岡本英夫のFPウオッチャーだより 第21回 FP養成講座の変遷~ ③ 【2023年12月】

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第21回目です。

岡本英夫プロフィール

資格認定試験の功罪

2002年にFP技能士が制度化されたことで、日本FP協会のAFP、CFP®と2級、1級のFP技能士資格が混在することになった。
この時点で、従来のFP養成研修の多くは資格取得研修となったのだが、そのために受講者にとっては試験に受かることが目的となり、講座の内容も変容していく。

筆者は、FP受験対策研修ではFP総論、金融資産運用設計、ライフプランニング・リタイアメントプランニングを担当することが多かったが、2級=AFP学科試験にはFP概論からは2~3問しか出題されないために養成講座での講義時間も1時間で、その1時間のなかにライフプランニングの一部が含まれることが少なくなかった。

ある研修機関でのFP総論の講義中、「販売手法の3段階発展説」(第1回参照)の紹介を始めたところ。受講生から「テキストにはない話ですが、試験に出るのですか?」と質問された。
「試験には出ません。ただしFPを理解するためには必要だと思います」と答えたところ、「試験に出ないのならやめてください」と言われ困惑した。

さらに「試験に合格するためにお金を払って参加しています。試験対策でないのなら、講義など聞かず、過去問を解いていたほうがよいと思います」とたたみかけられた。

以降、FP総論では、FPの定義、4E、6ステップ、関連業法(コンプライアンス)を「試験に出るので覚えてください」と言って短時間で話すようになった。

しかし、これでは筆者が講義する意味などない。
やむを得ない場合を除いて受験対策講座の講師は引き受けないことにした。
試験に受からせるだけなら、もっと優秀な若い講師を紹介したほうがよい。

上記4項目でも経験に基づいた筆者なりの話ができるが、その部分は雑談、無駄話ととられかねない。
「閑話休題」の「閑話」なのである。

日経新聞の読み方、公的年金の歴史も封印

かつては金融資産運用設計ではその日の日経新聞をテキストに使用し、マーケット面をもとに短期金融市場、長期金融市場を説明し、景気指標である日銀短観や景気動向指数、日銀の金融政策などを最新情報をもとに紹介していた。

FPとしての情報収集法の講義でもあったが、過去問を提示し、回答のポイントを説明するようになった。

リタイアメントプランニングでは、最初に年金の歴史を紹介していた。
明治8年の軍人恩給から始まり、昭和61年の新年金法施行までほぼ1時間を費やしていた。
昭和15年の船員保険や17年の労働者年金、19年の厚生年金のことも知っていて損はないと思うのだが、公的年金は出題範囲が広く、時間的制約もあり封印した。

CFP®受験対策講座

「AFP受験対策マル秘ノート」を近代セールス社が発売したのが2002年。
著者はAFP受験対策研究会になっているが、当時FA誌の編集長だった福地健元近代セールス社社長の一人仕事だった。

発売後、読者から問い合わせがあり、CFP®受験対策マル秘ノートはないのかという。
要請に応えて制作することになった。

2003年、合計6科目の「CFP®受験対策問題集」を発売した。
それまで認定教育機関が作成する問題集はあったが市販されているものはなかった。
これも執筆者名はCFP®受験対策研究会編となっているが、当時の近代FP協会スタッフとその講師陣による執筆である。
この問題集は毎年の改訂が大変だったが、数年間続いた。

「AFP試験対策マル秘ノート」は、その後「FP技能検定2級試験対策マル秘ノート」「FP技能検定3級試験対策マル秘ノート」となり現在まで続いているが、他の出版社から同様の試験対策本が多数発売されていることもあって、影が薄くなっている。
後から発売されるもののほうが価格も安く設定され、既存本の欠点を補う傾向がある。

とはいえ、AFPにしてもCFP®にしても、試験対策本はいわばポイント集である。
受験対策講座も同様で、問題の解き方が中心になるし、必ず正解がある。
しかし、FP業務自体は正解のないことが多い。資格試験に合格した後の周辺知識修得と実務経験のほうが大事なのである。

日本FP協会の組織整備と機能充実

2000年代前半までの日本FP協会の組織は、発足当初の体制からなかなか脱却できず、NPO法人となった後も いわば屋上屋を重ねていく形だった。

その体制が急速に変わり始めたのは2004年前後からである。
NPO法人としての社員総会か開催され始め、会員FPの声が届き始めたことも大きかった。

日本FP協会制作のCFP®資格標準テキスト6分冊が整備され、資格試験問題集も発売されたのもこの頃である。
それまでは、認定教育機関(FPK研修センターなど)が独自に制作したテキストを使い、過去問題集も同様だった。
近代セールス社や他の出版社が対策問題集や過去問解説書を制作していたのはそのためである。

現在は、日本FP協会が発行・販売する「CFP®資格標準テキスト」と「CFP®資格審査試験問題集」があれば、試験対策の対応できる。

私見だがその体制が整ったのが2007年前後で、全国の支部・ブロック主催セミナー、スタディグループの活動、継続教教育セミナーなどがスムーズに展開されるようになり、今日に至っている。

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