任意後見契約の実務 【2014年 第4回】

【2014年 第4回】任意後見契約の実務  任意後見契約締結の実務について

三次 理加 ⇒プロフィール

①誰を任意後見契約の受任者にするか? ②任意後見契約で何をやってもらうのか?(代理権の範囲)が決まったら、いよいよ任意後見契約を締結します。
本稿では、任意後見契約締結の実務について説明しましょう。

1)  任意後見契約公正証書

①誰を任意後見契約の受任者にするか? ②任意後見契約で何をやってもらうのか?(代理権の範囲)が決まったら、任意後見契約書案を作成します。任意後見契約は、法務省令で定める様式の「公正証書」により締結しなければなりません(下記、任意後見契約に関する法律 第三条 より)。
公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書のことです。公正証書によらない任意後見契約は無効となりますので注意しましょう。

 

 

 

任意後見契約書の原案が作成できたら、委任者(本人)と任意後見受任者の双方が、本人の住居の最寄りの公証役場に赴き、公正証書を作成します。

公証人は、任意後見契約公正証書を作成する際、本人の意思や判断能力、任意後見契約締結の意思を確認する必要があるため、本人と直接面接する必要があります。事情により本人が公証役場に直接出向けない時は、公証人に出張してもらうことも可能です。(日当、交通費のほか、図表1の公証役場の手数料が50%加算される点に注意)

必要な書類は、任意後見契約書の原案、本人については、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書と実印、任意後見受任者については印鑑証明書と実印、住民票(※)です。また、公正証書を作成するのに係る費用は、図表1の通りです。
※任意後見受任者が法人の場合、印鑑証明書、登記事項証明書

なお、第2回で説明したように、任意後見制度では、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されます。任意後見監督人候補者について、本人に希望がある場合には、公正証書にその旨記載しておきましょう。
ただし、任意後見監督人を誰にするか?は、家庭裁判所が判断するため、本人の希望通りの任意後見監督人が選任されるとは限らないことに注意してください。

 

2)   任意後見人の報酬と事務費用

任意後見人や任意後見監督人に支払う報酬や事務費用の扱いは、どうなるのでしょう?

I) 任意後見人

任意後見事務を行うに際し必要となった交通費等の経費は、本人の財産から支払うことができます。本人に代わって支払う医療費や介護サービス利用料等も、もちろん、本人の財産から支払うことができます。

ただし、任意後見人に支払う報酬については注意が必要です。実は、民法上、特約のない限り、任意後見人は「無報酬」となります。そのため、報酬を支払うためには、公正証書に、必ず報酬規定を盛り込んでおく必要があります。報酬の額、支払方法、支払時期等は、本人と任意後見受任者との間で自由に決めることができます。
報酬は、任意後見人が親族の場合は無報酬とすることが多いようです。任意後見人が第三者の場合には、任意後見契約の内容により異なりますが、一般的には月5,000円程度から3万円程度の報酬が相場のようです。

II) 任意後見監督人

任意後見監督事務を行うに際し必要となった経費は、任意後見人同様、本人の財産から支払うことができます。
また、任意後見監督人に支払う報酬額は、家庭裁判所が決定します。ただし、任意後見監督人が家庭裁判所に「報酬付与の申立」を行うことが必要です。

任意後見監督人への報酬額の目安は、東京家庭裁判所の発表によれば「管理財産額が5,000万円以下の場合には月額1万円~2万円,管理財産額が5,000万円を超える場合には月額2万5,000円~3万円」(※)とのことです。決定した報酬額は、本人の財産から支払われます。
※「成年後見人等の報酬額のめやす 平成25年1月1日」/東京家庭裁判所ホームページより

次回は、「任意後見の開始」です。お楽しみに♪

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