「もしも」に備える③~病名の告知、あなたはどう考えますか?【2011年 第20回】

【2011年 第20回】「もしも」に備える③~病名の告知、あなたはどう考えますか? “終わり”ではない「エンデングート」

高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール

現在の日本の医療は、病名の告知が原則となっています。あなたはどう考えていますか?また自分の考えを家族に伝えていますか?

 

 

 

告知

「もしかするとガンかもしれない…」という不安な気持ちを抱えながら、その結果を待つ1週間という時間は、私にいろいろなことを考えさせてくれる機会を与えてくれました。

1つは、「告知」という問題です。
私は、前の患者さんに対する医師からのガン告知を思いがけず聞いてしまいました。

他人事ではない私は、「“ガン”であることに対する告知って、こんなにもあっさりとしたものなの…!?」と、驚きとショックであったことは言うまでもありません。
ガンという病気の場合、どうしても“死”へのイメージが直結しやすいのですが、医療が進歩し、早期発見早期治療によって克服できることも多いため、逆に「告知」が果たす役割も大きいように思います。
その方の場合も初期の乳がんであって、早期の治療が見込めるということで、先生は「病名」とともに「病状」の告知もその場で行われていました。

また、「いきなりこんなことを言われてとてもショックでしょうが、私と一緒にがんばって治療しましょう…」など、先生は真摯なことばと態度で患者さんに向き合おうとされる様子は、壁越しに私にも伝わってきました。
それは、私自身が1週間の間、同じように告知を受ける場面と置き換えて考えるときにも励みになったといえます。

病気と真剣に向かい合って闘っていくために、患者さんに対して告知を行うこと。
これは、すでに現在の日本の医療現場では原則となっているようです。

がん情報サービス

ガンについて、患者さんやその家族の方々はもちろん、一般の人、医療専門家に対しても、信頼できる最新の正しい情報をわかりやすく紹介する目的のHPがあります。
独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」
http://ganjoho.jp/public/index.html

トップページからもリンクが張られている「患者必携『がんになったら手にとるガイド』は、PDFファイル形式で464ページにも及び、患者さんはもちろん患者さんを支える家族にとっても役立つ情報が詰まっています。
上のHP内に、国立がん研究センター病院 「がん告知マニュアル(平成8年9月(第二版)」が掲載されており、以下のように記載されています。
国立がん研究センター病院では、がん患者すべてにがんの病名の告知を行っており、本マニュアルは、国立がん研究センター病院で医療従事者が利用しているものである。

また、「はじめに」の部分には以下のように記されています。

がん告知に関して、現在は、特にがん専門病院では「告げるか、告げないか」という議論をする段階ではもはやなく、「如何に事実を伝え、その後どのように患者に対応し援助していくか」という告知の質を考えていく時期にきているといえる。しかし、「事実をありのままに話す」という名目のもとに、「ただ機械的に病名を告げる」ことへの批判も一方で高まってきている。こうした現実を踏まえ、告知を行っていく際の基本的な心構えについて、特に告知を受けた患者の精神面の反応や問題点に着目し、その対応も考慮にいれたマニュアルを作成した。

そして、「おわりに」の部分には以下のように記されています。

がん告知はがん診療の第一歩であり、重要な医療行為のひとつである。できるだけ質の高い告知をめざしていくための一助となることを目的に、この小冊子をまとめた。その際、告知を行うにあたり一般的にどのような点に留意すればよいか、告知後の患者の精神的な反応を理解し、それにどのように対応し支援していけばよいかという2つの大きな側面を中心として考えた。今後は臨床の場において本マニュアルを使用した場合の有用性を評価することが大切であるし、がん告知を行っていく際のより効果的な方策を見い出していくことも必要と考えている。

患者さんの知る権利

このように診療の第一歩として告知がされるようになったのは、患者さん本人の「知る権利」の尊重と関係があります。

告知は、患者さんの主体性を尊重し、患者さん自身による治療法の選択を可能にするための情報提供として行われるべきものでしょう。ですから、もちろん病名を患者に言って終わるものではなく、それがスタートとなって良い治療が行われるためには、医師と患者さんの信頼関係が重要なのは言うまでもなりません。

このように患者さん本人への告知が当たり前となってくると、その一方で、「知りたくない権利」はあらかじめ自分で主張しておかなければ尊重されないともいえるでしょう。

また、自分がガンである場合には真実を知らせてほしいが、家族がガンである場合には知らせないでほしいと願うケースも一般的には多いようです。
このような場合、本人の「知る権利」を守るために、やはりあらかじめ家族に対して自分の考えを伝えておかなくてはならないでしょう。

いずれにせよ、もっとも尊重されるべきなのは、「自分自身の希望」つまり「自分が大切にしたいこと」がどういうことなのかを明確にしておく必要があるのだろうと思います。

告知を考え直すきっかけ

今回、家族ではない人に対してではあるものの、あまりにも呆気ない「ガン宣告」を間近に聞いてしまった私は、あらためて、病名や余命の「告知」というものを考え直すきっかけとなりました。
夫と話してみると、私にはまったく記憶がなかったのですが、結婚後間もない頃にそんな話題をしたことがあったと言います。

そして、20年近く前の私は「ゼッタイに知らせないで。知ってしまったら、生きる気力を失ってしまう」と夫に話したそうなのです。
20年の間に、出産や子育てを経験し、父を見送り、その他年齢を重ねる間にそれなりにいろんな経験をした今の私は、180度考え方が変化しました。

「今は、違うからね。ゼッタイに本当のことを知らせてね。きちんと受け止めてやるべきことをやりたいから。」夫と話してみてよかったとつくづく思いました。
もしも、事前に話していなければ、まったく本人の思いとは逆の方向で余計な気を遣わせてしまうことになったでしょうから…。

いつ、どんな病気になるか、それによってどんな<治療・介護・看護>を必要とする状況になるか、それは誰にもわかりません。
コントロールできないことを必要以上に悩んだり心配したりするよりも、自分自身がどんなことを望むのかを考えて整理しておくこと、そして家族に伝えておくことが大切なのではないでしょうか。

そして、エンディングノートを一つの方法として活用することもできると思います。

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