米国の保険商品【2010年 第 4 回】

【 2010年 第 4 回】米国の保険商品~ アメリカ事情

 竹内 守(タケウチ マモル)

前回は、生前信託、資産保全信託、生命保険信託のお話をさせていただきました。信託は、それぞれ設立される人の家族構成、資産内容、目的によって様々に設立されますが、この度は、アメリカで実際にどのような信託が保険商品や年金商品と組まれているかをご紹介します。

アメリカで一般的に活用されている資産保全信託

一般的に資産保全の目的で活用されている資産保全信託があります。この信託は、投資不動産物件をお持ちの方、リスクの高い仕事をされている方、または、高齢で交通事故などの不慮の事故から個人資産を保全したい方々がよく活用する信託です。この資産保全信託は、生命保険信託では所有できない年金商品、不動産物件、銀行口座などの資産管理と保全が可能です。

また、資産保全信託のひとつに、チャリタブル・リメインダー信託があります。こちらの信託は、キャピタルゲイン税回避が可能となりますので、多くの不動産・株所有者は、所有資産をこの信託に移行した後に売却をします。慈善団体に一部の資産を寄付するという信託契約をすることにより一切の譲渡税・相続税の免除や、所得税の控除が可能なります。

売却後の資産を信託に移行し、年金保険、投資信託、株、債券、不動産物件などで運用して、収入を追求しながら管理します。死亡した場合は信託内の残預金が設立時指定した慈善団体に移譲されることになりますので、相続人がいる場合は、設立時に贈与した財産と同額あるいはそれ以上の死亡保障額の生命保険を購入し、同額資産を相続人に残せるようにします。

それでは、実際、どのような米国内保険会社発行の生命保険、年金保険商品が信託と一緒に設立されているかについて、下記のようご説明します。

生命保険商品:アメリカの生命保険は日本の保険商品と同様なプランがありますが、主に下記のような保険があります。

定期型生命保険

期間が限定された保険で、保険料積み立ての機能のない、いわゆる掛け捨て型保険です。保険料は終身保険に比べ安く、期間は5年、10年、15年、20年、30年等が一般的です。

貯蓄型生命保険

  • ユニバーサル生命保険:終身保険で、多くの保険会社により120歳までの保障があります。また、保険料は、ある一定の範囲内で、様々な支払いプランの選択があり、契約者の予算に合わせて設立が可能となります。

契約死亡給付金は、レベル型、逓増型、保険料払い戻し型などのオプションがありますので、ご家族の経済状況や契約者のニーズに合わせたプランができます。保険保障期間は、期間を指定して85歳、90歳までとか一定の有期型と、120歳まで保証が継続する終身型があります。多くの保険会社の運用利回りは、現行5%前後で、確定保証利回りは、保険会社により差がありますが、一般的に3~4%となっています。

  • インデックス・ユニバーサル生命保険:基本的な内容は、上記ユニバーサル生命保険と同様ですが、保険料の運用が、ユニバーサル生命保険同様に保険会社からの運用利回り、または株価指数(S&P500等)を合わせて運用が可能となります。株価指数によって生命保険の貯蓄残高が変動しますが、このプランの利点は、株価指数がマイナスになっても、貯蓄残高の影響は“0”金利に留まりますので、マイナスにはなりません。但し、保険会社のプランによっては株価指数がプラスになった場合に、キャップ(限度)がついていますので実際の株価指数よりと同額の利回りが払われないプランもあります。
  • バリアブル・ユニバーサル生命保険:上記のユニバーサル型とは、運用内容が違い、保険料を株式や債権で運用されている投資信託等で運用します。運用実績に応じて解約返戻金の額が増減する可能性のある生命保険ですので、運用期間が長い方の場合は、資産運用として効果的です。

アメリカでの生命保険の特典

アメリカでの生命保険は、家族の保全以外に会社経営や相続対策として活用されており、下記のような多くの特典があります。

  • 保険金の受取は、所得税は非課税
  • 生命保険の運用額は、キャピタルゲイン税無税(但し一定のルールがあります。)
  • 資産状態に応じた高額保険に加入が可能
  • 健康状態審査に幅があるので、高齢の方や病気の方でも購入が可能
  • 運用率が高く、解約返戻金も多額
  • 信用性があり、保険証券を担保にすることも可能

年金保険

固定型年金:利回りが固定された年金で、株式・債券などの市場リスクなどに左右されません。利率は、銀行の定期預金より高く、預け入れる期間や保険会社によって利率が変わりますが、現在の利率は2%~4%になっています。

インデックス型:生命保険のインデックス型と同様、株式で運用されるプランです。株式市場が上がった時には二桁の利息が期待でき、また、下がった時でも元本割れはなく、保険会社によっては最低金利を確定してくれるプランもあります。現在のインデックスレートは平均8%前後となっております。

年金投信:投資信託で運用する年金プランですが、収益性かつ安全性があります。保険会社のプランによりますが、3ヶ月毎に市場で上昇した運用資産を確約してくれたり、もしも市場が下がった場合でもボーナスとして5%~7%をくれる年金プランなどがあります。

以上の年金保険は、医療検査がないために、健康を害されている方でも加入できます。アメリカの保険・年金プランは、信託と一緒にリタイアメントプランや相続計画の一環として設立されている方も多くなっております。このように、信託資産も分散投資することにより、効果的な運用ができるでしょう。日本在住者の方々も、これからのグローバル社会における資産分散を考える上で、信託の設立により効果的な運用が可能となります。

次回は、米国不動産情報をお伝えします。

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