海の大国 日本と私たちの投資【2009年 第 2 回】

【 2009年 第 2 回 】海の大国 日本と私たちの投資 もう一つの日中関係 黒潮枢軸

大山 宜男(オオヤマ ノブオ)

日本は領海よりはるかに広い自国のEEZ=経済水域まで考えて

2009年1月28日、日本の漁船がまたロシアに拿捕されてナホトカへ連行されたとのことです。日本海でロシアのEEZ(Exclusive Economic Zone排他的経済水域)に入りこみ、船内に冷凍カニがあったからロシアの資源を盗んだ疑いということのようです。

 

想像するに、日本のEEZ内でカニは採ったものの不注意にも船が潮に流されロシアのEEZの中へ入ってしまったため言いがかりをつけられても「日本のカニ」だと証明する手立てもないということだったのでしょうが、この事件はその後日本側が数千万円をロシア側に支払うことで乗組員は開放されました。

しかし、この数千万円、日本国民の血税を使ったのか、漁師さんたちのご家族が負担したのかは知りませんが、本当に支払うべきオカネだったのか私には疑問です。

 

思えば、もう大分前になりますが北方領土方面で日本の漁船がロシア領海内に入ったということで日本人乗組員が射殺されましたが、あの件はその後どうなったのでしょう。マスコミ報道もありませんが。

皆さん、日本は国土面積37万平方キロの小さな国だと思っていませんか?それは違いますよ。 領海よりはるかに広い自国のEEZ=経済水域を考えないといけません。
EEZは大雑把に陸地から最大200カイリ(約370キロメートル)のところにひいた線ですが、二つ以上の国の権益が重なる場合は中間線とするのが原則です。
日本海や東シナ海はこれに該当し、双方から370キロ主張すると重なるので、日本は事実上ロシア、韓国、北朝鮮、台湾、中国と国境を接していることになります。

 

EEZと領海と領土を合わせた国別順位( 国名 EEZ+領海+領土)を見てみましょう。

ロシア     24,641,873 km2
アメリカ    20,982,418 km2
オーストラリア 18,335,100 km2
カナダ     15,583,747 km2
ブラジル    12,175,831 km2
フランス    11,709,843 km2
中国      10,476,979 km2
インド     5,559,733 km2
日本      4,857,193 km2
ニュージーランド 4,352,424 km2
イギリス    4,218,580 km2
(データはウィキペディアから)

私はゴビ砂漠の上を越えて空路2度モンゴルへ入ったことがあります。モンゴルは日本の4倍の土地面積を持ちますが、人口は香港の半分くらいです。
香港は東京都の半分くらいの土地面積しかありませんが約7百万の人々が暮らし日本に近い所得水準を維持しています。

 

モンゴルに海はありません。ヒマラヤの上空を越えてパリへ飛んだこともあります。いずれも飛行機の窓から見える景色は美しくはあれど、生命活動や経済活動とは無縁にみえました。人間も動物も水なしで生きていくことは出来ません。

温帯の海と長い海岸線をもつ日本やイギリスは世界有数の豊な国

世界の大都市は(大河添い盆地内の都市を除き)殆ど海の傍に位置しています。世界の人口増加はUrbanization(アーバニゼーション=都市化)と共に進行し、人々は益々海の近くへ住むようになっています。私なりの仮説にすぎませんが、どのくらい温帯の海岸線と温帯の海を持つかということが国力の大きな要素ではないでしょうか。

 

地面と海面の両方を合わせた日本国民の権益は485万平方キロで、10倍超の人口をもつ中国は我が国の約2倍にすぎません。
イギリスは日本と大体同じくらいです。だからこそ人々はグレートブリテン(偉大なるブリテン島)と呼ぶのだと思います。温帯の海と長い海岸線をもつ日本やイギリスは世界有数の豊な国であることを忘れてはなりません。

但、EEZで見る限り日本海は日本だけの海ではありません。韓国、北朝鮮、ロシアの3国の海でもあり、EEZの境界線を事実上の国境と見なせば日本が一番長い国境線を接している国の一つはロシアなのです。

また東シナ海は中国、台湾、韓国とEEZを接しています。中国や朝鮮半島は同じモンゴロイドが住み、仏教や儒教が支配し、形は変われど漢字を共有しています。
しかしロシアは白人が住み、ロシア正教というキリスト教が支配し、アルファベットのようなロシア文字が支配する地域です。

沿海州の非オリエンタル世界こそが本当の脅威

私たちは存外忘れているのですが、このトータルに異なる非オリエンタルな世界が一番近くにあり、この非オリエンタルな世界に事実上最も長い日本の国境線を接しているのです。

私たちは、この最長の国境線を接している非オリエンタル世界に対し余りにも無知です。中国は日本の安全保障面での問題は相対的に低くなりつつあると思われます。多くの日本人がワイタンの写真をとり、福州路のグルメを語り、北京五輪を見、大連のコールセンターを利用しています。成田空港出発ロビー売店では北京語の嵐です。こうなると無知に基づく誤解や争いは減ってきます。

沿海州の非オリエンタル世界こそが本当の脅威なのです。日本にとっては北の海ですが、ロシアにとっては凍らない温かい海。
どう常識で考えてもここには争いが起きる可能性、問題のファンダメンタルがあります。

国際関係論と呼ばれる学問の分野で「相互依存論」があります。まだまだ勉強が足りないので偉そうなことは言えませんが、国と国、会社と会社、人と人の相互依存関係が強まるほどそれらの国の間での戦争の可能性は減る傾向ということも言われています。

犬猿の仲だったフランスとドイツが二度の世界大戦を経てEECからEC、そしてEUへの変遷をとげ、いまや欧州通貨ユーロを支える二大盟主として君臨し、その相互依存はとてもアルザス・ロレーヌを争った骨肉の関係に戻るとは考えられません。

日本を取り巻く環境を鳥瞰したとき、我が国は4百万平方キロ以上の豊饒の海を所有する世界10指に入る大国です。
ここでの不安定な軸は相互依存の薄い、文化異なる非オリエンタル世界=極東ロシアです。沿海州の非オリエンタル世界こそが本当の脅威なのです。日本にとっては北の海です。
一方、豊饒の海で連なる連帯は沖縄・台湾・香港と繋がる黒潮の軸。そしてその中間に位置するのが北京だと考えられます。

 

政府レベル、民間レベル、個人レベルで日本と日本人の子孫のために出来ることはたくさんありますが、その一つは相互理解と相互依存の少ない不安定な北のロシア軸を改善することです。
しかし、まだ正式国交さえ無い国際法上交戦中の国で限界があるため、私たちに出来る実際的なことは黒潮の軸を強化し、香港まで含めた環東シナ海地域の相互依存・連携を強めていくことではないかと思うのです。

香港を経由した中国株投資の復活も趣味・実益に国益までついた三位一体のアクションとなると期待しています。我田引水のコマーシャルになりますが、文化まで含めて中国株投資の手ほどきに頑張っていきます。

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