嶋田雅嗣 の 生命保険業界概観 第6回 【2025年2月】

生命保険業界の歴史を検証することで、将来への課題を探っていくコラムを連載していきたいと思います。証券と保険をマスターすれば、FPとして一本立ちできると言われます。なるほど、最も複雑で、顧客からのクレームの多い業界です。

一方で、無責任なマスコミ報道などにより間違ったイメージ・情報が定着した業過でもあります。「へぇ~!!」と驚かれる一般には知られないエピソードを交えながら、正確な現状を確認する一助となれば幸いです。

嶋田雅嗣⇒プロフィール

 

 

損保系生保の誕生により、生命保険業界の形相は一変しました。販売チャネルの多様化に加え、前回紹介した利差配当商品以外にも業界を大きく変えた商品が誕生しています。
特に、東京海上は、積立障害保険などの積立型商品(積立特約)、人身傷害補償特約、生損保一体型「超保険」など、業界内外を驚かせる商品開発力を誇ります。その生保子会社、東京海上あんしん生命が野心的な商品を提供しました。

「長割り終身」 低解約返戻金型終身保険

「長割り終身」のペットネームで販売開始した『低解約返戻金型』終身保険は、業界内外を震撼とさせました。
かつて5.5%であった予定利率は、損保系生保誕生の1996(平成8)年には、2.75%(有配当商品)まで低下し、保険料高騰とバブル経済崩壊、中堅生命保険会社の経営不安説の流布(最初に破綻したのは日産生命で1997・平成9年)などにより、新契約の低迷が続いていました。
東京海上あんしん生命は、保険料払込期間中の解約については、従来型終身保険の解約返戻金額の70%に抑えることで、保険料を安くする商品を開発し、想定をはるかに上回る売り上げを記録します。同じシステムKLIPを利用する日動・千代田火災エビスなど7社も相次いで同様の商品をラインナップしたのはいうまでもありません。
SCRUMを使う4損保系生保(安田火災INA・三井みらい・住友海上ゆうゆう・日本火災パートナー)、外資系生保、さらには大手生保も同様商品で追随し、いつしか終身保険の主力商品に躍り出、今に続きます。

商品の具体的なしくみ

①収支相等の原則
通常の生命保険契約では、責任準備金から新契約費を控除(最長10年)した解約返戻金を支払いますが、低解約返戻金型商品では、解約返戻金はそれよりも少額(長割り終身では70%)に設定します。結果、低解約返戻金型商品の契約群団では、保険金・給付金に解約返戻金を加えた保険契約による支払総額が、通常の保険契約群団の支払総額よりも小さくなります。収支相当の原則により、保険料は、その保険契約群団において、払い込まれる保険料総額と保険契約によって支払われる保険金等総額が等しくなるように設定するため、低解約返戻金型商品は、保険料を安く設定することが可能となります。

②予定解約率の設定
生命保険の保険料を計算するためには、予定利率、予定死亡率、予定事業比率が基本となりますが、低解約返戻金型商品では、さらに予定解約率を設定します。低解約返戻金型商品の解約返戻金は、一般の保険よりも低額に設定されており、その差額は予め保険料の値下げに使用されています。

業界の重鎮による痛烈な批判

「長割り終身」を正面切って批判したのが、かつて大蔵省保険1課長を長らく務めた浅谷輝夫氏です。
日本の保険関連諸法規は、ニューヨーク州の保険法をベースに構築されており、その主要な考え方に「保険契約者平等待遇原則(契約者に等しく、可能な限り還元する)」があり、予定解約率を設定するのは、この基本を蔑ろにした劣悪な商品だとして、業界紙のコラムに、実名入りで批判記事を書いてます。米国では到底認可されない商品であり、コラムによっては「奇●児」とまで言い切っています。
浅谷氏は1973(昭和48)年に大蔵省保険第1課長(生命保険担当)に就任され、2年毎に異動を繰返すのが基本の大蔵官僚では珍しく、保険課には13年間勤務されています。

・『昭和43年7月11日の蔵銀第1002号通達『責任準備金の充実について』
-保険会社の健全化にために、チルメル方式から純保険料方式に早期に移行する必要性を説く
・『昭和50年答申』
-高料高配(高い保険料を支払うが配当で還元する商品であるが、保険会社は運用差益を享受する)よりも消費者は安い保険料を求めていると指摘するなど、以後の生命保険業界・商品の在り方を説く
・アクチュアリー生保2次試験のテキスト「生命保険計理」の執筆
・退官後はニッセイ基礎研究所の顧問に就任
など、業界では保険数理の第一人者、最重鎮として、尊敬された方です。
保険計理、契約者保護の遵守による商品設計の必要性を叩き込んだ後輩たちによる、それらを否定する商品開発、許認可を終生悔やまれていたようです。
*本コラムの最終に、浅谷氏のブログを転載してあります。現在は、閉鎖されていますが、後世に残すべき記述と思います。
難解な部分もありますが、保険関係者は是非熟読ください。

