有料老人ホームの費用【2013年 第11回】

【2013年 第11回 有料老人ホームの費用】高齢期の介護とすまい

岡本 典子 ⇒プロフィール

有料老人ホームは入居一時金が数千万円から数億円かかる高い施設がありますが、最近は入居一時金ゼロという施設も増えてきています。しかし、入居一時金が安い施設は月額費用が高いところもあります。有料老人ホームの費用は入居一時金と月額費用を併せて考えていく必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

有料老人ホームの費用は2本立て

多くの有料老人ホームは利用権方式という独自の形態を採用していますが、有料老人ホームの入居一時
金は前払い家賃です。その施設の居室と共有部分を利用する権利として、施設ごとに決められた償却期
間分の家賃を入居時に一括で支払うものです。自立型は元気なときに入居し、介護が必要になっても介
護を受けて住み続けることができるため、償却期間が15年程度と長めに設定されています。一方、介護
型は要介護認定を受けた人が入居することから、要介護になってからの平均生存年数が4年9ヶ月という
ことも考慮され、5年程度に設定されているのが一般的です。
また、入居一時金が必要な施設では、入居時に償却される初期償却割合も決められ、それを除く部分が
償却期間で均等償却されます。もし、償却期間内に死亡したり、何らかの理由で退去した場合は、未償
却部分が身元保証人(身元引受人)に返却されます。
これを別の角度から見れば、償却期間をすぎれば家賃はかからないことになります。
つまり、一度入居一時金を払って入居すれば、たとえ100歳過ぎまで何十年間生きたとしても家賃支払
いの心配はないのが、入居一時金システムのメリットです。デメリットは、入居して1年程度で亡くな
ったような場合、初期償却部分が返還されないため、返還金が少ないと感じる点です。
一方、月額費用の中身は施設運営管理費、食費、そして要介護度別の介護保険1割負担分、オムツ代な
どです。その他、実際は水光熱費や医療費、交際費などもかかります。

 

 

入居一時金の相場は1,000万円台

入居一時金はゼロから3億円台という施設までありますが、平均すると1,000万円台です。
介護付き有料老人ホームや一部の住宅型有料老人ホームは、元気な高齢者が入居するケースが多いた
め、居室が広く共有施設も充実していることから、入居一時金が5,000万円~数億円と高額で、平均値
を上げている感があります。ただし、月額費用は16~18万円程度と手ごろです。元気なうちは施設に支
払う額以外に、交際費や外食費などコントロールが効く出費のことも考慮しなければなりません。
要介護者が入居する介護付き有料老人ホーム介護型は入居一時金がゼロから数百万円程度が中心です。
近年入居一時金ゼロが増えてきていますが、その代わりに毎月家賃を支払っていくことになるので、月
額費用が月額25~40万円程度と高額になります。この他、月額費用は介護保険1割負担分やオムツ代も
かかります。施設数は介護型が圧倒的に多いため、入居一時金の中央値は1,000万円程度になるでしょ
う。

介護一時金が必要な高級施設も

介護保険法で介護体制は3:1以上と定められています。これは、要介護者3人に対して1人以上のケアス
タッフが介護するという基準で、1週間に40時間働く人を1人として計算しています。
2.5:1、2:1、1.5:1と手厚い介護を行う施設は、その分の人件費を月額費用にプラスして高く、ある
いは、入居時に介護一時金として数百万円プラスしています。これは、介護が必要になれば最期までそ
こでずっと介護してもらえる「終のすみか」を探し、介護一時金を支払うことで、終身リーズナブルな
月額費用だけで手厚い介護が受けられるという、保険に似た機能を付加したものです。なお、介護一時
金は別枠で管理されます。

クーリングオフ

有料老人ホーム入居後6ヶ月以内に死亡したり、何らかの理由で退去する場合は、入居一時金が全額返
還されます。ただし、利用した日数分の利用料金は日割り計算で請求されます。

支払方法選択肢の拡大

近年有料老人ホーム入居時に、入居一時金は高いが月額費用をリーズナブルに抑えたコース、入居一時
金は安いが月額費用を高めに設定したコースと、入居契約者が数種類の支払いコースから選択できる施
設が増えています。
これは入居者多様化への対策の一つです。
例えば、夫が亡くなりまとまった生命保険金が手元に入ったの
で、入居一時金はドカンと支払ってでも、毎月の月額費用は遺
族年金などのフローで収まるようなコースを選択し、長生きし
ても安心な資金プランを立てたい人。また、これからどのくら
い生きられるかわからないし、あまり長く生きるつもりはない
から、月額費用は高めでも入居一時金は支払いたくないという
人もいます。
お一人お一人の身体状況や性格、考え方により選択肢は異なりますが、入居中医療費がかかるケースが
多いことも考慮し、余裕をもって試算し、最期まで支払いができるような資金計画が肝要です。

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