新 商品先物取引のしくみ【2011年 第1回】

【2011年 第1回】 新 商品先物取引のしくみ 投資コラム

三次 理加 ⇒プロフィール

2011年1月1日より、改正「商品取引所法」が完全施行されました。法律の名称も「商品取引所法」から「商品先物取引法」へ変更されます。
法改正に伴い、商品先物取引の制度その他が大きく変更されることになりました。

そこで、今回から1年にわたり「新 商品先物取引のしくみ」を紹介します。
第1回目となる今回は、法改正の背景からポイント(個人投資家に関連する箇所のみ)を紹介します。

 

■世界と国内の商品市場

2001年頃から始まった商品価格の上昇傾向に伴い、世界における先物取引の取引量は、アジアを中心に増大。2009年までの5年間でおよそ4倍に増大 しました。一方、国内商品取引所の取引量は、2003年度をピークに減少傾向にあります。その取引量は、2009年までの5年間でおよそ1/3にまで減少しました。

海外の取引所で取引量が増大している背景には、取引所が電子システムの改良、取引時間の24時間化などに積極的に取り組み、また、取引所間の M&Aや国際連携等が行われた、ということが挙げられます。加えて、商品ETFに代表される、商品と金融とを融合させた投資商品の登場が市場の流 動性を拡大しました。

一方、国内商品取引所は、2005年の法改正により営業勧誘規制が強化されたことにより個人投資家の取引が大幅に減少。海外と比べ、事業者の取引参入が 少ないことも取引量の減少に拍車をかけました。さらに、農産物は農林水産省、工業品は経済産業省が管轄するという縦割り行政や、海外と異なり、同じ先物で あっても商品と金融では管轄する省庁も法律も異なるという特殊事情等が取引所の再編を遅らせたといえます。

■法改正の背景

ここ数年にわたる原油、穀物など商品価格の高騰や価格変動を背景に、価格変動リスクのヘッジニーズが高まってきました。しかし、前述のように、その受け皿となるべき国内商品取引所の取引量は低迷。その国際競争力強化が急務となっていました。

また、商品を対象としたデリバティブ取引は、海外の取引所取引や店頭取引といった形態でも行われるようになるなど多様化。しかし、旧商品取引所法は、国内 商品取引所における取引のみを規制の対象としていました。さらに、国内の商品取引所における取引に対する苦情や相談件数は減少する一方で、海外の取引所取 引や店頭取引(いわゆる「ロコ・ロンドンまがい取引」など)のトラブルが急増。そこで、これらの取引を包括的に規制する法律が誕生することになったので す。

■「商品先物取引法」の誕生

従来、商品先物取引を規制する法律は、取引所取引または取引所外取引、国内または海外によって規制が異なっていました。しかし、新しく誕生した「商品先 物取引法」は、「商品取引所法」「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」「特定商取引に関する法律」と分かれていた規制を一本化。国内取引 所取引、海外取引所取引、店頭取引を包括的に「商品デリバティブ取引」と規定し、その規制対象としたところに特徴があります。

また、従来は、国内取引所における商品先物取引のみが許可業種となっていました。改正法においては、国内・海外商品取引所、店頭商品先物取引の全てが「商 品先物取引業者」として許可業種となります。併せて、商品先物取引業者の委託を受けて、商品市場における取引の委託の媒介等を業として行う「商品先物取引 仲介業」を新設。
ただし、商品先物取引仲介業者は、証券仲介業者と同様、顧客の財産を預かることはできません。

さらに、同改正法においては、金融商品取引法における「プロ・アマ規制」と整合性をもたせ投資家を区分。アマに区分される一般投資家については、勧誘を 要請していない顧客に対して一方的に勧誘を行う「不招請勧誘」の禁止などの規制が整備されることになりました。不招請勧誘の禁止は、「初期の投資金額以上 の損失が発生する可能性のない取引所外取引」以外の取引が対象となります。

改正法は「使いやすく」「透明な」「トラブルのない」商品先物市場の実現を目指している、とのこと。国内商品市場を取り巻く状況は、今後数年間で大きく変化していくことが予想されます。

※資料
「産業構造審議会商品取引所分科会報告書 平成21年2月23日」「商品取引所法等改正法の概要」経済産業省

「商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律の概要――コモディティ・デリバティブ取引の健全な発展に向けて」五十嵐佳 奈子・石井大貴/著 NBL NO.911(2009.8.15)

「商品取引所法の改正~コモディティ・デリバティブの取引法制の抜本的見直し~第171回通常国会において成立し、2009年7月10日に公布された「商品先物取引法」の概要」株式会社 東京工業品取引所

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