経理の共通言語:日商簿記【2014年 第4回】

2014年 第4回 経理の共通言語:日商簿記 キャリアアップにつながる資格のお話

松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)プロフィール

読み、書き、ソロバン。リテラシーという表現をするそうですが、簿記資格は、経理のリテラシーというべきでしょうか?資格がなくても経理はできますが、簿記を知っていないと経理は難しいのもまた事実です。

企業や個人事業者は一定時点(通常は決算時)の財政状態を表す貸借対照表と、一定期間(通常は1年)の経営成績を表す損益計算書(これら二つをあわせて財務諸表という)を作成します。作成の目的は、財政状態と経営成績を把握し、利害関係者に報告するためです。利害関係者とは、出資者(株主)債権者(銀行等の融資先)、税務署、取引先、経営者自身などを指します。その作成過程の基本を学べるのが簿記の資格になります。

具体的には、日々の取引を仕訳という形で表現し、勘定とよばれる項目別に仕訳を転記して、試算表と呼ばれる勘定の一覧を作成します。

そこから決算整理仕訳や勘定締切などの処理を経由して、貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を完成させます(図1)。

図1:簿記の一連の流れ

図1には記載していませんが、仕訳の代わりに伝票を使用する事や試算表から貸借対照表・損益計算書の矢印の間には精算表を作る事があり、伝票や精算表も簿記の学習範囲に入ります。

簿記は大きく分けて、小売店のような商品を仕入れてそれに付加価値を付けて販売する商取引を扱う商業簿記と、材料を仕入れてそれを加工して販売する製造業が扱う工業簿記があります。製造業では製造原価を把握するために原価計算も行います。

○試験内容

ここでは日商簿記の3級と2級についてご案内いたします。 

簿記3級は商業簿記のみが試験範囲です。簿記の仕訳、総勘定元帳への転記、試算表の作成、伝票会計、精算表作成、財務諸表作成、勘定の締切処理が範囲で、個人商店(個人事業)の経理ができるレベルが求められます。

簿記2級では、商業簿記と工場簿記(原価計算含む)が範囲になります。商業簿記は3級と比べて内容が広くなっています。中小企業の経理ができるレベルが求められます。

○受検方式

日商簿記の場合、3級2級共に設問が5つ、試験時間は120分です。

すべて記述式です(稀に選択式で出題される事があります)。

設問の構成として、表1のようになっています。

表1:設問の構成

なお、受検申込みする場合、商工会議所で手続きしますが、商工会議所ごとに締切日が異なりますので注意が必要です。必ずしも住所地や勤務先の商工会議所でないと受検できないわけではありませんので、もし締切に間に合わなかった場合でも別の商工会議所が受付している場合もありますので、諦めないで下さい。因みに試験日はどの商工会議所でも同じです。

○受検してみての体験談

私は大学時代に独学で受験しました。といっても大学で簿記原理や原価計算論、財務諸表論を履修していたので、独学が可能だったと思います。

ただ、簿記受検で注意しなければならないのは計算の正確さと時間配分です。120分で5つの設問に取り組むのですが、第3問と第5問は解答欄が多く、全てを埋めるのに最低でも20分は掛かります。40~50分位でできるのが理想です。なので、検算をしている余裕は殆どなく、計算間違いを見つけても容易に飛びつかずそのまま次へ進むほうが無難と思います。

○まとめ

簿記を初めて学ぶ方にとって、私は「4つの山」を乗り越える事が重要だと言っています。

1つ目の山は仕訳です。仕訳は取引の2面性で表したものです。

例えば、商品を現金で販売した場合は1)商品を譲渡する。2)現金を受取る。を借方、貸方という形で表現します。ここが理解して表現できれば簿記の入り口はクリアです。

2つ目は仕訳を勘定科目への転記です。

3つ目は「為替手形」の処理

4つ目は「見越し・繰延べ」処理のイメージです。

残り3つはここでは割愛しますが、これがクリアできると経理が面白く感じる事ができると思います。

簿記の知識は単に経理の職に付くためだけでなく、経営管理、製造管理等の事業の管理や、経営分析等の投資・評価にも役立てる事ができ、ビジネスマンの必要な知識とも言えます。

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