先進医療特約は必要なのか!?【2012年 第1回】

【2012年 第1回】 先進医療特約は必要なのか!?ケース別コラム – 最新の「保険」商品情報!

久保 逸郎 (クボ イツロウ)⇒ プロフィール

 

 

数年前までは一部の保険会社しか扱っていなかった先進医療特約ですが、近年は特約付帯することができる保険会社が増えてきました。消費者に対して目新しさを出すために、パンフレットには重粒子線治療や陽線子治療のような特に高額な先進医療の例が記載され、テレビなどの保険商品CMでも盛んにアピールされています。このような保険会社の宣伝を背景に、消費者の目に触れることが多くなってきた先進医療ですが、言葉のイメージだけが先行していて、その内容については消費者にあまり知られていないような気がします。

 

■100万以上の治療実績は先進医療全体の約2割

先進医療とは健康保険法に基づいて厚生労働省大臣が定める評価療養の一つとして保険診療との併用が認められているもので、そのため先進医療として承認された技術のその費用は患者全額自己負担となりますが、それ以外の基礎的な部分の費用については公的医療保険から給付を受けることができます。

平成23年8月1日現在で承認されている先進医療技術は125種類で、最近はがんに対する医療技術、とくに化学療法や免疫療法などの未承認・適応外の医薬品や医療機器を用いた新しい技術が承認される傾向が見られます。

また、年間の治療実績は実施医療機関数488施設、全患者数は9775人(平成21年7月1日~22年6月30日 第57回先進医療専門家会議)で、先進医療費用として総額約77.8億円が使われています。しかし、保険会社の広告で使われているような高額の治療費用がかかるものはあまり多くなく、平均費用で100万円を超える治療は年間1987件が行われただけです。つまり100万円以上の治療費用がかかるものは、先進医療全体の約2割に過ぎません。

■先進医療特約の必要性

これだけ受診する確率の少ない先進医療に対して、わざわざ保険を掛けてまで備える必要はあるのでしょうか。先進医療特約は保険会社が給付金を支払う確率が少ないので、特約保険料は数十円から百数十円程度と安くなっています。そのため新たに医療保険に加入する方ならば、万一に備えて先進医療特約を付加しておいて構わないでしょう。

その一方で、すでに医療保険に加入している方の場合は注意が必要です。先進医療特約を付加できる新しい医療保険に加入するために、加入中の医療保険を解約して新たな商品に入り直してしまうと、契約年齢が上がってしまいます。契約年齢が上がると支払う保険料も当然高くなってしまうので、大きなデメリットが発生します。

そのため第一のステップとしては、保険期間の途中からでも先進医療特約を付加できる保険会社もあるので、加入中の医療保険に先進医療特約を中途付加できるかどうかを調べてみることから始めて下さい。

そして先進医療特約の中途付加が難しい場合でも、加入中の医療保険をやめて新しい医療保険に入り直すことは慎重に行ったほうがいいでしょう。そもそも先進医療は受診する可能性が大変低いですし、わざわざ先進医療のために医療保険を見直す必要があるのか。そのあたりを十分に考える必要があります。

どうしても先進医療に備えたいという場合には、加入中の医療保険を減額して、減らした分だけ新たな医療保険に加入して、それに先進医療特約を付加する方法にしたほうが、契約年齢が上がってしまう部分が少なくてすむので合理的です。保険会社によって最低の入院日額は異なりますが、入院日額3000円から加入できて、先進医療特約を付帯できるところもあるので調べてみると良いと思います。

(図表ファイル:先進医療見直しのイメージ)

■先進医療特約の保障内容

最後に先進医療特約の保障内容についてですが、最近発売されている医療保険の多くは、患者全額自己負担になる技術料を保障対象にしています。通算の保障限度を1000万に設定している保険会社が多くなっていますが、昨年あたりから通算限度2000万に設定をしている保険会社も目に付くようになりました。しかし、受診する確率から考えても、通算限度についてはほとんど気にする必要はないように思います。

むしろ先進医療の技術料を直接病院のほうに支払ってくれる保険会社が増えていますので、そのような保険会社で加入しておいたほうが、一旦窓口で負担する必要がないので実際役立つような気がします。

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