株式投資のしくみ③【2011年 第6回 】

【2011年 第6回】 株式投資のしくみ③ ~金融商品の仕組み~

鈴木 暁子(スズキアキコ)⇒ プロフィール

買いたい銘柄を見つけた場合や、銘柄選択に迷っている時、何かものさしになるような見方があると購入の理由が見つけられますよね。
今回は株式投資における代表的な「ものさし」をご紹介しましょう。

 

 

 

 

株式を購入する時、「応援したい企業だから」「今後成長しそうな企業だから」などさまざまな理由があります。もちろんそういう理由は重要ですが、株式投資の世界では数字で見ることができる「ものさし」があります。ではなぜこのようなものさしがあるのでしょう?

株式市場には多くの銘柄が上場されていますが、株価も企業規模も違うため単純に比較することができません。このような銘柄同士を比較するには同じものさしで見る必要があるのですが、このものさしを「(投資)指標」といい、視点の違う多くの指標があります。
指標を比較することで、株価や企業規模の違う銘柄を同じものさしで見ることができるようになります。

1)PER(株価収益率)

PERとは「企業が上げる利益に対して株価の水準をみる」指標で、
株価÷1株あたり純利益(1株利益)  で求められます。

これは「株価が、1株が上げる利益の何倍になっているのか」という意味です。具体的にみてみましょう。

A社…株価:1,000円、1株利益:100円
PER=1,000円÷100円=10倍

B社…株価:1,000円、1株利益: 50円
PER=1,000円÷50円=20倍

つまり同じ1,000円投資したとしても、A社は1株利益の10倍の値段ですが、B社の場合は20倍の値段がついているということ。このように「PERは小さいほど株価は割安」という見方ができます。

2)PBR(株価純資産倍率)

PBRとは「企業の純資産(借入金などを除いた正味の資産)に対して株価の水準をみる」指標で、
株価÷1株あたり株主資本(1株株主資本)  で求められます。

これは「株価が、1株あたりの資本の何倍になっているのか」という意味です。具体的にみてみましょう。

A社…株価:1,000円、1株株主資本:100円
PBR=1,000円÷100円=10倍

B社…株価:1,000円、1株株主資本: 50円
PBR=1,000円÷50円=20倍

株主資本という言葉は聞きなれないと思いますが、もし今企業が営業をやめて清算することなった場合、株主資本は株主に返還されます。

上記の場合、同じ1,000円投資したとしても、A社は1株あたり100円が返還されますが、B社の場合は50円しか返還されないということ。このように「PBRは小さいほど株価は割安」という見方ができます。

3)PBR(株価純資産倍率)

預貯金でも元本に対して利息が多ければ魅力があるように、株式の場合も投資元本(株価)に対して配当が多ければ魅力があるのは同様です。
配当利回りとは「1株あたりの配当に対して株価の水準をみる」指標で、  

1株あたりの年間配当÷株価×100(%)  で求められます。
具体的にみてみましょう。

A社…株価:500円、1株年間配当:10円
配当利回り=10円÷500円×100=2%

B社…株価:1,000円、1株年間配当:10円
配当利回り=10円÷1,000円×100=1%

つまり同じ10円の配当を得るために、A社は投資元本(株価)が500円のところ、B社は1,000円の投資元本が必要になるということ。このように「配当利回りは大きいほど株価は割安」という見方ができます。

指標を使うことで、株価や企業規模が違う銘柄同士を比較する方法がおわかりいただけたかと思います。ちなみに今回は指標の意味をご理解いただくために計算 式によって求めましたが、実際には「会社四季報」や「Yahooファイナンス」などで、銘柄検索すると、「PER」「PBR」のように値が出ています。

ただしここで出てくる値は一定のタイミングでしか更新されません。実際にみなさんが株式を購入される際には、その時の株価(自分の買値)で求めなければ意味がありませんので注意してください。

最後に指標の見方をお話しましょう。

値は出たものの、これを単純に比較できるかというと、実はそうではありません。業種によって企業活動のスタイルも違いますし、成熟した企業と新興企業でも 活動のスタイルや方針も違います。したがって指標をみる際は、同業他社との比較をすることがポイントです。みなさんもいくつか銘柄を選び、指標や株価をし ばらくウォッチしてみてはいかがでしょう。

目先の人気取りよりも業績が好調で株価が上がることのほうが、長い目で見て企業のあるべき姿であり、それはまた株主への還元にもつながります。配当狙いや優待狙いであれば、業績や財政状況を確認するなど資産運用の視点を持った上で銘柄選定をしましょう。

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