30歳の未婚男性が遺族年金受給中【2014年 第5回】

2014年 第5回 30歳の未婚男性が遺族年金受給中 年金ミステリー

菅野 美和子(スガノ ミワコ)プロフィール

 

遺族年金は、一家の生活を支えている人が亡くなったとき、残された家族に支給される年金です。夫が死亡して妻が受け取るケースが圧倒的に多いですが、その他にも、親が死亡し子どもが受け取るケース、祖父母が死亡し孫が受け取るケースなど、さまざまです。30歳のAさん(男性)はいっしょに暮らしていたお母さんが亡くなり、遺族年金を受け取ることになりました。30歳の未婚男性に支給される遺族年金があるのでしょうか。

 

30歳のAさん(男性)

Aさんは、お父さんが公務員、お母さんが専業主婦という家庭に育ちました。3つ年の離れた兄がいます。4人家族でした。

今から15年前、Aさんのお父さんは病気で亡くなりました。高校に入る年のことでした。Aさんにとってはあまりにも早すぎるお父さんとの別れでした。

お父さんの死亡後、お母さんは苦労して子どもたちを育てたようです。大学への進学が決まっていたお兄さんは、アルバイトをしながらお母さんを助けました。

Aさんは身体が不自由でした。しかし、お母さんもお兄さんも大学への進学をすすめてくれました。知識や技術を身に付けて、しっかり生きていけるようにということが、亡くなったお父さんの願いであったそうです。

お母さんはパートの仕事で働きました。お父さんが残してくれた生命保険と遺族年金があったので、兄弟は大学を卒業することができました。

お母さんは遺族基礎年金と遺族共済年金を受け取っていました。遺族基礎年金は18歳の年度末まで(障害等級1.2級にある場合は20歳未満)の子どものいる妻(平成26年4月1日以降は夫も対象)が受け取ることができます。Aさんは障害等級2級に該当しましたので、お母さんは、A さんが20歳になるまで遺族基礎年金を受け取りました。

亡くなったお父さんは公務員でしたので、遺族基礎年金の上乗せとして、遺族共済年金を受け取ることができました。

Aさんが20歳になったとき、お母さんの年金の受け取り方は変わりました。遺族基礎年金は権利がなくなり、お母さんは遺族共済年金のみを受け取ることになりました。

また、Aさんには子どもの頃からの障がいがあったので、20歳になったときに障害基礎年金を申請し、2級に認定されました。

Aさんは大学を卒業し、仕事に就きました。しかし、いろいろなことがあって何度か仕事を変わりました。そして、巡り合った職場は障がいのあるAさんへの理解が充分にあり、Aさんはここで働き続けていけるだろうと思っていました。

これからはお母さんを助けてあげられるだろうと思っていた矢先、今度は、お母さんが病気になり、治療の甲斐もなく亡くなりました。そして、死亡したお母さんの手続きをしていたときに、お母さんが受け取っていた遺族共済年金はAさんが受け取れるということがわかったのです。

遺族共済年金

遺族厚生年金の場合、夫婦と子どもの世帯で、父が死亡し、母が死亡し、子どもがすでに成人していれば、お父さんの遺族厚生年金を受け取れる人はいません。しかし共済年金は違うのです。お母さんが亡くなったあと、Aさんがお父さんの遺族共済年金を受け取れることができます。

ただし、誰もが該当するということではありません。障がいのある子どもの場合です。Aさんはお父さんの死亡時に障がいのある子どもだったからです。共済年金の場合、障がいのある子どもには年齢制限がなく、一定の年齢に達したときに遺族共済年金の権利がなくなるということはありません。

お父さんが亡くなったときに、遺族共済年金の権利が発生したのは、お母さんとAさんです。お母さんは死亡しましたが、障がいのあるAさんに年齢制限はないので、引き続き遺族年金の権利があります。お母さんが受け取っている間、Aさんの年金は支給停止されていましたが、お母さんが亡くなったので、支給停止が解除され、受け取れることになるのです。

これは共済年金独自の仕組みです。

30歳、未婚、男性

このような条件で、遺族年金を受給できるとは考えないでしょう。

国民年金や厚生年金にはありえません。

しかし、共済年金において、Aさんのようなケースが起こります。

ただ、Aさんは自分自身の障害基礎年金があるので、障害基礎年金と遺族共済年金を選択することになります。遺族年金の方が少し多かったので、遺族年金を受け取ることになりました。

Aさんは会社で働いていますが、遺族年金は減額されることはありません。

ミステリーと思えることにも、ちゃんとわけがあるのですね。

なお、共済年金は平成27年10月に厚生年金に統合されることが決まっています。統合されたあとは、共済年金独自の仕組みもなくなる予定です。統合までに受給権が発生していた人はその権利が守られることになりますが、統合後は、Aさんのようなケースは起こらないということになります。(施行前に詳細が発表されますので、確認が必要です)

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