英国のEU離脱により急落した英ポンド 【2016年 第5回】

【2016年 第5回 英国のEU離脱により急落した英ポンド】日米欧・金融政策の最新事情と展望

小松 英二(コマツ エイジ)

英国で行われた欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票は、離脱派勝利といったまさかの結果を残しました。
事前予想では残留が濃厚との報道が伝わっていましたのでその反動は大きく、世界規模で金融市場に動揺が広がりました。
とりわけ英ポンドは1985年以来の水準まで急落し、ユーロなど他の欧州通貨も全般的に売られました。
今回は、注目される英ポンドや、中央銀行であるイングランド銀行の動向を見ていきます。

 

 

思い出される1992年のポンド危機

英ポンド急落といえば思い出されるのが1992年のポンド危機です。
ポンド危機を振り返ってみます。「ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)」とも呼ばれ、英ポンドの為替レートが急落した出来事をいいます。
当時、イギリス経済が低迷していたにも関わらず、英ポンドが過大評価されていることにヘッジファンドが目をつけました。
ジョージ・ソロス氏率いる「クウォンタム・ファンド」が、英ポンドを売りの標的に定め、巨額のポンド売りを仕掛けて、イングランド銀行の防戦を破ります。
ポンドを売り浴びせ、安くなったところで買い戻すという取引を実行しました。

 

そして今回の英ポンド急落。状況はまったく異なるものですが、英ポンドは一旦急落すると、その程度が大きい通貨であることが浮き彫りとなりました。
その背景にあるのは、英国は米国(基軸通貨国)に次いで世界第2位の「経常収支赤字国」であることです。
経常収支の赤字とは、英国対世界の収支が赤字であることを意味しますので、「資金不足経済」であるといった英国経済の特徴が現われます。
歴史的な大きな流れとして、かつて産業革命を成し遂げた英国も、製造業の輸出競争力が低下し、金融業やサービス業などのウェイトが増加していきます。
こうした産業構造の変化は、貿易収支の赤字などにより経常収支赤字につながり、成熟した資本主義国に現われやすい収支構造と見られています。

 

そして問題の所在は、こうした資金不足を海外からのファイナンスに頼らざるを得ないことです。
英国経済に不安材料があれば、海外マネーは手を引くのが当然の行動原理ですが、それが今回の英ポンド急落の背景にあります。

 

海外からのファイナンスに頼る英国経済

2015年10~12月期の経常赤字は、対名目GDP比7.0%と統計の開始以降で最大となりました。
国際通貨基金(IMF)は、こうした経常収支の動きとEU離脱の懸念に対して、英国経済の「国際収支構造の脆弱性」を指摘してきました。
EU離脱が起きれば英国への資本流入が抑えられ、逆に資本流出が拡大する事態となり、英ポンドに対する下落圧力は増大するとの指摘です。まさに現実のものとなったわけです。

 

今後心配されることは、英ポンド安の急進で英国内に輸入インフレが生じることです。
インフレになると家計の実質所得が減ることから、消費の冷え込みも心配されます。すでに先行き不安で消費は冷え込みつつあります。
英国に入り込んでいる外国企業、日本企業も数多く含まれますが、その拠点を英国以外の欧州諸国に移す話も出てくるでしょう。

 

イングランド銀行の金融政策のゆくえ

イングランド銀行は、昨年から利上げを模索していました。
米国FRBが昨年12月に利上げに踏み切りましたので、それに続くのはイングランド銀行といった見方が広がっていました。
ところが、EU離脱の国民投票が近づくにつれて離脱派の勢いは本物であるとの見方が広がり、英国経済の景気後退リスクを心配し始めます。
金融政策に対するスタンスが次第に変化していきます。

 

イングランド銀行は、国民投票の前から、景気後退リスクが高まれば現在0.5%の政策金利を引き下げることを表明しています。
さらにその先には、2012年10月に終了した量的金融緩和を再開することも視野にあることも明らかにしています。

 

離脱派勝利で混乱が続く英国経済。
イングランド銀行がどのタイミングで利下げに踏み切るか?その時英ポンドの動きは?世界の注目が集まっています。

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