貴金属の積立投資【2012年 第5回】

【2012年 第5回 貴金属の積立投資】若者&奥様のための「商品投資入門」

三次 理加(ミツギ リカ)プロフィール

 

貴金属積立投資ってなに?

 初心者向け貴金属投資の代表ともいえるのが、「純金積立」などの積立投資です。金やプラチナの積立投資があります。たとえば、「純金積立」の場合、銀行から毎月一定額を引き落とし、その金額をその月の営業日数で割った額で毎営業日、金を購入します。月3,000円程度から申込可能なため、比較的手軽な貴金属投資といえます。

 一定の数量に達すれば、地金(金塊、バー、インゴット)を引き出せるほか、ジュエリーなどと交換することもできます。また、中途売却し現金化することも可能です。

 なお、価格が安い時やまとまった資金が入った時に、毎月の積立額とは別に、一定金額以上まとめて金やプラチナを購入することも可能です。これをスポット購入といいます。

 貴金属の積立投資は、田中貴金属や徳力本店など地金商、三菱マテリアル、住友金属鉱山、JX日興日石金属などの鉱山会社のほか、証券会社、商品先物会社等で取り扱っています。

積立投資のメリット

 積立投資の最大のメリットは、いわゆる「ドルコスト平均法」を活用した投資方法であるという点です。「ドルコスト平均法」とは、継続して定期的に「一定金額ずつ」購入する投資手法のことをいいます。価格が高い時は少ない量、安い時は多くの量を購入することができます。そのため、一般的に、継続して定期的に「一定量づつ」購入する手法に比べ、平均取得単価を低めに抑えることができ(注1)、長期投資に向いているといわれています。

  たとえば、A:毎日1,000円づつ「定額」購入する場合、B:毎日0.25gづつ「定量」購入する場合とで比較してみましょう。

図表1は、4営業日の購入金額と購入数量の合計から平均取得単価を算出していますのであまり大きな開きはみられません。しかし、BよりAのほうが、平均取得単価が低めになっていますよね。

  また、前述したように、積立投資は長期投資に向いているため、積立投資をする投資家は、1年から数年と長期にわたり積立を行うことが多く、従って購入時間・期間も分散されます。

 以上から、「ドルコスト平均法」を使って積立をすると、金やプラチナ価格の上昇・下落に一喜一憂することがあまりない、といえます。

 なお、業者によっては、預けた期間に応じて、一定の料率で計算した金やプラチナを満期ボーナスや寄託料として、積み立てた重量に加算してくれるところもあります。
注1:仮に、長期的に一直線の上昇相場となった場合には、平均取得単価を低めに抑える効果は発揮されない。

積立投資のデメリット

 積立投資のデメリットとしては、積立ではない貴金属投資に比べコストが高めになる傾向がある、という点です。金やプラチナの積立投資のコストには、年会費や事務手数料(購入手数料、買付委託手数料ともいう)等があります。年会費は、840円(税込)程度としている業者が多いようです。また、事務手数料は、たとえば「購入金額1,000円につき25円」のように設定している業者や購入金額に応じて料率を決めている業者などがあります。これらコストは、業者によっても、購入金額によっても異なります。金やプラチナの積立投資を検討する際には、事前にコストを比較、確認するようにしましょう。

注意点

 積立投資によって購入した金やプラチナは、どのように保管されるのでしょうか?

 それは業者により異なりますが、大きく2つに分けることができます。一つが「特定保管」による保管、もう一つが「消費寄託契約」による運用です。

 「特定保管」とは、業者の資産と区別して、業者の金庫に格納することにより保管することをいいます。「特定保管」の場合、投資家の立場からすれば、「本当に保管しているのかどうかわからない」という不安があります。そのため、監査法人など第三者機関に確認業務を依頼している業者もあるようです。

 「消費寄託契約」とは、民法第666条に規定される契約です。購入と同時に一定期間、業者が顧客の貴金属地金を預り、契約期間満了後に、顧客に同等・同量の貴金属地金を返還する、という契約内容になります。このように記載すると少しわかりにくいかもしれませんね。

 基本的には銀行にお金を預けるのと同じような契約内容だと思えば良いでしょう(注2)。たとえば、銀行に1万円札を預金し、その後、引き出す場合、1万円札で引き出すこともあれば、千円札10枚で引き出すこともありますよね?引き出すのは預金した1万円と同じ価値を持つ現金ですが、預金した1万円札の紙幣そのものではありません。

 「消費寄託契約」の場合、業者は、預った貴金属地金を運用することができます。運用収益の一部を投資家に還元する業者もあります。前述した「寄託料」です。ただし、「消費寄託契約」の場合、信用リスク(業者が倒産するなどした場合、預託した貴金属地金の一部または全部が返還されないリスク)があることには注意が必要です。

 なお、業者のパンフレット等をみると、「消費寄託契約」には信用リスクがあるが「特定保管」には信用リスクがない、とも思えるような記述もみられます。しかし、「特定保管」の場合、「業者の資産と区分して、金庫に保管している」とは、あくまでも業者自身が言っていることです。「消費寄託契約」「特定保管」いずれの場合も、元本や利益が保証されているものではありません。業者の信用リスクはあるものと考えて、契約前に財務内容等を確認するなど、信頼のおける業者かどうかをきちんと確認するようにしたほうがいいでしょう。
注2:預金は「金銭」消費寄託契約。

  次回は、金貨などのコイン、金地金など(バー、インゴット)貴金属現物投資について紹介します。お楽しみに。

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