岡本英夫のFPウオッチャーだより 第50回 FPの必要知識は時代とともに変化する② 第2期=住宅ローン借り換え

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

住宅金融公庫の住宅ローン

 1980年代の住宅ローンは住宅金融公庫融資が中心で、民間金融機関からの借り入れは公庫借り入れの補完といってよかった。筆者は1979年に1,700万円のマンションを購入したが、公庫から900万円、年金福祉事業団から500万円を借り入れた。残りの300万円が頭金だった。金利は公庫が5.5%、年金融資6.25%の固定金利で、高いと思われるかもしれないが、当時の公定歩合は5.25%で、住宅購入者にはありがたいものだった。
 購入後、不動産価格は上昇の一途をたどり1,700万円の物件はバブル期の87年頃には5,000万円を超えていた。値上がりした住居を売却した代金を基に新築一戸建てや都心に近いマンションを購入し転居していく隣人が相次いだが、買い替えた物件の価格も高かったため、新たにローンを組む場合、公庫融資対象物件でも銀行や銀行傘下の住宅金融専門会社から同時に借り入れる購入者が多かった。

第一次借り換えブーム

 住宅ローン金利は1988年以降、下落傾向が鮮明になる。これを商機と見たのが当時の住友銀行で、住宅ローンの借り換えを融資戦略のひとつとして展開した。住宅金融専門会社からの借り入れには10%を超える金利のものも多かったから、借り換えれば毎月返済額、トータル返済額の軽減につながる。その武器となったのが借り換えシミュレーションのできるポケットコンピュータで、その効果は絶大だった。
 他の都銀も追随したが「時すでに遅し」の感があった。この状況下で、㈱近代セールス社は電卓タイプの住宅ローン計算機「ローンプランナー」を発売、これが金融機関やFPによく売れた。のちに複利計算、年金額、相続・贈与税、譲渡所得税等の計算機能を加え「ポケットFP」に名称変更したが、愛用していただいたFPも多かった。とくに住宅ローンや年金相談時には大きな効果を発揮したはずだ。

知っておいてほしい「ゆとり償還」の弊害

 バブル崩壊による株価および不動産価格の下落は、わが国経済に大きな影を落とした。株価・地価テコ入れ対策が喫緊の課題となったが、消費拡大効果の大きい住宅取得を促すため、住宅金融公庫がそれまでの「ステップ償還」を「ゆとり償還」に名称変更し、当初5年間の返済額を50年償還から75年償還で計算する仕組みに変えたのが1992年である。これが結果的に98年以降の住宅ローン破産問題を生み出すことになる。
 35年返済で住宅ローンを借りるとして、当初5年間の返済額を75年償還で返済するとすれば、当初の返済額は少なくて済むが、6年目、11年目以降に大きくアップする仕組みである。その間には、給料も上がり購入した不動産(特に地価)も上がると考えることもできるが、事態は逆に動いた。返済は苦しくなる、住居を売却しても当初返済は利息が大部分で、大きな残債が残る。最悪は自己破産だ。
 ゆとり償還での借入者の中に、この被害者が続出した。新聞や雑誌で報道され国会でも取り上げられた。これが契機になったと言ってよいと思うが、住宅金融公庫は2007年4月に廃止され、同時に住宅金融支援機構に衣替え、主として民間住宅ローンの証券化(フラット35)を扱う現在の姿となった。「住宅金融公庫融資付き」「公庫融資も可」という良質の物件を供給するという公庫の使命はこの時に終わりを告げたのである。
 現在、住宅価格の上昇に対応するため50年ローンが創設されつつあるが、こうした過去を知るFPとしては、リスクを抑えた物件選択、ローン設計を訴えたい。30歳代で住宅ローンを組む場合、数年後に返済額がアップすると子どもの教育資金や老後資金作りを圧迫する。家庭不和の原因にもなる。キャッシュフロー分析を通じて将来不安を指摘しても、新築で良質な物件を希望する相談者は多いので、相談時には心がけていただきたい。

第2次借り換えブーム

 民間金融機関から借り入れた住宅ローンの借り換えは前述のようにバブル崩壊直後から始まったが、かつて借り入れた住宅金融公庫のローン金利を民間金融機関の金利が下回ったのは1995年頃からである。ここで住宅ローン借り換えの第2次ブームが起こる。公庫融資残金の民間金融機関への借り換えである。5.5%の公庫融資と6.25%の年金福祉事業団融資を返済中だった筆者も、1996年に3%強の金利で地元の銀行で借り換えた。
 35年の返済期間を5年間短縮、毎月の返済額も少なくなった。その残債も数年後一括返済するのだが、借り換えの時点で住宅ローン相談、借り換え相談はFPの必須知識となっていた。その後、住宅金融公庫が廃止され、年金住宅融資もなくなり、フラット35を含む民間金融機関のローンのみが対象となって以降は、新たな住宅ローン取扱金融機関が次々と登場し、現在に至っている。
 今回住宅ローンとともに予定していた「生命保険見直し」は次回、取り上げる。

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