申告期限はなぜ10ヶ月?【2006年 第2回 】

 【2006年 第2回 】  申告期限はなぜ10ヶ月? 相続税

平川 すみ子(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール

「相続」と聞くと、自分には関係がないと思われる方でも、なぜか「相続税」がかからないかと心配になる方もいらっしゃいます。相続財産が少しでもあれば申告をしなくてはいけないと思われがちですが、誰にでも必要というわけではありません。相続財産が基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税の申告は不要です。相続人が妻と子供2人だとすると8000万円が基礎控除額です。

 

 

 

相続税を課税されるのは4%程度

では、年間で相続税を納める必要がある件数ってどれくらいでしょう。国税庁の統計によると、平成16年は相続税が課税されたのは被相続人数で4万3488人。平成16年の死亡者数が102万8602人なので、相続発生件数に対して相続税が課税された割合は約4.2%ということになります。北部九州3県(福岡県、佐賀県、長崎県)をみると、死亡者数6万3545人に対し、相続税課税の被相続人数は1538人で、割合は約2.4%と全国に対して少なめのようです。

相続税の申告が必要な場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出しなくてはならないことになっています。(相続税法 第27条)

10ヶ月の間に遺産分割なんてできないよ~という場合でも、相続税の場合は、民法の規定による法定相続人が法定相続分どおり相続した場合の相続税の総額が、相続人全員の納付すべき相続税額となるので、未分割でも相続税額が決まり、その額を相続人が共同で納付しなくてはならないのです。

その後、各相続人の相続税額に対して、相続税の2割加算や、未成年者控除、障害者控除、等の増減ができるのですが、ここで注意したいのは、「配偶者の税額軽減」は、遺産が未分割の場合には適用ができないということ。

亡くなった方の配偶者であれば、法定相続分までか1億6000万円までの相続なら相続税がかからないという特例が適用できないばかりに、多額の納税資金が必要になります。申告期限後3年以内に分割が確定すれば、相続税の計算のやりなおしができ、相続税の還付を受けることもできますが、再度税務署に出向くのも大変でしょう。遺産分割は10ヶ月以内に終わらせるようにしたいものですね。

申告期限はなぜ10ヶ月?

ところで、なぜ相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から「10ヶ月以内」なのでしょうか?

それは、胎児の誕生を待つためだと私は考えています。

民法上では、胎児も相続人として扱うのに対し、相続税法上では、出生していなければ相続人となりません。現にまだ戸籍上にもいない子を相続人の数に含めるわけにはいかないということでしょう。相続人にならなければ、基礎控除額の法定相続人1人あたり1000万円増もできません。胎児も相続人として相続税の計算をするためには、出生を待つしかないわけですね。

もし、相続開始の直前に懐胎したとしても、10ヶ月あれば出生するはず・・・ということで相続税の申告期限を10ヶ月にしたかどうか定かではないのですが、ありうる話だと思いませんか?

もし出産が遅れて、10ヶ月の申告期限後に生まれた場合には、出生後4ヶ月以内に「更正の請求」をすれば相続税の計算をやりなおしてもらえるようになっていますが、さきほどの配偶者の税額軽減のように、また申告しなおさせるのも大変だろうという、国の計らいなのかもしれません。

 

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