後悔しない住宅ローンの選び方④―住宅ローン選択の判断基準は何か【2010年 第 4 回】

【 2010年 第 4 回】後悔しない住宅ローンの選び方④―住宅ローン選択の判断基準は何か 家計コラム

福田 英二(フクダ エイジ)

数ある住宅ローンを選別して自分に最適な住宅ローンを選択する作業は、大変に骨が折れる。自信を持ってこれが一番だ、といえる住宅ローンかどうか確信が持てないことが原因である。
少なくとも選択した結果が“間違いではなかった”と言える住宅ローンであること、“後悔していない”と言える住宅ローンであること、が選択した本人に必要な答えであり、安心感を得る拠り所でもあると考える。


この答えは直ぐには出ないし、出せないものだ。答えが出るのは、ずっと将来、住宅ローンを完済する時に初めて出るものだと思う。だから、住宅取得者が住宅ローンを選択したときに急いで答えを求めようと“賢く”動こうとするのであり、“上手に”借り入れようといった類のセールストークが行き交う、と私は聊か冷めた目で見ている。住宅ローンとはそういうものではないだろうか。

“あなたが住宅ローンを借りる場合の判断基準は何ですか?”と問われたあなたの答えは:-

金利の低さ

-住宅ローン金利の低さですか?答えはイエスだとして、何と比べて低いですか。その低さは本当に低いと確信が持てますか。
絶対、金利水準だけが低ければよいのですか。低い金利で借り入れられるのは全借入期間中ですか。それとも途中まででその後は上がるかもしれないし下がるかもしれないと言った不安定なものではありませんか。いやいや低い金利は向こう一年間だけということはありませんか?

諸費用

-借入に伴う関係諸費用の多寡ですか?諸費用と言っても借入れる際の費用と借入後の費用がある。代表的なものとして、保証料、団体信用生命保険料、借入時事務手数料、繰上返済手数料などがある(除く法定関係諸費用)。費用によっては、発生したりしなかったり。

保証料は、借入先次第で大きな差があるのをご存じでしょう。団信保険料は複雑です。最近では金融機関負担が一般的だが、三大疾病特約を付保すると金利に乗せたり乗せなかったり。八大疾病まで金融機関負担にしたりと様々。事務手数料は、定額制と定率制に区分出来るなど、考慮すべき要素が実に多い。これをこれから住宅取得者が自分の力だけで決めようとすると相当な負担になることは間違いない(だから第2回本欄で触れたように業者依存型が多くなるとも言えるのだ)。

話は少し横道にそれるが、保証料、団信保険料、事務手数料は、住宅ローン借入時の三大費用だ。団信保険料を徴収している代表格がフラット35。民間金融機関が団信保険料は銀行負担を一般化している中で、依然として公庫時代からの名残がある。フラット35は民間金融機関が融資したものを、機構が買い取って証券化して市場で売却する仕組みと声高に言っても、実は団信マーケットを機構の収益源の一つとしている中にあっては、なかなか債務者本位の商品に出来ない悩みがあると見ている。これがなくなったらフラット35の競争力は飛躍的に増すのではないかと期待しているのだが。

保証料と事務手数料については、釈迦の説法で恐縮だが、保証料は借り入れ後の将来に対する保証を担保するもの(保証会社は融資物件に抵当権を設定しており、本来なら保証料を徴収する必要はない、と見ている。極端な言い方が許されるなら、それは金利の上乗せ分と見なせなくはないものだ。金融機関によっては、その徴収方法に一括と金利上乗せを用意して、後者は+0.2%などと表示している)。

事務手数料は、借り入れる側からみると、借入時の大きな費用だ。定額制なら比較的納得感があるが、定率制は費目の趣旨からみると納得感に疑問が残る。貸し手側からみると、経営体の考え方が如実に表れて面白い。紙面の関係で割愛するが、これは実質的な金利の上乗せ分と見なせなくはないし、貸し出し時の事務手数にかかわった費用と言うことで、収益計上が一括してできる点が旨味だ。このことは後に機会があれば触れたいと思う。

話を元に戻そう。

総返済負担合計額

“あなたが住宅ローンを借りる場合何を見て決めますか?”と問われれば、私の答えは総返済負担合計額である。総返済負担合計額は、住宅ローン借入元金と支払利息額と関係諸費用額の総和である。借入元金は、購入物件価格と充当自己資金で決まる。支払金利額は、利率、借入期間、返済方法(元金の減り方の違い)で決まる。関係諸費用は、借入前、借入時、借入後に発生するものしないものがある。借入前で発生する費用とは、FPなどへの相談料などが当てはまる。あとは上述したから省略する。

支払利息額は、契約面で確定していることが重要だ(つまり金利を確定させておくということ。だからといって、全期間固定金利を選択するというのがベストな答えとは必ずしも限らない)。住宅ローンを借入る際の計算上の総返済負担合計額は、借入れた後に増えないことが重要である。そのような住宅ローンを選択する。このことが肝心だ。返済しても一向に減ったと実感しにくい住宅ローンの残高。逆に増えてしまうようなことがあっては、返済意欲は萎えてしまう。“後悔しない”住宅ローンの選択に当たって重要なところだ。日々のアドバイスの中で私が心がけていることでもある。

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