■想定を下回る解約率

「長割り終身」の好調な販売をさらに加速させたのが、銀行による保険窓販です。東京三菱銀行は、同じ三菱グループの東京海上あんしん生命の商品を採用し、積極的に販売する。特に、長割り終身は保険料の安さ、保険料払込後の解約返戻率の高さから、各支店で推奨販売されます。
継続契約に対しては、責任準備金を積み立てていますが、想定以上に解約率が下回った(継続契約が想定より多くなった)場合には、責任準備金積立財源は、予定解約率をベースに計算され支払われている保険料の中には含まれていません。その分を他の財源から調達必要が生じます。低解約返戻金型商品の予定解約率は、実際の解約率が予定解約率を下回ることがないように、低い水準に設定することが必要となります。
しかし、保険窓販では、優良契約が多く、実際の解約率は予定解約率をはるかに下回る事態となり、収益上の問題がクローズアップされます。東京海上あんしん生命からは、販売件数の抑制、保険料支払期間の長期化を要請する事態となりました。保険料払込期間の長期化(最低10年を20年以上)で商品魅力が削がれ、販売件数は逓減していきます。窓販では、変額個人年金、外貨建保険に主力販売商品もシフトしていきました。
その後、予定利率のさらなる低下、新商品の販売開始に伴い、2018(平成30)年に、「長割り終身」の販売は停止されました。

■「3つのあんしん」「長割り3つのあんしん」

「長割り終身」についで販売開始したのが、「3つのあんしん」です。低解約返戻金型ではない通常型の終身保険であるが、入院給付金、介護給付金を支払うと、その金額分だけ死亡保障が削減されるため保険料を割安とした商品です。死亡・入院・介護の3つが同時保障されることから「3つのあんしん」のペットネームが付けられました。
最低死亡保障金額(死亡保障1,000万円の場合450万円)が設定されているもの、支払われた給付金分だけ死亡保障が削減される点がなかなか理解されませんでした。さらに、「長割り3つのあんしん」も販売されましたが、保険料払込期間中に中途解約すると解約返戻金が少ないうえに、給付金を受取ると死亡保障も削減されるため、人気商品とはなりえず、しばらくして販売停止となりました。

■浅谷氏のブログ より(現在は閉鎖されています)

 

