岡本英夫のFPウオッチャーだより 第15回 第2次FPブームを振り返る ~日本FP協会のNPO法人化と会員数の増大 【2023年6月】

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第15回目です。

岡本英夫プロフィール

1998年12月1日に施行された特定非営利活動促進法により法人格を認められた民間の非営利団体を「NPO法人」という。
日本FP協会は2001年7月2日に内閣府よりNPO法人として認証された。
それまでの任意団体では不透明な部分があったが、これにより組織としての信頼性が格段に高まった。

90年代のわが国のFP教育は金融機関ごと、業態ごとに行われ、主に近代セールス社や金融財政事情研究会、経済法令研究会などの金融専門出版社がカリキュラムや教材作成、修了認定等を行っていた。

ところが、日本FP協会のNPO法人化に伴い、金融機関の法人賛助会員化が加速、金融専門出版社等も認定教育機関に移行していった。

同時に、FPの市場性に着目した予備校や教育専門会社が日本FP協会の認定教育機関としてFP教育に乗り出した。
河合塾、大栄教育システム、TAC、日本マンパワー、早稲田セミナーなどである。

また、この時期、雑誌「ファイナンシャル・アドバイザー」が復刊、「FPビジネス」(銀行研修社)、「FPサポート」(日本法令)が創刊された。

さらに、02年には厚生労働省が技能検定の新種職種としてFP技能士を追加、日本FP協会および金融財政事情研究会を指定試験機関とした。
1級~3級FP技能士がそれである。

これによりAFP、CFP®、FP技能士資格などが混在し、移行措置等も手伝って「第2次FPブーム」が到来する。

日本FP協会の会員数急増の理由

02年1月1日時点での日本FP協会の資格認定会員は11万3,246名、うちAFP認定者10万7,383名、CFP®認定者が5,863名であった(現在は約19万名)。

97年1月時点での資格認定会員が1万2,842名であったことを考えれば10万名も増加している。
とくに99年から2000年の1年間では約3万5,000名と伸びが著しい。

FP協会のNPO法人化による組織の確立、全国各ブロック・支部の整備、スタディ・グループや日本FP学会の設立、法人賛助会員の増加(02年1月で100社、認定教育機関を含む)といった要因は大きいが、それだけではない。

筆者なりに当時感じた会員数増加の理由を紹介する。

金融業界の再編と人材の流動化

97年4月、日産生命に業務停止命令が下り、99年に東邦生命、2000年には千代田生命、協栄生命が破綻した。
保険会社の再編が行われ、生損保相互乗り入れもあってカタカナ生保、ひらがな生保が誕生した。

また、97年11月には、三洋証券、山一證券、北海道拓殖銀行が破綻、保険、証券、銀行業界で人材の流動化がはじまった。

これを加速させたのが銀行の投信・保険窓販開始、確定拠出年金の創設などである。

投信や保険販売の経験があり、年金や税金に詳しいFP的人材は転職に有利だったし、講師や執筆でも重宝がられた。

AFPやCFP®、技能士資格は前職時代に取得している人も、新たに取得する人もいたが、この時期、FPとして独立する人も少なくなかった。

男女雇用機会均等法から15年、女性のFP取得熱

男女雇用機会均等法が制定されたのが85年、90年代に金融機関を訪ねると優秀な女性が各部門でスタッフとして働いていた。

保険会社の女性職域部隊(日生リーブなど)、証券会社のセールスレディ、銀行のローカウンター担当者も優秀な女性が多かった。
彼女たちもやがて結婚、出産、子育ての時期を迎え退職、転職といった岐路に立つことになる。

2000年前後、AFP受験対策講座で講師を努めていたが、20代後半から30代前半の女性受講者が多かった。
どこの認定教育機関でも同じだったと思う。

その合格者の中から現在、FPとして活躍する女性たちが育っている。

あれから23年が経過したから50歳前後の女性FPとしての出発点は、この第2次FPブームだった。

就職氷河期の若者たち

筆者の長男は1980年生まれ、22歳で大学を卒業したが、このころはまさに就職氷河期だった。
3年時の12月にリクルートスーツを購入したが、翌年6月に薄手のスーツを新調したのち、ようやく就職先が決まった。

金融機関志望ではなかったが、金融機関を志望する学生にとってはFP資格が役に立つ、といわれはじめたのが、このころである。

認定教育委機関でAFP、3~2級技能士を取得する学生が増えたのである。
FP資格取得講座を採用する大学・専門学校も増加、大学講師の肩書を持つFPも出現した。
現在もFP資格取得講座やそれに類するカリキュラムをもつ大学は多い。

余談だが、長男は志望業界をあきらめ某証券会社に就職したが、初年度にAFP資格の取得が求められていた。
その受験対策研修で講師をしたのを記憶している。

知らないそぶりで講義したが、合格したと聞いたときはほっとした。

なお、現在は転職して他業態で働いている。
FP資格を継続しているかどうは定かでない。

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