有利な運用方法は誰にもわからない?【2014年 第6回】

2014年 第6回 有利な運用方法は誰にもわからない?- 最新ニュース解説。FPとして言わせていただくと…

菱田 雅生(ヒシダ マサオ)プロフィール

お金の運用を考える場合、当然ながら、不利な運用方法よりも有利な運用方法を選択したいと誰もが思うのではないでしょうか。しかし、将来を正確に予測できるなら有利な運用方法を選択していくことが可能になりますが、現実にはなかなか難しいといえるでしょう。資産運用を考える場合の無難なスタンスについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

資産運用を考える場合の無難なスタンス

FPとして相談業務を行っていたり、資産運用に関するセミナー講師などをしていたりすると、「今後も為替レートは円安が続くんでしょうか」とか、「日本の株価はまだまだ上がるんでしょうか」などと質問されることがよくあります。そんな質問を受けたときに筆者が最初に言うことは、「将来のことは誰にもわかりませんよ」です。

そもそも筆者が将来のことを正確に見通せるなら、学生時代、数年後に自主廃業に追い込まれる証券会社を就職先には選ばなかったでしょうし、90年代後半、上場当初のヤフーや破綻寸前にまで落ち込んでいたアップルなどの株式を購入して、資産を1,000倍以上に増やし、いまごろ日本を代表する投資家として有名になっていることでしょう。

しかし、残念ながら、株価の上がった銘柄をあとで探すのは簡単ですが、これから上がる銘柄を正確に言い当てるのは、なかなかできることではありません。にもかかわらず、巷では、多くのアナリストやエコノミストなどが、将来の見通しを自信ありげに語っています。もちろん彼らはそれが仕事なのですから仕方ありませんし、短期的なトレンドをつかむことはそれなりに可能なのかもしれません。ですが、10年後、20年後、30年後といった遠い将来のことは誰にもわからないのではないでしょうか。

戦後の日経平均株価の推移を見ても、1949年5月に東京証券取引所が再開した日の終値176円で始まった日経平均株価は、筆者が生まれた1969年には2,000円前後、筆者が20歳を迎えた1989年には4万円近くにまで上昇しました。当初の20年間で10倍以上、次の20年間で20倍近くに上昇したのです。当時、日経平均株価は近い将来10万円を超えるという予想もあったくらいです。戦後40年のトレンドからすれば、そんな予想に対して「ありえない」と思った人は少なかったはずです。

しかし現実は、20年後の2009年には1万円前後に下落しました。では、これからの20年はどうなるのでしょうか。ハッキリ言って、どうなってもおかしくないといえるでしょう。直近20年で4分の1程度まで下がったということは、今後20年でさらに4分の1になってもおかしくないですし、逆に4倍になってもおかしくないでしょう。

為替レートについても、戦後1ドル=360円だったドル円は、1973年ごろから変動し始めます。1985年のプラザ合意後、たった2年で1ドル=250円程度から1ドル=120円台への円高が進みます。そして、その後の5年で160円台まで戻るものの、バブル崩壊後の5年で一気に1ドル=79円台へ円高が進み、その後3年で1ドル=148円台への円安となり、その後は多少の上下を繰り返しつつ円高傾向が続き、最近少し円安傾向になってきているように見えます。

では、これからはどうなるのでしょうか。

このままいけば40年後に1ドル=20円前後になっていてもおかしくないですし、逆に、300円前後に戻っても不思議ではありません。また、極論ではありますが、円という通貨そのものが消滅している可能性もゼロではないでしょう。日本の国が経済破綻したり、アジア統一通貨が導入されたり、何らかの理由で円がなくなっているかもしれません。

やはり、将来はどうなるかわからない。どうなっていてもおかしくない。だからこそ、有利な運用方法はないかと模索するのではなく、将来起こりうるさまざま事態に備えていくスタンスが無難だといえるでしょう。

具体例を挙げるなら、6年後に東京オリンピック・パラリンピックが行われます。それまで、日本経済は近年まれに見る成長を遂げるのかもしれません。だとすると、国内株式は多少なりとも保有しておくべきでしょう。

しかし、6年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて支出された多額の資金を回収できなければ、オリンピック後の日本経済の落ち込みのほうが大きいかもしれません。とすると、株式ばかりではなく債券も持っていたほうがいいでしょうし、日本経済が本当にボロボロになるなら、国内の資産だけでなく、海外の資産にも分散しておくべきでしょう。

結局のところ、さまざまな可能性を考えて、それぞれに備えようと思えば、さまざまな資産に分散して保有しておくのが無難だといえるわけです。

将来は正確には誰にもわからない。だからこそ、リスク分散を心がける。これが一般の投資家が目指すべき最も無難な運用方法ではないでしょうか。いまの株価が安いのか高いのか、いまの金利が低いのか高いのか、いまの為替が円安なのか円高なのか。それらは、将来になってみないとわからないのです。わからないからこそ分散する。分散したほうが有利なのではなく、分散したほうが無難。まずはそのように考えて実践してみましょう。

 

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