発つ鳥、後を濁さず(1) 贈与編【2013年 第10回】

【2013年 第10回  発つ鳥、後を濁さず(1)】
自営業者 40歳からのセカンドライフ計画

恩田 雅之(オンダ マサユキ)

「自営業 40歳からのセカンドライフ計画」の第10回目になります。
10回目~12回目までは、「発つ鳥、後を濁さず」というタイトルで、贈与、相続、葬儀とお墓についてみていきます。今回は、贈与編になります。

 

 

はじめに

高齢者が保有している資産を早めに現役世代の子や孫へ移転させることで、消費を促し「成長と富の好循環」を生み出すために、国の政策で贈与税や相続税などの資産課税の見直しが行われています。以下、「平成25年度税制改正の大綱」(平成25年1月29日閣議決定)に基づき、贈与と贈与税についてみていきます。

1.ベーシックな贈与

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間贈与を受けた財産の合計額に対して課税されます。また、贈与の総額に対し110万円の基礎控除があります。

 

例えば、子が父親から200万円、母親から100万円、合計300万円の贈与を受けたとすると

300万円-110万円=190万円に対して贈与税が発生します。

基礎控除は毎年使えますので、110万円×年数分は税金が掛からず贈与が出来る計算になります。しかし、毎年同じ金額を贈与した場合、連年贈与と税務署に判断されてしまう場合があります。その場合は、贈与金額の合計に対して税額計算をされてしまいます。

毎年の贈与を検討するのであれば、税理士の方に相談してから実行しましょう。

 

また、平成27年1月1日以後の贈与については、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合と、それ以外の方が贈与を受けた場合の税率では、前者の税率が低く抑えられる等といった税率構造の変更が行われます。

2.一定の条件が必要になる贈与

一定の条件が必要な贈与として「配偶者控除の特例」と「相続時精算課税制度」などがあります。

「配偶者控除の特例」は、夫婦間で居住用不動産等を贈与した場合に、基礎控除110万円にプラスして最高2,000万円の控除が受けられる特例になります。

但し、「財産の贈与時点で婚姻期間20年以上」「同じ配偶者について一生に一度」等の条件があります。

「相続時精算課税制度」は、贈与を受けた側が暦年課税(毎年贈与税を納める)ではなく、相続税を申告する時に精算する制度になります。この場合の、特別控除額は2,500万円になり、それを超えた分に対して一律20%の税金が発生します。

こちらの適用要件としては、65歳以上の親から20歳以上の推定相続人(代襲相続人を含む)である子への贈与になります。また、平成27年1月1日以後の贈与については、親の65歳以上が60歳以上に引き下げられ、受贈者の範囲に20歳以上の孫が追加されます。

 

3.適用時期も一定の条件もある贈与

 

適用時期のある贈与として「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」があります。

親子兄弟等、扶養義務者間における生活費、教育費のための贈与については、通常必要と認められるもの、かつ必要のつど直接これに充てるものに限り非課税になっています。

 

今回、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の創設により、一括での贈与でも非課税措置が取られるようになりました。

 

こちらの贈与には、適用時期(平成25年4月1日から平成27年12月31日まで)があります。

条件としては、祖父母が30歳未満の孫の教育資金に充てる為の贈与で、その管理を金融機関(信託銀行等)が行うこと等があります。受贈者1人につき1,500万円までという限度額があります。受贈者が30歳に達した日に金融機関の口座に残高があった場合には贈与税が課税されます。

4.まとめ

以上、ベーシックな贈与や一定の条件が必要な贈与などの中で、代表的なものについてみてきました。どの贈与の仕方を活用するかは、それぞれの家庭環境によって違ってきます。

「はじめに」でも触れましたが、高齢者が保有している資産を早めに現役世代の子や孫へ移転させることで、消費を促し「成長と富の好循環」を生み出すという国の政策については、今後も、この方向性に変化はないかと思います。

 

恩田さん10月分イメージ画像税制改正に関心を持ち、ご自身の家庭環境にあった贈与の仕方を選択できるように準備しておきましょう。不明な点は、税理士に確認することも必要になります。

 

また、贈与を検討するにあたっては、リタイア後に必要になる生活資金を把握し、余裕のある部分で贈与をするようにしましょう。

 

次回は「相続」についてみていきます。
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