日本の石油元売【2015年 第1回】

【2015年 第1回 日本の石油元売】
「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話

三次 理加 ⇒プロフィール

 

石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説「海賊とよばれた男」百田尚樹/著(講談社)を皆さんは、もうご覧になりましたか?私は、「こんな日本人がいたから、今の日本がある!」と深く感動しました。ふと思ったのは「読者に原油の知識があれば、もっと面白く読めるだろうな」ということ。そこで、今回から、「海賊とよばれた男」がもっと楽しめるようになるための原油の話を6回にわけてお伝えしていきます。

 

1)現在の石油元売り

「海賊とよばれた男」には、上記のような記述があります。実は、登場人物だけではなく、登場する企業や団体も、そのほとんどが実在したものです。登場人物同様、その名称を実在のものとは変えているものもありますが、実在した企業名をそのまま使用しているものもあります。

「え?どの会社?」

それを推測する前に、現在の石油業界に関連する企業群を説明しておきましょう。

我が国における石油業界は、おおまかに、石油開発会社、元売(=石油会社)、卸・小売販売業者で構成されています。

これらのうち、中心的役割を果たしているのが「元売」です。

「元売」について公式な定義はありませんが、一般的には、製油所を所有するか、または石油精製会社と密接な資本関係があり、原則として自社ブランドを持ち、それら石油製品を直販、または自社系列の特約店に卸売を行っている企業を意味します。その語源は、第二次世界大戦後、国内における石油精製が開始された際、精製設備または輸入基地を有し、石油製品の配給能力を有すると認められた事業者が「登録元売業者」に指定されたことに由来します。

現在の元売は、図表1の通りです。このうち、石油メジャーとの資本関係から、東燃ゼネラルグループ(注1)、昭和シェル石油を「外資系元売」、日本資本の元売を「民族系元売(注2)」といいます。

注1:ただし、 2014年12月31日現在、東燃ゼネラル石油株式会社の主要株主であるMOBIL OIL EXPLORATION AND PRODUCING SOUTHEAST INC.の持ち分比率は7.41%である。

注2:コスモ石油は2007年9月にアブダビ首長国の政府投資機関の国際石油投資会社(IPIC)が筆頭株主となっている。

 

2015年7月30日、出光興産は、オランダのロイヤル・ダッチ・シェルの子会社より、昭和シェル石油の株式33.3%(議決権比率)を取得し、今後、出光興産・昭和シェル石油の経営統合に向けて本格的な協議を進めることで合意したことを発表しました。これにより出光興産は、昭和シェル石油の筆頭株主となります。

 

今後、我が国の石油業界は、石油元売国内トップのJX日鉱日石エネルギー、次いで出光興産という2強体制となっていくことが予想されます。純粋な意味での「外資系元売」は消滅した、といえるかもしれません。

 

 

2)石油元売の歴史

日本で最初の石油会社は、1888年に設立された「有限責任日本石油会社(1894年に日本石油(株)に商号変更)」です。同社は、1893年に設立した宝田石油株式会社とともに日本の石油業界を二分する勢力となりました。

一方、外資系では、スタンダード石油(米国)とサミュエル商会(英国)が1890年後半より日本に進出。1900年に、スタンダード石油は子会社であるインターナショナル石油(株)を設立。同年、サミュエル商会は、支店の石油部門を分離独立させライジングサン石油(株)を設立しました。後者は、1948年にシェル石油(株)と改称、現在の昭和シェル石油(株)の前身の一つとなりました。

第一次世界大戦後、著しい発展を遂げた外資系2社に対抗するため、日本石油と宝田石油は合併。新たに誕生した日本石油(株)は、国内の石油開発において独占的地位を占めることとなります。同社は、現在の「JX日鉱日石エネルギー(株)」の前身の一つです。

第二次世界大戦後、製錬技術の近代化並びに精製施設の復旧や原油の長期安定化を目的に、日本の石油会社は、外国石油会社と技術や資本等の提携を次々と結んでいきました。

1949年、東亜燃料工業(株)(1989年 に東燃(株)に改称)は、米スタンダード・バキューム石油(スタンヴァック)と資本提携契約を締結し、スタンヴァックは東亜燃料工業(株)の株式51%を取得しました。翌年、興亜石油(株)がカルテックスと資本提携、さらにその翌年には日本石油もカルテックスと折半出資で日本石油精製(株)を設立、三菱石油(株)がタイドウォーターと資本提携を復活させ、昭和石油(株)もロイヤル・ダッチ・シェル(旧サミュエル商会)と資本提携しました。

 

なお、図表1のうち、出光興産は、1911年に門司で創業した出光商会、ゼネラル石油は、1947年、財閥解体により三井物産の燃料部が独立して設立されたゼネラル物産(1958年 ゼネラル石油(株)が前身です。また、エッソ石油(1961年エッソ・スタンダード石油、1982年に改称)とモービル石油は、1961年にスタンヴァック日本支社が解体して設立されたものです。1972年に設立されたキグナス石油は、1922年にヴァキューム・オイル社と潤滑油販売の契約を締結した日本漁網船具(株)の石油部門が分離独立したもので、日本漁網船具(株)、東亜燃料工業(株)の折半出資で設立された会社です。

その後、現在に至るまで、世界的な石油業界再編の流れや国内石油業界の競争激化を背景に、我が国の石油元売は、過去にないスピードと規模で再編が進んでいます。

ここまで本稿をご覧いただき、「あれ?読んだことがあるような・・・?」と思われた企業名はありましたか?「この会社は、どの会社だろう?」と推測しながら「海賊とよばれた男」を改めて読み返してみるのも、面白いのではないでしょうか。

 

次回は、「石油の一滴は血の一滴」です。お楽しみに♪

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