○損保系生保の低価格保険について支払い能力の調査 浅谷輝雄 8月/2000年
8月7日付の日経に、金融庁が「損保系生保の低価格保険について支払い能力の調査」を行い、準備金の増額要請も、という記事が掲載されていた。これは金融庁が、長割方式、あるいはlapse-supportedブライシングによる新型の商品の保険金支払い能力が十分かどうかの調査を始めたという内容だ。これらの商品について、標準責任準備金を設定しようというのかも知れない。
私はこの種のlapse-supportedブライシングを監督官庁が認めたのは、戦前・戦後のアクチュアリアル行政の伝統を全く無視し、戦後の行政遺伝子(解約控除期間の短期化、基準責任準備金の底上げ、短期解約者の低額解約返戻金への不満をどう解消するか)を受け継いでいない商品認可であるから、撤回すべきであると固く信じている。現状では、支払い能力があるかどうかの調査は最低限必要だとしても、それは根本的な問題の第二次的なものだと考える。もっと監督官庁は、標準責任準備金と解約返戻金をどうリードするかを検討すべきである。
そもそもアクチュアリアルに見て、予定解約率を保険料の算定基礎率の中に入れるのは、解約するか否かの判断が保険契約者の手にあることから、他の計算基礎とは基本的に性格が異なり、予定計算基礎化するのは無茶であることを忘れては困る。監督官が新機軸な商品の認可申請を受け取ったときに、「それに前例があるのか、外国ではどうか」と質問する、という笑い話があるが、実際に、どの様な対話が行われたは分からないが、「カナダで実例がある」、と会社側が説明したであろう。解約返戻金に規制がないアングロサクソン系では認められとしても、アメリカでは標準責任準備金法と不可没収法があり、lapse-supportedブライシングはこのアクチュアリアル・システムと全く相反するものであるから、もしアメリカで認可しようとすれば、この両法を撤廃するか適用除外するかしなければ、監督官は認可できない。現在、NAICの作業部会で議論されているようだが、その間の事情は、補遺として、Best’s Review誌2000年6月号に掲載されている「不可没収法を廃止するな」という記事が参考になるので、拙訳を紹介する。
我が国のlapse-supportedブライシングは、記事によると、想定(予定)解約率が6%台と、大手生保の終身保険の二倍程度に見込んで設計しているという。そこで、実際の解約率が想定解約率を下回ったなら、解約損がでるのはハッキリしており、それがどの程度決算に影響するかどうかは、特別に設計した分析資料を会社側から徴求すればよい。その様式を立案するのは極めて簡単である。恒常的に発生するなら、それは逆ざやの場合と同じであり、毎年毎年、解約損を計上するのを、例えば想定解約率を(せめてカナダ並みに)2%とした責任準備金を積み立てるよう標準責任準備金を設定して不足責任準備金を計上させるのも一案であろうが、この保険商品に標準責任準備金を適用する際に解約率を2%にするかどうかでもめた話を聞いたことがある。しかし、逆ざやの場合の措置との均衡を図らなければならない。さて、できるのかな?補遺: 不可没収を無くなすな(2000年6月号のBest Review生保版 p.119-121)-意見:長期の生命保険契約に解約価格を要求する法律を廃止することは、生命保険業界を、財政的にもまた顧客の目から見ても傷つける。-(筆者のWilliam C, Koening, FSA, MAAAはNorthwestern Murual Life Insurance Co. Mil-waukeeの上席副社長で主席アクチュアリ、またStephen H. Frankel, FAS, MAAAは同社の副社長でアクチュアリである)19世紀以来生命保険業務の記念柱である標準不可没収法は、コンシューマ保護の基礎として生き残っている。多少の修正を経て、それは将来における生命保険事業の最大の関心事としての役割を果せる。
標準不可没収法の必要性は、マサチュセッツ州の保険監督官でアクチュアリであるElizur Wrightにより1800年代の半ばに確認された。英国に旅行したときWrightは、老齢で衰弱している者から生命保険契約を買収しようと集まってきた投機者を見た。これらの契約は、貯蓄を使い果たしこれ以上保険料を支払えない人達から購入された。彼がアメリカに戻ってきて、保険契約者の利益になり、かつ保護する解約返戻金の必要性を求めることによる改革をキャンペーンした。
今それで、公正な不可没収価格が被保険者と保険会社の関心を結びつけ続けている。被保険者は、支払った保険料に対する良心的な価値を望んでいる。保険会社は、被保険者が契約を終了させない各保険年度での利益を経験しているから、契約の所有者が契約を継続するよう良心的な価値を提供している。契約が継続するのが永いほど、全ての者が満足している。現在の標準不可没収法の中核をなす前提は、NAICのGuertine委員会が1941年に不可没収価格を開発し、保険契約者による長期保険契約への投資は保護されるべきであると結論を下した前提は、現在でも正しい。
NAICの作業部会は、何人かの業界のアクチュアリが不可没収の要件を廃止してはとの提案について、今月開かれる全国大会で議論を継続することになろう。これらの業界アクチュアリは、保険会社は商品の設計において完全な自由を、たとえそれが不可没収の給付を全くなくなすことを意味するとしても、自由を持つべきであると主張している。なかでも、このことは、会社が「解約価格なし:cash valueless」の商品・・・・支払った保険料の水準や回数に関係なく、解約価格を蓄積しない生命保険商品・・・・を販売するやり方を許すことになろう。

