今日もIt’s書!⑥ ~企業の真実を写し出すものは?会計トリックのナゾを解こう!~【2008年 第6回】

【2008年 第6回 今日もIt’s書!⑥ ~企業の真実を写し出すものは?会計トリックのナゾを解こう!~】地域コラム 九州・沖縄

平川 すみこ(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール

 

 

著者は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」でおなじみ山田真哉氏。
公認会計士である彼が、会計のネタを使って書いた小説です。
主人公は美人の現役女子大生でピカイチな公認会計士である藤原萌実と、自由奔放・天真爛漫な彼女に振り回されっぱなしの、会計士補のカッキーこと柿本一麻。

企業監査で起こるナゾを、天性の洞察力と行動力で解決してしまう萌実に対し、いつもワケがわからないまま動き回って、事件が解決されてから真相を知らされるカッキー。
この二人のやり取りの中には会計の知識が盛りだくさんです。
特にカッキーが素朴な会計の疑問を萌実に投げかけてやり取りされる会話で、読者もそっか~、ナルホド!、ということは・・・と納得しながら読み進めていけます。

第1巻の中には、監査ファイル1~5が収録、現在は完結編である弟6巻まで出版されています。
1話ずつ短編で事件は解決されていきますので、途中から読んでも大丈夫ですが、ファイルが進むごとに以前の登場人物が再登場したり、萌実とカッキーの恋の進展もあるので、やはり第1巻から順を追って読むほうが小説としても楽しめます。

この小説の読みどころは、事件の真相を突き止め、犯人(というとちょっと大ゲサですが)を問いつめていくところです。
誰に対しても物怖じせず、正義感を貫く萌実のキャラで、会計監査した企業の社長や経理担当に不正や誤りを指摘し諭すシーンは、遠山の金さんさながらの痛快さです。

現在、企業の会計監査の厳格化が叫ばれています。
企業は正しい決算の内容を公表しなくてはいけません。
でも、私腹を肥やすためでなく、多くの社員やその家族、ひいては株主のために会社が生き残る手段としてやむなく粉飾せざるを得ないこともあるでしょう。
その現状を知る監査法人も馴れ合いになってしまい不正を見逃して会計を承認してしまうこともあるようです。

しかし、それはやはり許されないことです。
日本の経済社会が正常に機能し成長していくためには、企業が潔く正確な自社の決算を公表することも、会計士が不正を見逃さず厳格に監査することも、どちらも不可欠なことなのです。

厳格監査で不正を暴く正義が勝つ・・・まさに公認会計士は正義の味方のヒーロー。
でも、監査ファイル1で、事件解決後舞い上がるカッキーに萌実はこう釘をさします。
「私たちの仕事は不正を暴いたり、悪を懲らしめることでは決してないわ。私たちの仕事は<企業の発表する数字が正確である>ということを証明することよ。」
これは、著者から私たち読者へ伝えている、会計士とは何かというメッセージにほかなりません。

萌実のセリフはこう続きます。
「私たちは経済の世界に一つしかない鏡なの。企業の良い所も悪い所もそのまま写し出す真実の鏡。鏡は決してしゃべらないし動かない。でも、絶対嘘はつかないから、みんな信頼して鏡を見てくれるのよ。」

公認会計士は、企業をそのまま映し出す鏡。正しく写し出すために常に磨いておく必要もある。
著者の会計士としての仕事への誇りはここにあるのかもしれません。

会計の仕事をしている、勉強をしている、はたまた興味がある方。
いえ、そんなことにこだわらなくとも、この社会で生活をしている私たち誰でもが関心を持って読める小説です。
さあ、みなさんも、萌実、カッキーとともに会計トリックの事件を解決していきましょう!

ちなみに、時々幽霊がでてくることがありますが・・・ホラー小説ではありませんから!

『女子大生会計士の事件簿』(山田真哉著、英知出版)
本の紹介URL:http://www.bk1.jp/product/02255846

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