池田龍也 の ちょっと気になるニュースから 【第27回】8月から高額療養費制度の見直し、ポイントと経緯(資料としても)

マイアドバイザー® 池田龍也 (イケダ タツヤ)さん による月1回の連載コラムです。

【第27回】 池田龍也 の ちょっと気になるニュースから 8月から高額療養費制度の見直し、ポイントと経緯(資料としても)

池田龍也プロフィール

▼ 日本の高齢化を支える医療制度

日本が世界に冠たる長寿国家になれているのは、この「高額療養費制度」が大きく貢献しているのではないか、と思っています。もちろん他の理由もたくさんあるとは思いますが、医者にかかりやすいことも大切です。

体調が悪い、ちょっと気になる、医者に行ってみよう、という時、医療費が高いと、ハードルが高くなってしまいます。この「高額医療費制度」があるおかげで自己負担が抑えられ、医者にかかりやすい、病気ならすぐに治療に、さらには病気が悪化する前に手を打てる、大きな病気を早く発見できる可能性も高くなります。結果的に元気な高齢者が多くなるというわけです。

▼ 100万円かかっても8万円余の自己負担ですむ

この「高額療養費制度」、簡単にいうと、医療費が100万円かかっても自部負担は8万円余りで済むという、ありがたい制度です。
以下は厚生労働省の説明。(ことし7月までの制度の解説)

▼ 高額療養費、8月から負担上限引き上げ

その高額療養費制度、8月1日から改正になり、自己負担が増えることになりました。
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ニュース
医療費が高額になった際に患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」が8月1日に見直された。自己負担の月額上限は、基準額が8月1日から所得に応じて4~7%引き上げられた。来年8月からは、今年7月末時点と比べ最大38%増となる。一方、長期治療が必要な患者の過度な負担を避けるため、年間上限額が新設された。
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▼ この問題をめぐるドタバタ・・・開始か延期か で大揺れ!!

この制度改革、ご記憶の方も多いかと思いますが、去年石破さんが首相の時、いったりきたりして、大騒ぎになりました。

2024年12月
予算案(2025年度)の大臣折衝で2025年8月から自己負担の上限額引き上げ決定
2025年2月27日
高額療養費負担引き上げ一時凍結 政府、8月開始の延期へ調整との報道
2025年2月28日
石破首相、衆院予算委員会で8月実施は予定通りと表明
2025年3月7日
政府は与野党から見直しの声があるため、8月の引き上げを見送る方針との報道
2025年3月7日夜、石破首相見送り表明!!

▼ 仕切り直し・・・患者団体代表含め再度実質的な議論

このあと、新たに専門の委員会が立ち上がり、この問題を議論する体制を改めて作って今回の改正に至ります。

厚生労働省の社会保障審議会、医療保険部会
「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」設置
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken_474087_00004.html
(詳細な資料はココにあります)

2025年5月26日初会合で、12月25日までに9回の会合開催
「これまでの議論が拙速だったという指摘を重く受け止めて」という声が多く聞かれ、
その反省の上に立って、がんや難病の患者団体からのヒアリングをさっそくスタート。

ガン患者の切実な声
「死ぬことを受け入れ、子供の将来のためにお金を少しでも残すほうがいいのか追い詰められています」
「これ以上医療費が高額になると、治療を諦める、命を縮める患者が増えるのは確実です。私たちを殺さないでください」

医療保険制度の持続という観点と、セーフティーネットとしての機能、安心という点、のバランスをどうするかが、最も大きな焦点でした。

▼ 最新の制度について

議論を踏まえて、去年8月に強行しようとした案と比べると、かなり配慮がうかがわれる制度設計になっているようです。

(1)長期療養者への配慮
1.多数回該当の金額を据え置き
2.「年間負担額の上限」の導入
(2)低所得者への配慮
1.住民税非課税ラインを若干上回る年収層である「年収200万円未満」の方の多 数回該当の金額を引き下げる。
2.外来特例の限度額引上げの際、「住民税非課税区分」に外来年間上限を導入 し、年間の最大自己負担額(12ヶ月限度額を負担される方の負担額)を現在よりも増加させない。

厚生労働省の説明資料では以下のようになります。
収入が高くなると自己負担額の上限も上がりますが、長期療養者や低所得者層の負担は極力抑え、収入が大きい層には多く負担してもらうという設計になっています。

詳しくは厚生労働省のもとの資料をご覧ください
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf

▼ 自己負担の引き上げの詳細

下の資料を見てください。例えば370万円の収入の人は、自己負担上限が、
もともとの制度では 80100+医療費の1%
去年の案       88200+医療費の1%
今年実施の案    85800+医療費の1%
(細かい計算は省略して、おおよそのイメージと金額)
となっており、自己負担の上限を上げてはいるものの、最終的に去年の案よりは上げ幅を圧縮していることがわかります。


詳しくは厚生労働省のもとの資料をご覧ください
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf

▼ 高額療養見直しパブコメに異例の5300件

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ニュース
政府は、医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」の見直しに関するパブリックコメント(意見公募)に約5300件が寄せられたと発表。通常の公募と比べ異例の多さで、自己負担の月額上限引き上げなどへの反対意見が殺到した。だが、政府は当初の方針を修正せず8月から実施した。
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制度改正に批判殺到、パブリックコメントは聞き置くだけで、制度設計は変更せずに、国は実施に踏み切ってしまった、というメディアのトーンが散見されています。賛否両論あるテーマですし、国の味方をするわけではありませんが、厚生労働省は専門委員会のすべての議論を公表していますし、専門家の議論を踏まえて制度設計しているので、国が一方的に制度を決定して、国民に強制しているわけではありません。

専門委員会には、患者団体や保険者、労使団体を代表する委員もメンバーとして参加していますし、議論の過程では、患者団体・保険者等からのヒアリングも実施されています。自己負担の年間の上限を定める規定などは、患者団体からの提言を制度に反映させた形になっています。

▼ パブコメの意見の詳細は以下のリンクで

政令案に関する意見 4300件
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000318535
省令案に関する意見 980件
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000318536
 

▼ 1年でかなり修正が進んだ印象

重い病気で医療費の負担が大きい人たちや低所得者層に対しては、一定の配慮をしている一方で、収入が多い人にはより多く負担してもらうことも織り込まれています。
旧制度だと、年収370万円の人と770万円の人が自己負担の上限が同じ、770万円の人と1160万円の人も上限が同じ、というのは、たしかにちょっとざっくり過ぎるといわれれば、その通りで、年収が多い人には多く負担してもらうというのも、ある程度コンセンサスを得られる改定なのではないでしょうか。

去年春の石破さんの決定は、病気で苦しんでいる人に重い負担を強いるのではなく、制度設計については、いったん立ち止まって、きちんと議論しようというものでした。その判断は、制度の内容をきめ細かく議論する時間を作っただけでなく、この制度の在り方、意義そのものまで議論する結果になりました。必要な負担と、必要なセーフティーネットというふたつの相反する目的を両立させるぎりぎりの議論を専門家のみなさんがやってくれたのだと信じたいと思います。
 

 

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