住宅ローンプラン実践編⑤【フラット35を借換えに利用したケース】【2012年 第9回】

【2012年 第9回】住宅ローンプラン実践編⑤【フラット35を借換えに利用したケース】
– ケース別コラム – 住宅ローン

奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール

一般論もいいけど、やっぱり個別の事例が知りたい!そんなご要望にお応えして、これまで私が実際に相談を受け、対策をとった、『リアルなケーススタディ』をご紹介していきたいと思います。

 

 

 

□ご相談内容

今から4年前に、岡山市内で一戸建ての住宅を購入。全期間固定金利ローンで借入したが、いまの低金利水準もあって借換えを検討したい。変動金利にするか、固定金利にするか迷っており、おすすめの銀行もふまえ、アドバイスがほしい。

□ご相談の背景

このお客様は、夫42歳、妻40歳、夫の母親との3人暮らし。夫婦共働きで子供なしということで、比較的家計には余裕があったのですが、景気低迷のため夫婦ともに収入が減少。現在の全期間固定金利ローンの支払いが若干厳しくなってきたため、今後のこともふまえ相談にお越しになりました。

□DINKS世帯ならではの問題を解消するため、ライフプランニングで、今後の人生設計を練りなおし。住宅ローンも優先順位を明確に。

夫婦共働きで子供なし、いわゆるDINKS世帯は、その収入の安定感ゆえに家計管理がルーズになりがちです。今回のご相談者もDINKS世帯にありがちな、「夫婦の財布は別管理」であり、そのため毎月の支出のコントロールが弱く、なぜかお金が貯まらないという問題を抱えておられました。加えて夫婦ともに収入が当時よりも減少。住宅ローンの借入金利が3.65%と支払い負担も大きく、より一層お金が貯まりにくい状況に陥っていました。

そこで、借換えを前提にライフプランニングを実施。その過程のなかで毎月の支出についても、もう少し節約できる部分がないか、夫婦でよく話し合いをしていただきました。住宅ローンの借換えについても金利をどうするか、期間をどうするか、ライフプラン結果をふまえつつ検証を重ねました。

□「フラット35」を借換えにも活用

検証の結果、以下の方針が固まりました。

① 住宅ローンは同じ全期間固定金利のフラット35へ借換え。
② 毎月3万円以上、確実に積み立てを実施。それを後押しするため、借換え住宅ローンの返済期間は当初よりも若干の短縮にとどめ、毎月の支払い額減少のメリットを優先する。
③ 借換えにおける諸費用を上乗せして借換え実施することで、手元資金の減少を防ぐ。

これらの方針をもとに、借換えに向け手続きを進めることとしました。

なお、思い切って変動金利に借換えし、とことん低金利を追及する選択肢もあったのですが、収入の安定性に若干の不安を抱えておられましたので、金利の変わらない安心が得られ、かつ支払負担も緩和できるフラット35を利用することとしました。

「フラット35」は住宅取得時のみ使える、というイメージが強いのですが、実は現在取扱のフラット35は借換えにも対応しています。住宅取得時の諸費用は借入対象になかなか含めることができないのですが、借換えの場合は、融資手数料や登記費用等の諸費用も借入対象に含めることができますので、意外につかいやすいのが特徴です。

□フラット35を借換えに利用する場合の注意点

とはいえ、今回のケースではフラット35ならではの注意点も浮き彫りとなりました。なかでも、「当初借入時に、土地建物代金だけでなく、諸費用部分も含めて借入をしている(⇒いわゆるオーバーローンの)場合、フラット35は使えない」という点は、要注意です。

実際、銀行によっては、諸費用含め土地建物代金の110%まで借入可能、というところもあり、オーバーローンとなっている案件は意外に多く存在します。
フラット35の利用を考える場合、まずオーバーローンであるか否か、事前にきちんと確認しましょう。

また、一般の銀行からフラット35へ借換えする場合、団体信用生命保険が別途必要となりますので、その保険料負担増加についても、注意が必要です。

◇今回のケーススタディのポイント

今回の相談者は、そもそもの借入金利が3.65%と、現在の水準からみれば高めの金利でした。フラット35で借換えしたとしても十分金利削減効果は得られるため、あえて変動金利ローンは利用しない、という結論となりました。

今後、同居のお母様の介護費用もかかってくる可能性が高く、その点も考慮して、支払い額の変わらないフラット35を利用することにしました。契約手続きも順調にすすみ、10月中に借換え実施の予定です。

と同時に保険見直しも実施。こちらもこれ以上保険料の支払い額が上がらない仕組みを導入し、保険料自体も月5,000円ほど安くなりました。あとは、毎月の積み立てを確実に実施し、手元資金を増やしていく計画です。これまで夫婦仲は良くてもお金のことは相談しにくく、お互い見えない部分があったのですが、ライフプランを活用することで、現状の問題点や価値観など、夫婦で共有することができました。

これから住宅を取得する人も、既に購入し、住宅ローンの借換えを検討する人も、ぜひライフプランを活用し、夫婦の、そして家族の絆を強めてほしいと思います。それこそが、ライフプランの本質であり、それを主業務とするファイナンシャルプランナーの存在意義でもあります。困った時はぜひ、身近なファイナンシャルプランナーにご相談ください。

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