経営者が知っておくべき年金問題【2012年 第11回】

【2012年 第11回 経営者が知っておくべき年金問題】– 経営者のための社会保険・労務管理

菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール

経営者には、事業経営ばかりではなく、社会保険や労務管理など「人」に関する様々な知識が求められます。年金に関する知識もそのひとつです。年金問題といえば個人の問題のように思われがちですが、実は会社にも大きな影響を及ぼします。会社の経営にも影響しかねない問題を含んでいます。

厚生年金の加入について

法人であれば、たとえ社長ひとりの会社でも厚生年金(健康保険も併せて、以下同様)に加入しなければなりません。個人事業の場合も、従業員5人以上など、一定の要件に該当すれば加入しなければなりません。

「厚生年金は嫌い、だから入らない」はNGです。

厚生年金に加入すると、会社は正しく手続きを取っていかなければなりません。

社員を雇用すれば、資格取得届。退職すれば喪失届。賞与を支給すれば賞与支払届。

給与改定があれば、適正に標準報酬月額を届出することが必要です。

意外に面倒なのが標準報酬月額に関する届出です。

雇入れ時の届出、毎年7月の届出。

そして、給与の改定があり、2等級以上変動があったときの届出。

標準報酬月額とは、毎月の給与を等級表にあてはめ、基準額に置き換えたものです。毎月の「給与」と考えるとわかりやすいでしょう。

標準報酬月額は保険料を計算するベースとなりますし、年金額のベースともなります。

老齢厚生年金では、標準報酬月額が高いほど受け取り額も増えます。

賞与の額も年金額に反映されます。上限はありますが、賞与が多いほど、年金額も増えます。

 給与や賞与は年金額に直結します。

適正な届出をしておかないと、のちのち、年金で不利益を受けたと問題になりかねません。

数年前、年金記録問題がクローズアップされました。近頃は一段落したようにも感じられますが、年金記録問題は過去の記録の問題だけではなく、今後も起こりうる問題です。

実際に、古い記録ばかりではなく、最近の記録が第三者委員会へ持ち込まれることもあります。

標準報酬月額が実際に受け取った給与と大幅に違う、賞与から保険料を控除されていたのに記録がないなどです。

過去の記録が訂正され、年金額が増えたという話を聞かれたことがあるでしょう。

記録の間違いが訂正され、年金額が増えるということは個人にとってはよいことなのですが、厚生年金の場合、訂正された期間についての保険料は、会社へ請求が来ます。

つまり、個人の年金が増える一方で、会社の負担も増えるということです。

こんなケースがありました

年金記録の確認を求められ、会社としても協力した結果、過去の納付ミスがみつかりました。

増額した年金を受け取った本人は、年金記録の確認に協力してくれた会社に感謝の気持ちを持っていました。

ところがその後、会社へ延滞金を含めた多額の請求が来たのです。

会社は、納付ミス分はしかたがないと思いましたが、延滞金の多さに驚きました。

厚生年金特例法とは、2年以上前の保険料をさかのぼって徴収できる法律です。

通常、保険料を徴収できるのは2年以内ですが、年金記録が訂正された場合、2年の時効を超えて請求されます。

延滞利息が付きますので、当時の保険料の4倍も5倍もの額が請求されることもあります。

毎年、ねんきん定期便が届きます。

標準報酬月額・標準賞与額が記載されていますので、本人からの確認で、不適切な処理が発見される機会が多くなりました。

もちろん、ミスがあってはいけないのですが、保険料の届出ミスは積もり積もれば大きな額になり、問題も大きくなります。

経営者としては注意しておきたいところです。

手続き間違いのため、数百万円の追加請求が来て、分割して納付しているというケースもありました。

このような、会社にとっての年金問題を知っておきましょう。

法令に基づく正しい手続きを、ミスすることがないように行っていくということは、実はとても大切なことなのです。

年金問題が経営問題になることがないように、年金制度について基礎的な知識を持っておくことが必要ですね。

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