ベンチャー企業の資金調達【2011年 第2回】

【2011年 第2回】 ベンチャー企業の資金調達 ~資産運用に必要な今どきの経済知識~

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

ベンチャーの資本戦略。必要なのは適正な事業計画の作成とリスク要因の洗い出し。それに基づく資本戦略の構築。有望な事業モデルも資本戦略での躓きで崩れます。

 

 

 

ベンチャー企業の資金調達時に把握しておく2点

ベンチャー企業の資金調達を考える場合、事前に以下の2点を把握しておく必要があります。
1.妥当な事業計画と、予想される財務構造の変化に伴う資本戦略
2.事業を阻害するリスク要因の洗い出し

この点が欠けては、せっかくのベンチャーも財務的に行き詰り、事業の継続が出来なる。あるいは人手に渡る、ということにもなります。
いわゆるベンチャー企業。財務面のみを見てもひとくくりに当てはめるのは難しいでしょうが、あえて特性をまとめるとしたら。

1.貸借体表上の特性
恒常的に設備資金、運転資金ともに厳しい状況。特に自己資本は脆弱。

2.損益計算上の特性
現状は低い利益率、または赤字。ただし近い将来には高い成長が期待できる。

このようなことが考えられます。

このような状況で必要資金をどのように調達したら良いのか。一番手っ取り早いのは金融機関からの融資でしょう。今は民間、政府系の金融機関を含めてを含 めてベンチャー向けの融資は比較的充実しています。その過程で個別の経営相談にも応じてくれることもあります。しかし、自己資本が脆弱なまま融資ばかりに頼ることには問題が有ります。

すぐに順調に利益が上げられる状況であれば良いのですが、ベンチャーの場合当面は赤字決算ということも覚悟する必要もあります。自己資本が脆弱なままではたちどころに“債務超過”ということになります。債務超過の可能性が出てきただけで金融機関の融資姿勢も厳しくなります。

企業の成長のためには、ベンチャーであろうともバランスのとれた財務構造が必要です。融資すなわち負債の増加ばかりではなく、株式を持ってもらう増資という自己資本の増加も必要です。

増資をするにしても、誰に出資を引き受けてもらうかは、今回は割愛するとして、“1株をいくらで引き受けてもらうか?”の問題が残ります。現状で充分な 自己資本がある。利益が順調に確保されている。このような場合は高い価格で引き受けてもらえるでしょうが、そうでない場合はたとえ引き受けてくれたとして も安い価格でしか引き受けてはくれません。同じ金額を出資してもらうにもより多くの議決権を与えなければならない、ということになります。

新規の出資者に多数の議決権を与えない方法として、配当優先株を引き受けてもらう方法もあります。しかし利益が順調に確保されていない場合は配当の原資をどのように確保するのか?

ベンチャー企業に上場大手企業並みの優良な財務を望むことは出来ませんが、かといって、債務超過目前、赤字決算続きということになれば、有望かつ他が参入できないような強固な技術を持っていない限り、増資も難しくなります。

結論は、薄い自己資本かつ赤字決算が続いている状況では、融資、株式引き受けともに難しい、ということになります。そのためにも創業当初から事業計画の策定と貸借対照表の推移見込。それに基づいて計画的な資本政策が望まれます。

その場合、比較的順調な成長モデルを描くことが多いでしょうが、それだけでは不十分です。事業を阻害するリスク要因を拾い出し思い通りにいかない場合のモデルも検討しておくべきでしょう。もっともあまりにも暗黒のモデルを創り出すと、そもそも事業が成り立ちませんのでそこまでは必要ないでしょうが。少なくとも現実的に起こりうる可能性があるリスク要因を抑えることは必要でしょう。とくにファンドからの出資の際には、そこの説明を求められる可能性が高くな ります。

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