■コンシューマの心配
長期(permanent)生命保険についてコンシューマの大きな不平は、早期解約に関係している。1990年代の半ばから、Consumer Federation of Americaと他の団体は、彼等が契約を早期に終了した際に、コンシューマが解約価格付きの生命保険に失う「数十億ドル」を非難している。コンシューマリストの指摘は、早期に解約価格付き契約を解約した者は、支払った保険料よりも遙かに少ない現金価格(または不可没収価格)しか受け取れないことである。
初期の低い解約価格は、長期の生命保険の構造に起因する論理的で必要なことである、と我々は主張する。しかし我々は、解約価格を全く受け取れない考え方をコンシューマがやがて完全に喜んで応じるとは、誰が合理的に予想できると我々は思わない。ハッキリと業界の弱点に対するその様な回答は、火事でガソリンを注ぐようなことに類似している。
不可没収要件がないことが、カナダで解約価格なしの長期契約の少なくとも二つのバージョンの出現の大きな寄与要因である。不可没収法廃止の主張者達は、カナダの経験がその様な契約が旨く行っていることが証拠である、としばしば指摘する。カナダでの経験がハッキリと反対のことを例証する、と我々は信じている。
これら二つのカナダの契約の一つは、”term to 100″プラン・・・・本質的には解約価格のない終身保険契約・・・・である。もう一つは、自然保険料のように逓増しないで平準であり続ける毎年の死亡リスク賦課のユニバーサル生命バージョンである。この平準な賦課に不可没収価格が付いていない。
正規の解約価格を持ち同じ死亡給付の保証を提供するプランと、少なくとも比較して、これらのプランの主たる魅力は何か。しかし、これらの契約にはアキレス腱がある。その様な低い保険料の水準が機能するには、不可没収要件が無いことで可能になったプライシング方法である契約がlapse-supportedプライシングに依存していることである。このプライシング方法はコンシューマにとって不公平(unfair)である。またそれは保険会社にとって、財務上の損失及び(または)予期せざる責任準備金の積み増し招く。

