相続・贈与のエトセトラ⑨~亡くなった人の所得税の申告は?~【2011年 第9回】

【2011年 第9回】 相続・贈与のエトセトラ⑨ ~亡くなった人の所得税の申告は?~

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。
今回は亡くなった人(被相続人)が所得税の申告が必要な場合、どのようになるのかをみていきましょう!

 

準確定申告

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。

年の中途で死亡した人の場合は、その年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続人が申告と納税をします。これを「準確定申告」といいます。
(3月15日までに死亡された人で、前年分の所得税の確定申告をされていなかった場合は、その分も「準確定申告」が必要です)

■会社員の方が死亡した場合は?

会社員であり在職中に死亡された人でしたら、勤務先の会社にて、その年の1月から死亡退職時までの給与等について「年末調整」されますので、相続人が別途「準確定申告」をする必要はありません。
ただし、勤務先の会社の給与等以外にも所得があった場合は申告が必要ですよ。

なお、死亡に伴い遺族の方が受取られる退職金(死亡された方に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与等)は、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となりますので、「準確定申告」の必要はありません。

■準確定申告はいつまでにやるの?

相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に「準確定申告書」の付表を添付して提出します。
相続人が2人以上いる場合は、各相続人が連署により準確定申告書を提出することになります。(別々に提出することもできます。)
被相続人に納めるべき所得税、還付される所得税があれば、相続人の相続分に応じて納付もしくは還付の受領をします。

■所得税の計算上の留意点は?

所得控除は次の点に留意して計算しましょう。

  • 医療費控除:
    控除対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費です。死亡後に相続人が支払った医療費は被相続人の医療費控除の対象に含めることはできません。なお、被相続人の未払いの医療費を相続人が支払われた場合は、相続税において債務控除の対象とすることができます。
  • 社会保険料(小規模企業共済等の掛金)、生命保険料、地震保険料控除:
    控除対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額です。
  • 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除:
    適用の有無に関する判定(扶養しているかどうかやその親族等の1年間の合計所得金額の見積り等)は、被相続人の死亡の日の現況により行います。また、控除額は月割計算等をする必要はありません。
    ちなみに、通常の所得税の計算においては、扶養状況等は年末時点の現況で判断されるため、年の途中で扶養している納税者が変わったとしても、年末時点で扶養している納税者の所得控除にしか適用ができませんが、準確定申告の場合は、年の中途で被相続人の準確定申告において、配偶者控除・配偶者特別控除の適用を受けた配偶者や扶養親族として控除された者であっても、年末において、他の納税者の扶養親族として扶養控除の適用を受けることができます。この場合も月割計算等をする必要はありません。

*****

「準確定申告」の期限が4ヶ月以内というのは、とても短いような気がします。故人を偲び、またいろいろな対応や手続きに追われているうちに、あっという間に期限がきてしまうのではないでしょうか。

亡くなった人のお仕事によっても異なるとは思いますが、特に、個人で事業をされていたような場合は、相続人であっても、収入や支出の把握がかなり困難なこともあるでしょう。個人的には申告期限がもう少し延長されるといいのにと考えてしまいます。

準確定申告の申告書作成にあたっては、最寄の税務署や税理士にご確認・ご相談ください。

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