今月の数字12:期間制限はないけれど・・・【2013年 第12回】

【2013年 第12回 今月の数字12:期間制限はないけれど・・・】
相続に関する数字エトセトラ

平川 すみこ ⇒プロフィール

このコラムでは、相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
12月の数字は「12」といきたいところですが、今月は最終回ですので、○ヶ月以内といった期間制限がありそうでないものについてとりあげてみましょう。

 

 

 

 

■遺産分割はいつまでにやるの!?

亡くなった方(被相続人)が遺言を作成していなかった場合、その方の遺産を相続人がどのように分割するか協議をして決めることになります。(遺言があったとしても、そこに指定の記載がない遺産については協議をします)
この分割協議にはいつまでにやらなくてはならないという期間制限はありません。相続が開始して10年後でも20年後でもいつでもいいのです。

 

では、分割が決まるまでは、その遺産は誰のものでしょうか?
それは、相続開始のときから相続人全員での法定相続分に応じた共有になっているのです。

 

銀行預金については、相続人全員の同意のもと代表者相続人を決めて、被相続人の預金口座の預金を代表者相続人の預金口座に移しておいてから各相続人に分けるということをしますが、分割協議などせずに代表者相続人がそのまま相続することが暗黙の了解になることもよくありますね。

 

では、相続人全員の暗黙の了解で被相続人の妻が亡くなった夫の自宅の土地や建物を相続するという場合はどうでしょうか?
法務局で不動産の所有権を夫から妻に移転する登記をしようとしても、相続人全員の署名と押印のある「遺産分割協議書」が必要になります。暗黙の了解だけではNGなんですね。

ということは、遺産分割に法定されている期間制限はないのですが、財産の名義変更等の手続きをするまでというのが実質的な期限になるでしょう。

■10ヶ月以内に遺産分割しないと相続税負担が大変なことに!?

遺産の総額が相続税の基礎控除額を超えていると相続税が課税されますが、配偶者が相続した財産分は税額が減額できたり(配偶者の税額軽減)、亡くなった方の自宅の敷地を特定の者が相続した場合の評価額の減額(居住用宅地等の小規模宅地等の評価減)で相続税が軽減されるような特例制度があります。

ただし、どちらの特例も相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに分割が決まっていないと適用が受けられません。適用すれば相続税はゼロですむかもしれないのに、分割してないばかりに適用しないで算出した相続税額を納めなければいけません。

 

分割見込の書類を提出した上で、申告期限から3年以内(やむを得ない事情があって税務署長の承認を受けた場合はさらに4ヶ月以内)に分割がされれば適用でき、「更正の請求」の申告をしてすでに納めた税金の還付を受けることができますが、一旦は多額の税額を納めておかないといけないことは大きな負担ですよね。

 

このように、相続税の課税がある場合は、遺産分割は申告期限までにやっておきましょう。2013年10月のコラム「10ヶ月以内にやらなくちゃ!?」もご参照ください。

https://www.my-adviser.jp/column/detail.php?id=1008

■不動産の名義変更はいつまでにやるの!?

遺産分割の協議をして分割を決め「遺産分割協議書」も作成したら、いつまでに不動産の名義変更の手続(所有権移転登記)を行えばいいのでしょうか?
これも期間制限はありません。やらないならずっとやらないままでもいいのです。10年も20年も経ってからようやく重い腰を上げて(?)名義変更をしようかなということがあるかもしれませんが、そのときには、当時作成した「遺産分割協議書」があれば名義変更の手続をすることができます。(添付している印鑑証明書も協議書作成当時のものでOKです)

 

だからといって、長年やらないままというのも後々面倒なことになりがちです。名義変更する前にその不動産を相続するはずだった者が死亡してしまうと、その者の相続人が手続をすることになりますが、当時の状況を把握できてない場合は何をどうするのかわからないままだったり、「遺産分割協議書」が紛失や滅失していることもあるかもしれません。

 

遺産分割が決まったのであれば、できるだけ早いうちに(慌てる必要はありませんが)不動産の名義変更の手続きをしてしまいましょう。
なお、所有権移転登記にかかる登録免許税の額は、その不動産の固定資産税評価額によって決まります。固定資産税評価額はその不動産が所在する市町村が決定して毎年変わります。そのため相続の名義変更の登記を申請するタイミングによって、登録免許税の金額は変わることになるので、固定資産税評価額の動向を推測して、手続を今年中にやるか数年後にやるかということを検討してもいいかもしれませんね。

 

今月は遺産分割や不動産の名義変更の手続きには期間制限がないという話でしたが、だからといって遺産分割しないままだと後々とっても大変になることもでてくるのできちんと考えてやっておきたいですね。
2010年1月のコラム「遺産は分割しないといけないの?」でも記述していますので、こちらもぜひ参考にしてください。

https://www.my-adviser.jp/new_contents/column2010/s_hirakawa_c201001.html

 

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2013年の1年間にわたり相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしてきました。これからも相続に関しては税制改正や民法改正等でどんどん変わっていくでしょう。今後も機会がありましたら、コラム等で新しい情報をお届けできればと思っております。
1年間のご愛読ありがとうございました。

 

どういった対策をすればいいのか、遺産分割の方法はどうするのか、手続はどうしたらいいのか、税金はどうなるのか等々、相続に関することは百人百様といっても過言ではありません。誤った解釈や判断をしたり、わからないから放っておこうとされると、ご自身だけでなく家族・親族のみなさんが相続によって不幸になってしまうこともあります。相続は亡くなる方の想いが引継がれるものです。コラムを参考にしていただいて、専門家にも確認・相談して、みんなが幸せになる相続ばかりになるように願っております。

 

相続や贈与にあたっての法律や手続きに関することは弁護士や家庭裁判所等、相続税や贈与税等の税金に関することは税理士、最寄の税務署等の専門家にご確認・ご相談ください。

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