今日の相続空模様④~相続手続きの対策って?~【2010年 第4回】

【2010年 第4回】 今日の相続空模様④~相続手続きの対策って?~ 家計コラム

平川すみこ ⇒プロフィール

死亡後の手続きには主に以下のようなものがあります。

<市区町村役場にする手続>
①死亡届・火葬(埋葬)許可証交付申請
②世帯主変更申請(世帯主が亡くなった場合)

<名義変更・解約等手続等>
①電気・ガス・水道・電話、賃貸住宅・クレジットカード等の名義変更・解約
②運転免許証(警察に返却)
③国民健康保険・介護保険の手続き(保険証返却・記載変更)
④勤務先への手続(死亡退職届の提出、退職金・未払給与受取)
⑤所得税の申告

<請求関係>
①葬祭・埋葬費の申請(2年以内)
②国民年金・厚生年金・共済年金等の支給申請(死亡給付・遺族年金)
③高額療養費支給申請(2年以内)
④保険会社等への死亡保険金・給付金の請求(一般的に3年以内)

<相続に関する手続(家庭裁判所)>
①遺言書検認の手続(公正証書遺言以外の場合)
②失踪宣告審判申立書(相続人に行方不明者がいる場合)
③特別代理人選任申立書(相続人に未成年者がいる場合)
④限定承認・相続放棄手続(相続開始を知ったときから3ヶ月以内)
⑤遺産分割協議および遺産分割協議書作成(相続人全員で)
⑥遺産分割調停・審判申立(遺産分割協議が不成立の場合)
⑦遺留分減殺請求(減殺すべき遺留分を知った日から1年以内)

<相続税・相続財産の手続き>
①相続税の申告・納税(相続開始の翌日から10ヶ月以内)
②不動産名義変更(所有権移転登記・売却手続き)
③預貯金、有価証券、自動車、生命保険契約の名義変更(または解約)

手続きは効率よく

以上のように、死亡後の相続手続きは多数あります。手続きを行う場所も違えば、必要な提出書類も様々であり、思っている以上に時間と労力がかかります。手続きの中には期間制限があるものもありますので、優先順位も考慮する必要があるでしょう。

特に大変なのは、相続人が遠方で暮らしている場合。電話連絡や書類を郵送すれば済む場合もありますが、多くは亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する関係機関に出向いて行う必要があります。何度も足を運べるわけではないので、短期間で効率よく廻って手続きをすませたいものです。

☆効率よくするためのポイント☆

①必要な手続きのリストを作成
気づくたびに手続きを行うのは、とても非効率です。まずは家族で話し合ってどういう手続きをしなければならないか一覧にしましょう。問合せ先の電話番号や担当者名、問合せした内容(必要書類)等も書き込んでいくとわかりやすくてスムーズになります。

②必要書類はまとめて準備
手続きごとに必要書類があります。申請書類は郵送やネットからのダウンロード等で入手することもできます。まずは電話で準備しなければならない必要書類を確認しましょう。

書類のうち、ほとんどの場合に提出を求められるのが、被相続人(および相続人全員)の戸籍謄本です。被相続人の分は出生からすべての戸籍(除籍)謄本を揃える必要があります。本籍地(生前中に本籍地を異動している場合は異動前の本籍地)が遠方の場合は、郵便小為替と返信用切手を同封の上請求すると郵送してもらえますが、何度も請求するのは面倒だし、郵送料が余計にかかります。また届くまでに数日~数週間かかることも考慮する必要がありますので、必要な通数をまとめて請求するのが効率的です。

③手続きの順番を決める
戸籍謄本は1通450円、除籍謄本(原戸籍)は1通750円の手数料がかかります。あちらこちらの銀行に預金口座がある場合等、提出先の分全部を揃えると相当な金額になることも。金融機関等によっては、コピーをとった後に原本を返却してもらえる場合があります。必要書類を確認する際に、返却してもらえるかどうかを確認し、手続きに行く金融機関等の順番を決めるとよいでしょう。

生前の対策が家族への思いやり

相続手続きは思っている以上に大変です。子供たちが遠方に住んでいる場合も然りですが、同居の配偶者がいるとしても、高齢であれば手続きにかかる心労は計り知れません。こういった手続きのほぼ一切を専門家に依頼することも可能ですが、自分が生きているうちに手続きがスムーズにいくようできることもあります。

・出生からの戸籍謄本の請求先(市区町村)を明記しておく
特に異動をしている場合には、相続人にはわかりにくいものです。

・銀行の預金口座、証券会社の口座の一覧を作成
あまり利用しない口座は解約して整理しておきましょう。

・財産目録を作成し、保管場所や処分方法も明記しておく
購入した際の契約書や領収書はまとめて保管しておきましょう。契約している生命保険、損害保険も一覧にし、保険証券はまとめて保管しておきましょう。

・遺言で遺産分割を指定する
争族を防ぎ遺産分割をスムーズにするためにも必要です。

・遺言で遺言執行者を指定しておく
 遺言執行者は相続財産の管理のほか、遺言の執行に必要な一切の行為ができます。不動産や預金口座等の名義変更の手続きもできますので、配偶者が高齢であったり、相続人が遠方にいる場合等は特に有効です。

自分の死亡後、どういった相続手続きが必要になるのか。それに家族が煩わせられないように、整理・保管といった準備をしておくことも、相続のトラブルを防ぐ大切な対策のひとつではないでしょうか。ただ、必要だと思っていても、どのようにすればよいか、何をすればよいかはわかりづらいもの。
現在は多くの種類のエンディングノート(遺言ノート等)が市販されていますので、そういったものを活用してみてはいかがでしょうか。

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