにより決済することを「現受け」、反対に「売り」から取引を始め、商品を渡すことにより決済す ることを「現渡し」と呼びます。
※受渡決済できない商品もある。

4) 決済期限がある

商品先物取引は「将来の期限」までに差金決済しなければ、原則、受渡決済をしなければなりません。つまり、商品先物取引は「決済期限がある」取引なのです。

決済までの期限は、商品によっても異なりますが最長で半年から1年程度です。この最終期限に当たる月を「限月(げんげつ)」といいます。商品先物では、限月毎に値決めが行われます。

5) 現金以外に、株や国債が資金に使える

商品先物取引では、投資資金として使えるのは現金だけではありません。株や国債などの有価証券を担保に取引をすることも可能です。有価証券の評価額は、たとえば国債なら額面のおよそ8割、株券の一部上場銘柄なら時価のおよそ7割です。

また、預託した有価証券は、商品先物取引業者を通じて売却することも可能です。さらに、たとえば株の場合は配当金、利付国債の場合は金利を受け取ることもできます。

ただし、「特定口座・源泉徴収あり」を選択しても売却益は源泉徴収されません。また、株式等の譲渡に係る課税の特例対象とはなりません。通常の証券会社 における売却とは異なる事項がありますので、有価証券を預託する場合には、事前に商品先物取引業者に確認するようにしましょう。

次回は、商品先物取引の仕組みについて解説します。

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