■lapse-supportedプライシング
lapse-supportedプライシングに関する主要な問題は、それが不可没収に依存していることである。簡単に言えば、会社は失効しない契約を支えるため、失効する契約を勘定している。不可没収要件がなければ、各契約が蓄積した資産に理論的に関係する解約価格を、会社は支払わなくて済む。
従って、契約が失効するたびに、会社の利益は合理的だと予想される以上に大きくなる。会社はこの利益をもって、契約を失効させない保険契約者への給付を提供する。これらの利益を、lapse-supported契約の低い保険料の根拠にしている。
言い換えれば、その様な契約の敗者(“loser”)が多いだろうとの予想で、会社は契約のプライスを行う。もし会社の当初の失効率の仮定が実現したときに、少数の継続者または勝者(“winners)にしか支払わなくてはならなくなるだけだ。死亡以前に契約を失効させた保険契約者の膨大な大部分の者が敗者である。解約に際し彼等は、合理的な人達が容認できる価格と認めるよりも遙かに少額を受け取る。カナダでその様な商品が導入されたときに、プライシングに使用した究極(ultmate)の失効年率は6%から7%であった。一律7%の率では、最初の20年間に全ての契約の約75%が解約価格を持たないで失効する。言い換えれば、保険契約者の少なくとも75%・・・・また恐らくもっと大きな%・・・・が消滅時に公正な価格よりも少ない金額を受け取るだろう。その失効率では、保険会社は、死亡まで継続する残りの25%の契約に支払う余裕がある。
しかし実際の経験では、予想したようにならなかったことが分かった。カナダのアクチュアリ会は、契約初期における失効は7%から10%の幅にあったと報告したけれど、実際の究極の失効率が予想よりも大きく下回った。第6年度で3.5%に低下し、その後9年度から14年度にかけて次第に約2%に低下してきた。
失効が予想よりも低いときに何が起こるだろうか? まず最初に、一律2%の失効率でさえ、全ての契約の最大限三分の一が最初の20年間に解約価格なしで失効し、また50年間(殆どの生命保険購入者が生存する合理的予想年数である)にわたって、約65%の契約が解約価格なしで失効する。だから失効率が予想よりも下回るときでも、かなりの数の契約に何の金額が支払われない。このことは、コンシューマ達の満足を得られる軌道であるとは見られない。第二に、また恐らくもっと心配なことは、lapse-supportedプライシングが保険会社に財務問題を作り出すことである。過去に締結した契約について、保険会社は失効を奨励するか、または責任準備金を積み増ししなくてはならない。一つのカナダ会社が、5年経過の契約の失効率の低下・・・・3%から2%に・・・・して責任準備金の増加が15%から40%になったことを認めている。これをどれだけ多くの会社が財務上無理なく出来るだろうか?
たとえそうであっても、長期の生命保険へのlapse-supportedプライシングが現在国境を越えてアメリカに出回っている。多少の長期契約が、大きく不適切な解約価格で販売されている。これらの場合に保険会社は、ユニバーサル生命保険商品に所謂”no-lapse, secondary guarantees”を付け加えて、標準不可没収法の要件を回避しているのが一般的である。 カナダの場合のように、これらのアメリカ向け商品の主たる魅力は、保険料が低いことであり、それが販売上大きなポィントになっているようだ。しかし保険契約者が、10年、20年、またはもっと経過した時に、このことをどう思うだろうか? 彼等は失効や解約に際して、何も受け取らないことら陽気でいられるのか? 彼等は販売時点での、解約価格のない新しい種類の長期契約であるディスクロージャーを思い出すだろうか?生命保険業界の最近の歴史は、そうではないことを連想させる。実際に、そんなに最近ではない歴史からも、そうではないことを連想させる。lapse-supportedプライシングは既にアメリカで実際に実験されていて、それが何れにしても旨く行かなかった。100年かそれ以上も昔のトンチンが同じようにlapse-supportedプライシングの上に構築されていた。1860年代にアメリカに導入されたこれらの契約は、一定の期間末に生存する者に対してのみ不可没収給付を提供する。それが生みだしたコンシューマの不満が、1905年のアームストロング調査に繋がり、その調査がニューヨーク州及び他の州の保険局による、保険業界への厳格な監督規制を作り出した。Viaticalsへの需要
現在の環境を考えれば、もし締結する会社が公正な価格を提供しないなら、保険契約者はセコンダリー(派生)市場・・・・恐らくはviatical会社・・・・でもっと良い取引を得るために直接に移行するであろう。これらの契約に対するセコンダリー市場が存在するだろうし、またこれは生命保険業界にとって良いことではないだろう。
興味深いことは、この進行が最終的に皮肉な結果を生みだすだろう。viatical会社への大量な殺到が起これば、契約が失効しなくなるから、lapse-supportedプライシングが全く機能しなくなることになろう。viatical会社はそれを予見し、彼等は”no-lapse”に保証する死亡給付を確保するため保険料を払い続けるだろう。このことは、契約した会社会財務上の問題をもたらすことになる。
簡単に言えば、lapse-supportedプライシングが不公平であるだけでなく、長期的に見てそれは機能しない。
廃止するのではなく、改訂せよ不可没収価格の存在は、保険契約者と会社の双方にとって優れた安全装置であるけれど、現在の標準不可没収法は改定すべきである。
重要な一つの改訂事項は、ユニバーサル保険、no-lapse, secondary guaranteesの付いたユニバーサル保険及び非伝統的な商品の消滅時に公正な価格が求められることを明確にすべきである。この改訂は同時に、lapse-supportedプライシングの廃止に役立つだろう。他の改定点には、市場価格による調整(market-value adjustments)と修正された解約価格の保証(modified guaranteed cash value)が含まれよう。この様な改訂は、「解約価格なし」の特質である革新者に、改善した多くの価値を付与する、長期投資を認めることになろう。
しかし、一つの改訂だけは、即ち解約価格を廃止する改訂だけは検討すべきではない。単純な真理は、標準不可没収法の条項が長年吹聴してきてから、生命保険における解約価格は受け入れられ、また予想されているからである。コンシューマは事前積立を求める生命保険契約にキャッシュ・オプションを予想している。もしキャッシュ・オプションやローン条項の何れかがなければ、契約の消滅に際して苦情を防ぐ十分なディスクロージャーを行うのは不可能であろう。最後に、lapse-supportedへの支持をなくなす標準不可没収法の能力を強化するために、解約価格は必要である。
不可没収価格の問題は、単なるアカデミックな演習を超えるものである。現在、業界において盛んになっているM&Aが、lapse-supported事業の孤児ブロックを多く作り出している。保険契約者は新所有者の慈悲に縋り、その感情と約束とを、彼等の契約が弱々しいことを訴えることが出来る。過去に於いて、新会社が相続した保険契約者を公平に扱わないことを防いだのが市場の現実であろう。しかしlapse-supportedプライシングについて会社は、保険契約者を不公平に扱い、彼等が失効するよう積極的に勧奨する、ハッキリした財務上のインセンティブを有している。このことが、会社は彼等を希望しないか、または解約価格を少額かまたは無しに追い込んで、保険契約者を”no-win”な区域に置く。保険契約者を保護するものは、公正な解約価格を要求し、全ての生命保険契約に適用する標準不可没収法である。保険契約者を保護するものは、保険会社と被保険者の双方の利益を提携させるよう、公正な価格を要求する標準不可没収法である。その様な法律は、保険会社との不釣り合いな取引において、被保険者に何等かの財務上のレバレッジを与えて彼等に権限を与えよう。
その様な法律がなければ、19世紀の英国における投機家の餌食になる貧乏人のように、この様な状況が保険契約者を力のない立場に置かれることになろう。多少の改訂をすれば、標準不可没収法は一世紀よりもっと前に導入されたときのように、現在において重要で役に立つものになる。偉大な業界を偉大に保つために、我々はこの法律を維持し強化しなくてはならない。

 

 

 

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