2013年の株価、為替、金利そして物価【2013年 第12回】

【2013年 第12回 2013年の株価、為替、金利そして物価 】投資に必要な経済の知識

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

アベノミクス効果により市場指標はどのように変化したか?株価と為替・金利を対比させながら考えてみます。そして物価、デフレ脱却は可能なのか?それを供給と需要の側面から分解してみましょう。

1.株価と為替

2013年は前年後半からの流れを受けて円安株高の流れ、後半はちょっともたついていますが全体としては良好な投資環境だったでしょう(グラフ1)。なおグラフは日本経済新聞好評のデータに基づき筆者が作成したものです。

 

5月以降、それまでの急激な円安と株価上昇の反動で調整局面をむかえながらも、11月からはじりじりと盛り返しています。前半の動きがあまりにも急激過ぎていましたので、これも正常な動きでしょう。
日本のアベノミクスへの評価はそれほど変化はないでしょうが、短期ではむしろアメリカの問題が大きいと思います。FRBが今の緩和政策をいつ縮小させるのか?これによって為替や株価の動きが左右される流れはこれからも続くでしょう。

 

ただ、長期の為替の動向では新興国やヨーロッパに大きな変調がない限り、日米のインフレ率、特に日本がデフレ脱却できるかどうか、そこに注意していく必要があります。デフレ脱却が難しいようなら、また円高に逆戻り、というシナリオも考えられます。

2.株価と金利

次に、株価と金利の動きを見てみましょう(グラフ2)。

ここで金利は10年物日本国債利回りです。株価と金利の関係は普段にはない動きをしています。一般的に株価が上昇するような景気拡大期には、資金の逼迫により金利も上昇するはずです。しかし今年は5月の金利急上昇の時期を除いて、特に後半からは金利も下落傾向にあります。

これは、日銀の金融緩和政策、特に長期債の買取りを増やしていることの表れだと考えられます。ただ短期金利に比べて長期金利の操作は非常に難しいものがあります。
政策的リスクとしては次のことが考えられます。

①低金利国債の保有に金融機関が多大なリスクを感じ一斉に売却に動き、それが長期金利の急騰をもたらす。
②長期金利の低値安定には成功するが、それが円キャリー取引をもたらし、世界的バブルの原因の一端となる。

私としては、日本の財政問題を考えなければ②のリスクのほうが大きいように考えます。いつまでも金利を抑える方法は、市場の金利機能を阻害し、良い結果はもたらされないでしょう。

3.物価

2013年の消費者物価はIMFによると、対前年比期中平均では0.045%、年末では0.678%、久々にプラスの値となりそうです。ただデフレを脱却したかというと、それはまだ早計のようにも思えます。
では物価上昇の原因を供給側と需要側に分けて見てみましょう。

供給側
①円安による輸入コストの上昇
②原発停止によるエネルギーコストの上昇

需要側
①消費増税を控えての駆け込み需要
②株価上昇による資産効果
③復興需要と公共投資

供給側の要因、特にコストの上昇は、物価を上昇させますがそれだけでは景気の拡大をもたらすものではありません。最悪、インフレと不況が同時に発生するスタグフレーションになりかねません。こちらは良い物価上昇とは言えません。

一方、需要側は、景気拡大をもたらし、望ましい物価上昇とも言えますが、①と③は一時的なものです。②も日銀の金融政策によるところもあるでしょう。特に公共投資は、そちらに人や資産が投下されることによる、民間投資の阻害ともなりかねませんので、民間でできるところは極力民間に任せることが必要でしょう。現実に地方では建設労働者や資材の不足で工事に支障が出る、という事態も起きています。

それぞれの要因から考えると、一時的なものが多いです。公共投資もいつまでも続けることはできません。本格的なデフレ脱却には、所得の消費の増加が必要でしょう。持続的な所得増には賃金増だけではなく、ビジネス環境のための規制緩和が必要となるでしょう。そして消費増のためには、社会保障の不安を取り除くための社会保障改革が必須要件と考えます。そのためにもアベノミクスの第3の矢、成長戦略が軌道に乗ることがデフレ脱却のための必要条件と考えます。

 

 

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